2025-10-11
『故意的な恋』

「愛に行っていい?」と深夜
突然送られてきたもんだから。

「愛にきていいよ」と返してみると君に
「もー、間違えただけじゃん」と返され。

君が頬を膨らませながら
怒っているのではないか。

でもその怒りは冗談みたいなもので
むしろ愛が含まれている様な気さえ。

「何時頃になりそう?」と送ると
「んー、15分後くらいかな」と
君から返信が来たからとりあえず。

無造作に置かれたままの食器を
台所へ持っていって綺麗にする。

脱ぎっぱなしにしていた靴下を
洗濯機へ持っていって放り込む。

一通り「綺麗」だと思える様に掃除し
いつ君が来てもいいように準備をした。

残り8分ほどの猶予があると思い
手を休めてテレビを見ていたとき
「ピンポン」とチャイムが鳴った。

「えぇ、ちょっと早いね」と思いながらも
早く会えるのだと思うとなんだか嬉しくて。

「はーい、早かったね」と扉を開けたが
そこには君ではない人が立っていたから。

「すみません、どちらさんでしょう」と訊く。
少し怖くなって開いた扉を引くように閉める。

「君、○○と付き合っているね?」と言われ
彼女の名前を何故知っているのだろうと疑問。

「え、はい。そうですけど」と言う僕に対し
「別れたほうがいい、あいつとは」と言った。

「誰なんですか、あなたは」と訊ねたけれど
一方的に「別れたほうがいい」と言われ続け。

「もういいです、閉めますよ」と言い放ち
扉を閉めてその人を外へと放り出したけど。

数分間ずっと、ボソボソ外で呟いているから
逆に怖くなって「来ないほうがいい」と君に
連絡をしたけれど一向に既読が付かないから。

再び、扉の向こう側にいるその人の声を
耳を澄ますように聞いてみると妙だった。

さっきまでは「別れたほうがいい」と僕に対し
威勢よく言ってきたのに泣いているじゃないか。

「あいつ、俺の友達を殺したんだよ」
「お前だって殺されかねないんだよ」

耳を疑うような言葉をその人は言っていて
僕はつい扉を開けてその人を部屋に入れた。

「どういうことだよ、それ」と僕も
威勢よくその人に対して言葉を放つ。

「俺、○○と友達なのよ」と話し始め。

「さっきまで友達含め3人で飲んでたんだけど」
「〇〇と友達が喧嘩をして突き落としたんだよ」

「で、〇〇がお前に何かを送ってたから」
「お前に何かするんじゃないかと思って」

「ピンポン」
部屋に響く。

この人と僕は息を潜める。
「いるんでしょ?」と声。

君の声が聞こえたけれども
今は怖くって何もできない。

ここでふと妙なことに気付いてしまい
体が硬直して動けなくなってしまった。

「この人は何故部屋を知っている?」

今、隣で息を潜めているこの人は一体。
単純な疑問だったけれども、もう遅い。

扉の向こう側から君の声が聞こえる。
「殺しちゃっていいよ、そいつ」と。

それと同時に、襲われた。
後日、全国で報道された。

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