2025-09-25
『冬』

もうすぐ冬が訪れる時期となった。
まだ、あなたを好きだというのに。

去年の冬、心底愛したあなたから
「別れよう」と告げられた真夜中。

「なんで」と訊けば良かったのに
「分かった」と強がってしまった。

秋から冬にかけて寒くなっていったように
あなたの好意も冷めていくのを感じていた。

だから素直に言ってしまえば私は
あなたから振られても驚きはせず
「そう来ましたか」と思っていた。

駅前で別れを告げられたとき
悲しさよりも虚しさを感じる。

冬ってたくさんの思い出を作るきっかけが
其処彼処に散りばめられているというのに。

恋人を手放してしまうあなたに呆れてしまう。
せめて思い出を作ってから別れてくれまいか。

きっと思い出を作ってしまうと悲しいから
あなたなりの優しさだったのかもしれない。

別れを告げ切ったあなたは改札を通り
電車に乗るため歩を進めているけれど。

私は何もできずに立ち尽くしていた。

あなたを失ってから初めて気付く。
もう冬が訪れ、寒い時期なのだと。

あなたの温もりはもう存在しない。
はっくしょん、とくしゃみが響く。

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