2025-10-07
『秋のカフェ』

「会いたいなら言えばいいのに」と
後ろに座っている女子高生が言った。

時刻は17時を過ぎ、学校が終わり
駄弁るためにカフェへ来たのだろう。

本を読んでいた僕は気が散ってしまい
他のカフェへ行こうと考えていたとき。

冒頭の言葉が後ろから聞こえ
どういう展開になるかと思い
気になって残ることを決めた。

なんせ、僕も会いたい人がいた。

けれど「会いたい」と言うことは
どうも恥ずかしくて言えずにいた。

女子高生の真っ直ぐな言葉が
今の自分にズサズサと刺さる。

「素直に言えることが羨ましいんだよ」

冒頭の言葉を言った女子高生をAとするなら
この言葉を言った女子高生をBとしてみよう。

Bはきっと素直に思いを言葉にできなく
悩んでしまう性格なのだろうと読み取る。

なんたって僕と同じような感じなのだから
話したこともない人に対して親近感が湧く。

Bの弱気な感じがまるで僕のようで
どうか泣いてしまわないで、と願う。

Aは「素直に言わないと伝わらないよ」と
意思の強さがひしひしと伝わってくるほど
語気を強めてBに話しかけているけれども。

Bは抵抗することをやめ
Aに「そうだね」と言う。

僕はその先の進展を見なくても想像ができた。
きっとBなりに「会いたさ」を表現するだろう。

カフェを出るともう、空が暗くなっていた。
18時過ぎになると暗くなってしまう季節。

秋。

春や夏、冬とは違う感性になる季節。
「会いたさ」が極端に濃くなる空気。

気付けば「会えない?」と送っていた。
1年前に亡くなった愛しの彼女に対し。

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