ガラの悪い4人の男たちに絡まれる俺とラーナ。

 「ば、バッドさん。その、まだお金の用意ができてなくて。ら、来週には必ず返しますんで~」

 先程口を挟んできた男が、ビクつきながら逃げて行った。
 このバッドという男に金をかりているのか?

 「ボスっ! あいつまた逃げやがった。追いますか?」
 「いや、来週かえっすつってんだから待ってやれ。まずはこの新顔たちの教育からだな」

 待つのかよ……

 バッドと呼ばれた男がズイっとこちらに寄ってきた。

 「おい、誰に断ってこんなところで商売してんだ?」

 ふむ……

 「歳は20代前半ってとこか。背丈は175。体格はそこそこ良しと」

 いいぞぉ~モニターとして文句なしだ。

 「ああ? おまえ何ブツブツ言ってんだ? ちゃんとバッドさんの質問に答えろや」
 「おまえ、バッドさんを舐めてんのかぁ? 俺たちは10年前からこのしまを牛耳ってるんだよぉ」
 「そうだ、バッドさんはなぁ。孤児だった俺らを集めてしっかり食わせてくれてんだよ!」

 「へぇ~あなたけっこういい事してるんですね? 私、見た目で判断しちゃうとこでしたぁ」

 ラーナが怯えた顔から一転、興味深そうにバッドと呼ばれた男をマジマジと見る。

 「バッドさん、こいつら完全に舐めてますぜ。そうだ、バッドさん例のやつ見せてくださいよ!」
 「おお、そりゃいい。確実にビビりますぜ!」

 取り巻きたちに持ち上げられて、渋々と言った感じで懐からナイフを取り出したバッド。

 バッドは、そのナイフをチロチロと舐めだした。
 が、舌を切るのが怖いのか、かなりビビりながらのチロチロだ。

 「ふぇ? おなかすいてるんですかぁ?」

 「ちげぇ~よ! ナイフ舐めるぐらい好きってことだよ!」

 「あ、だからお腹空いてるんですね?」

 「バカ野郎! ナイフが好きってことはヤバい奴ってことで普通ビビるだろ! 空気読めよオンナ!」

 小首を傾げて、ぱちぱちと瞬きをするラーナ。
 残念ながら聖女様には効果がなかったようだ。

 「ちっ、調子狂うな。まあいい、最初の質問に戻るぞ。おまえらここで何やってんだ?」

 「ポーションの販売ですよ~瘴気に効くポーションです」

 ルーナは両手を腰に当てて得意そうにその豊満な胸を揺らす。


 「「「ギャハハハ~~」」」


 「な、なにがおかしいんですか!」

 「ははぁ、オンナ。ウソつくならもっとましなウソをつけよ」

 「ウソってなんですか!」

 「ああ? 瘴気に効くポーションなんてないんだよぉお!」
 「このけだるい感じはなぁ。フロンドに住むなら誰も逃げられねぇんだよ!」
 「そんなポーションがあればバッドさんの妹さんだって……」

 「で、でも。クレイさんのポーションは違うんです!」

 「はあ? なにが違うってんだ……」


 「「「「―――そんなもんがあるなら飲ませてみろってんだ!」」」」


 男たちの見下すような笑い声がその場に鳴り響いた。

 たしかに、市販のポーションには無いな。

 だが―――

 俺はラーナの肩をつかんで下がらせた。

 「ラーナ、あとは俺に任せろ」
 「クレイさん? まさかとは思いますけど、ワクワクしてます?」
 「大丈夫だ」

 「えっと、その顔……凄く嫌な予感がしますよ!?」

 ラーナの言葉には構わず、俺はズイっと男たちの前に出る。

 「なんだこいつ? やる気か?」

 バッドがナイフを俺に向けてきた。

 「素人がナイフなんか持つな」

 俺はスッとバッドの間合いに入る。
 バッドは間合いに入られたことにすら気付いていない。やはりクソ素人か。

 パンっとバッドの手を払う。
 簡単にナイフが地面に落ちた。

 そもそもさしたる殺気も感じられない。そんな覚悟でナイフなんか向けてくるんじゃない。

 「わっ! こ、このやろう!」

 俺が想定外の動きをしたことに驚きを隠せない男たち。


 「くそっ、いかがわしいポーションを俺の町で売るんじゃねぇ……ムグっ!?」


 「それは飲んでみないとわからんだろ?
 ―――――――――ほれ!」

 俺はポーションをバッドの口にすぼっと入れた。


 「てめっ、なにしやが……ムグッ! ゴクゴクっ!!」

 「とにかく飲め! だまって飲め!」

 「うわぁあ、ボスがぁああ! なんなんだよこいつ!」

 「おい、おまえたちもだぞ?」

 「ひぃいい、目が座ってやがる!」

 俺はポーションを次のターゲットの口に突っ込む。

 「よし飲め。効けば料金はもらうからな。っていうか効果はあるんだよ! さあ飲め!」


 「「「ガボっ……ゴクゴクぅ!!」」」


 よし、これでチンピラたちは全員ポーションを飲んだな。

 「うわぁクレイさん、容赦なく瓶をズボズボ突っ込みますね……」
 「だって、飲ませてみろと言ったのはこいつらだろ? ワクっ」

 「まあそうですけど……もぅ語尾にワクついちゃってますよ」

 そりゃそうだ。

 俺のポーションを飲んだからには―――


 「結果を確認せねばならんからなぁあああ~~グフフフ!!」