2025-09-27
『遺品』

「見て」と写真を渡された。
いつも元気のない姉が突然。

元気そうに言ってきたから
「なになに」と見てみると。

両親の結婚式の写真だった。
写真に写る2人が愛らしい。

お互いが見つめ合って微笑んでいる。
きっと恥ずかしさもあったのだろう。

「えー、まだ若い!」と僕は言った。
「当たり前でしょ」と姉は笑いつつ。
「結婚式って素敵だね!」と続けた。
僕も「結婚式っていいな」と続けた。

今日は家族が数十年間住んでいた家を
大掃除するために帰ってきたのだった。

両親の遺品を残してあげたくて
どれを残すべきか悩んでいる中。

その写真を姉が見つけてきた。

亡くなったときは相当泣いていた姉も
その写真を見つけたときは笑っており。

その笑顔を見た僕は嬉しかった。
両親が息づいているように思い。

亡くなったという事実は変わらないけれど
心の中にいる限りは生きているようなもの。

この写真はまだ姉と僕が生まれる前だけれど
両親が結婚してくれたから姉と僕は生まれた。

だから残しておこう、と決めた。

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