さあ~~きました。

 「―――結果発表ぅうう!」

 ワクワクワクワクぅ!!

 「おい、バッドっていったなおまえ! どうだ! どうなんだ!」

 俺は地面に尻もちをついているバッドの肩を揺らした。

 「ちょ、クレイさん揺らしすぎですって! 飲んだポーションが出ちゃいますよ!」

 いやいや、あれだけいきってたんだ。多少は根性みせろよ。

 「うぷっ……はぁ、はぁ……」

 「気分はどうだ?」

 「無理やりポーション突っ込まれたのは最悪だぜ……けどよ……」

 バッドは他の3人に視線を送る。
 3人とも無言で頷いた。

 「普段のけだるさが無くなってる……」
 「ああ、俺もです。ボス」
 「なんか頭がスッキリしてるかんじだ」
 「俺は足の重みが楽になった気がする」
 「めっちゃうめぇ」

 おお! いいじゃないか!

 成人男性にも効果ありだ。
 これでだいたいの層には効果を発揮することがわかったぞ。

 バッドが真剣な顔をして俺の目を見る。

 「その……こいつをもう2本売ってくれないか」

 「構わないが、立て続けに飲んでも効力は変わらんぞ。ある程度の期間をおいて飲むのが効果的だ」
 「いや、俺が飲むんじゃねぇ。妹たちに飲ませたいんだ。あんだけこけにして、虫のいいお願いだってことはわかっている。けどよぉ、あいつらちっちぇのに文句も言わずによぉ……」

 「ラーナ、もう2本だしてやれ」
 「ふふ~~ポーション2本ですね~はい!」

 ラーナが満面の笑みでポーションを取り出す。

 そこへさきほど聞いた声が……

 「あれぇ、バッドにいちゃん?」

 現れたのは、ケイナとライナだった。

 「妹さんて、2人のことだったんですね~ならこの2本はいらないですよ♪」

 「え?……いらないって。ライナおまえ外に出て大丈夫なのかよ……咳が止まらなくなるぞ」

 2人ともキョトンとした顔でバッドを見上げる。

 「おまえたち、この人のポーション飲んだのか?」
 「うん、クレイお兄ちゃんは凄いんだよ!ライナの咳もでなくなったし、ケイナもすっごく気持ちいいの」

 「そ……そうか……そりゃ良かった」

 バッドは目頭を押さえながら、俺に頭を下げる。

 「―――さっきは失礼な振る舞いをして悪かった。こんな町だから、変な奴が多くてよ。はじめが肝心だからよ。つい気合をいれちまった」

 「いいんですよ~バッドさんたちは町の見回りをしてくれてたんですよね~」
 「そだよ、バッドにいちゃんたちはえらいんだよ」

 「俺はポーションの効果を知りたかっただけだ。だからまあ気にするな」

 俺がそう言うと、「ありがとうごじました」とバッド含め4人は改めて頭を下げた。

 その光景を見たのか、徐々に人が集まりってくる。
 俺のポーションが効き目ありと認識したのだろう。

 初日にして、結構な数が売れた。

 そして、人混みをかき分けて1人のおっさんが飛びだしてきた。


 「―――やはり、クレイ殿下はこの町の救世主ですぞ!!」


 あ、なんか知ってる声きた。
 マットイさんじゃないか。

 「みんな聞くですぞ。クレイ殿下は王国の第7王子ですぞ! そしてこのフロンドを立て直すために派遣された領主さまですぞ! そしておそばにいるのは聖女さまですぞ!」

 うわぁ、このおっさんいらんこと大衆の前で言いやがった……

 ザワめきはじめる町の人たち。

 どうする? もうこの際だ、正直に俺の思いを言ってみるか。
 そうだな、どのみちこの町にはいるんだろうし。

 「みんな聞いてくれ! 俺はいわれなき罪をかぶされて、このフロンドに追放されたんだ。だからもはやグレイトスの王族でもなんでもない。もうただのモブだ。だから俺はモブ市民としてモブに徹するから、みんなも俺の事をモブ認識してくれ!」

 「モブ?」
 「なんかモブモブ言ってるけど? どういう意味なんだ?」
 「え? クレイじゃなくてモブって名前ってことなのか?」

 よりざわつく住民たち。

 ちょっとモブを前面に押しすぎたか……いやでもモブでいんだよ。

 「そうだ! モブだ!」

 この際なんでもいい。モブだ。そう俺はモブなんだ。

 「違いますよね!? クレイさんですよ!」

 そこへラーナがツッコミを入れてきた。

 だが、住民の反応は……

 「ふ~~ん、よくわからんけどここってグレイトス王国なのか?」
 「いや、違うだろ。神聖国だろ?」
 「スタンピードの時に逃げ出しやがったクソ貴族は、どこの国のやつだったけ?」
 「ば~か、ここはフロンド以外のなにものでもねぇよ」

 あれ?

 なんか思ってたよりも俺が元王子とか、どうでもよさげな雰囲気だぞ。

 なるほど、この辺境ではぶっちゃけ国との交流もほぼないだろうし、どこの国に所属しているなんて感覚はあまりないんだろうな。

 「みんな何を言っているのですぞ! クレイ殿は―――」

 「すっごいポーションをつくってくれるおにいちゃんだよね」
 「そうそう、いいやつが町に来てくれたぜ!」
 「まあこんな町に来るやつはだいたい訳ありだろうからな。余計な詮索はせんよ」

 おお……なんかこの町いいかも……
 もっとゴロツキどもが巣食うダークなイメージがあったがそうでもないし。

 むろん生活が楽なわけではないだろうが、いい意味で自由な感じだ。
 俺も好きな事しまくれそうな予感がする。


 「し、しかしですぞ……」

 「ハハッ、諦めろマットイさん。この町の領主はあんただよ」

 「むぅ……しかし殿下が来てくれたのに……」
 「前にも言ったが、ポーションは山のように作るさ。だが貴族業はやらん」

 「……わかりました……ぞ」

 「そう落ち込むな。耳のポーションも定期的に持っていくから安心しろ」
 「そ、それはありがたいですぞ! では、わしはこれで失礼しますぞ。あ、クレイ殿下。領主になりたいときはすぐにお知らせをですぞ!」

 そう言うと、マットイさんは門の方へと走り去って行った。
 悪いが領主になりたくなる日は来ないだろうな。

 集まっていたみんなもポーションを手にして散って行く。

 はぁ~~昨日に引き続き今日も色々あったな。
 ま、俺はポーション作りまくって飲ませまくったから、大満足だが。

 「さ~て、ラーナ帰るか」


 「帰るかじゃないですよ。クレイさん―――お・か・い・も・の、です」


 しまった、すっかり忘れてた。

 ラーナが若干キレそうだ……

 「……そ、そうか。じゃあ買物行くか」
 「はい、クレイさん!」


 その後の買い物は、バッドたちが色々お店を教えてくれたのでスムーズに買い出しは終了した。

 「「「「じゃあ、クレイの兄貴、また!!」」」」

 なぜか俺は兄貴と呼ばれるようになってしまった。

 俺の方が年下なんだけど。