======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
 十津川院長・・・十津川整形外科院長。
 幸田仙太郎・・・南部興信所所員。辻先輩には頭が上がらない。
 池井あつし・・・幸田の顧客。

 =====================================

 私の名前は辻友紀乃。
 辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
 旦那は「腹上死」した。嘘。
 本当は、がんだった。
 膵臓がん、って奴だ。
 私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
 お馴染みさんは、これでも多い方だ。
 今日は、「いちげんさん」の話。

 「あのー。幸田さんの紹介で。」と入って来たのは池井あつし。
 浮気調査で顧客になった、南部興信所の顧客だ。
 浮気調査は、大抵男がオンナを作り・・・だが、池井の場合は逆。
 どうも様子がおかしいので、調査を依頼した。
 蓋を開けたら、池井の友人と女房が出来ていた。
 池井の友人は『男やもめ』。池井の女房は離婚した後、池井の友人と再婚した。
 妊娠していなかったら、ややこしい事にはならなかった。
 「ああ。聞いてます。結婚式、呼ばれたんですって?行ったの?」
 「まさか。どちらとも縁切り。」
 服を脱いだ池井に私は針を打っていく。
 ぎっくり腰だと、幸田から聞いている。
 「そらそうやわなあ。」
 「荷物も宅配便で送りました。幸田さんに相談して良かった。優秀な弁護士さん、紹介して貰ったし。」
 「池井さんは、どうするの?これから。」
 「友人に、宅配便ドライバーやってるのがいて、下請けを募集しているって言うから、今度面接に行って来ます。」
 「下請け?」「パートタイムですね、要するに。1日のノルマとかじゃない。」
 「ふうん。まあ、遊んでるよりマシやわな。ぎっくり腰やし。是非定期的に通って下さい。」
 「はい。そうします。」
 治療を終え、精算する時、幸田が現れた。
 「ああ、幸田さん。お陰で楽になりました。ありがとうございました。」
 池井が帰った後、幸田に尋ねてみた。
 「女房が浮気って?」「ええ。この頃、そういうパターン多いんですわ。男の場合、往生際悪くて言い訳しようとするんやけど、女の場合、何が悪いん?って開き直る。時代ですわ。」
 「時代かあ。この間な。変な電話かかってきたと思ったら、選挙の電話。しかも録音。気色悪っ!!」
 「時代ですわな。」
 ―完―