鍼灸師辻友紀乃


 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
 蓮根信一・・・辻鍼灸治療院の常連。

 =====================================

 私の名前は辻友紀乃。
 辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
 旦那は「腹上死」した。嘘。
 本当は、がんだった。
 膵臓がん、って奴だ。
 私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
 お馴染みさんは、これでも多い方だ。

 今日も、「お馴染みさん」の話。
 針を刺しながら、蓮根に尋ねた。
 「どや、その後。」
 「昨日、ひさしぶりに、左膝が調子悪くて。」
 「痛いか。」
 「ちょっと・・・。」
 私は蓮根の寝ているベッドの脇から、悪いところを探して行き、ほぐして行った。
 整形外科は、痛いと言う場所に拘りがちだ。
 ところが、原因になっている筋肉をほぐさないと、『その場限り』になってしまう。
 湿布や痛み止めは処方してくれるが、一時的でしかない。
 10数分後。
 「どや。」
 「先生に惚れてしまいそうです。」
 「高うつくでぇ。口説くなよ。」
 「いえ、尊敬している、という意味デス。」
 「さよか。手術するとか言う医者は信用したら、アカンで。」
 「はい。」
 「今日は、鍼灸の方やないから、高いけど、辛抱しいや。」
 「分かってます。」
 鍼灸の場合は、「医師の指導の下」という大義名分がある。「同意書」である。
 ところが、柔道整復師の場合は、「同意書」を発行して貰えない。
 従って、保険医療はできない。実費だ。
 そもそも、柔道整復師って名前がいけない。
 まるで武道で治療あいているみたいだ。
 柔道整復師で柔道出来る人、聞いたこと無い。
 「接骨」も「整骨」も、看板あげてる人がおるが、おかしい。
 骨なんか弄ってない。
 筋肉・筋や。
 せめても、と、私は蓮根に『飴チャン』をあげた。
 「ありがとうございます。」
 精算して、蓮眼が帰った後、私も飴チャンを舐めた。
 「舐めてエエのは、飴チャンだけや。」

 ―完―