私は古都琴子が嫌いだ。
出会った瞬間に嫌いだと直感したし、時間が経てば経つほど直感は深まった。
まるで『私はそんじょそこらの凡人とは違うのよ』とでも言いたげな、社会の常識も礼儀も空気も何もかも無視したかのような立ち居振る舞い。
自分は特別な存在だと思い上がっていて、人と違うことをしても許されると信じ込んでいる。
自意識過剰すぎ。特権意識ありすぎ。傲岸不遜。傍若無人。やだやだ。
ああいう人間がいちばん嫌い。
友達と適当にしゃべりながら、教室の中をちらりと覗くと、古都さんはひとりの男子と話していた。
もったりと重たく垂れた前髪で顔を隠し、制服は入学案内にそのまま載せられそうなくらいきっちり着込んで、猫背でおどおどしている男子。森川くんだ。
正直、少し前までは、その名前と顔が一致していなかった。
というか、クラスにいる地味な男子数人、話したこともない人たちが、容姿も言動も目立たなすぎるので誰が誰だか区別して認識できていなくて、その人たちの名前は『いまだに顔がよくわからない地味なモブ男子の氏名一覧』として私の中にまとめてインプットされていた。『森川涼風』という名前はそのうちのひとつだった。
彼の名前自体はちょっと変わっているから記憶に刻まれてはいたけど、『で、森川涼風ってどいつだっけ?』っていつも思っていた。
ところが、ある日突然、森川くんは『モブ男子のひとり』から『名前と顔が一致している人間』になった。
それはもちろん、古都琴子が現れたあの日だ。
たまたま席が隣になったからか、あるいはその他にも何か彼女の心の琴線に触れるものがあったのかはわからないけれど、古都さんは森川くんのことを気に入り、せっせと話しかけて懐柔し、今や毎日のように連れ回している。よくわからないけど同じ部活に入ったらしい。たぶん彼はそんなに乗り気じゃないんだろうけど、弱みでも握られているのかと思うほど従順に振り回されている。
森川くんは本当に地味で控えめで暗くて、誰とも積極的に話さない感じだったのに、古都さんには文句も言わずに付き合っている。いちおう、嫌々、渋々、みたいな顔をしてはいるけれど。
どうせ古都さんが可愛くて美人だからだろ、と思う。
ああいう地味モブ男子でもやっぱり美人には弱いんだと思うと、全身脱力しそうになる。
結局、見た目だ。人間、見た目が九割、っていうか十割。
まあかく言う私だって、たとえば猪飼くんみたいなイケメンからある日突然『お前、今日から俺の彼女な』とか言われたら、文句も言わずに振り回されちゃうと思う。はーあ、嫌になる。
出会った瞬間に嫌いだと直感したし、時間が経てば経つほど直感は深まった。
まるで『私はそんじょそこらの凡人とは違うのよ』とでも言いたげな、社会の常識も礼儀も空気も何もかも無視したかのような立ち居振る舞い。
自分は特別な存在だと思い上がっていて、人と違うことをしても許されると信じ込んでいる。
自意識過剰すぎ。特権意識ありすぎ。傲岸不遜。傍若無人。やだやだ。
ああいう人間がいちばん嫌い。
友達と適当にしゃべりながら、教室の中をちらりと覗くと、古都さんはひとりの男子と話していた。
もったりと重たく垂れた前髪で顔を隠し、制服は入学案内にそのまま載せられそうなくらいきっちり着込んで、猫背でおどおどしている男子。森川くんだ。
正直、少し前までは、その名前と顔が一致していなかった。
というか、クラスにいる地味な男子数人、話したこともない人たちが、容姿も言動も目立たなすぎるので誰が誰だか区別して認識できていなくて、その人たちの名前は『いまだに顔がよくわからない地味なモブ男子の氏名一覧』として私の中にまとめてインプットされていた。『森川涼風』という名前はそのうちのひとつだった。
彼の名前自体はちょっと変わっているから記憶に刻まれてはいたけど、『で、森川涼風ってどいつだっけ?』っていつも思っていた。
ところが、ある日突然、森川くんは『モブ男子のひとり』から『名前と顔が一致している人間』になった。
それはもちろん、古都琴子が現れたあの日だ。
たまたま席が隣になったからか、あるいはその他にも何か彼女の心の琴線に触れるものがあったのかはわからないけれど、古都さんは森川くんのことを気に入り、せっせと話しかけて懐柔し、今や毎日のように連れ回している。よくわからないけど同じ部活に入ったらしい。たぶん彼はそんなに乗り気じゃないんだろうけど、弱みでも握られているのかと思うほど従順に振り回されている。
森川くんは本当に地味で控えめで暗くて、誰とも積極的に話さない感じだったのに、古都さんには文句も言わずに付き合っている。いちおう、嫌々、渋々、みたいな顔をしてはいるけれど。
どうせ古都さんが可愛くて美人だからだろ、と思う。
ああいう地味モブ男子でもやっぱり美人には弱いんだと思うと、全身脱力しそうになる。
結局、見た目だ。人間、見た目が九割、っていうか十割。
まあかく言う私だって、たとえば猪飼くんみたいなイケメンからある日突然『お前、今日から俺の彼女な』とか言われたら、文句も言わずに振り回されちゃうと思う。はーあ、嫌になる。



