2025-10-19
『僕の恋人』

僕の恋人は面白い。

洗濯機に両足分の靴下を入れたはずなのに
干そうと思ったときに片足の靴下を無くし。

「あれ」と言いながら辺りを見渡し
結局は見つけることができないまま
片足の靴下だけを干して満足をする。

僕の恋人は可愛い。

冬が近付くにつれて寒くなるけれども
頑なに衣替えをしようとはしないから。

いつも寒そうにしていて心配になる。
素直に「寒い」と言えばいいけれど。

「くっつきたかったから」という口実で
僕から暖を奪おうと笑顔で近寄ってくる。

暖を奪われても文句は言えない。
もう僕の恋心も奪われているし。

僕の恋人は恐ろしい。

近場のスーパーで買い物をすればいいものの
安さを求めて隣町まで1人でおでかけをする。

理由は「安いから」なのだとバレているくせに
いつも僕には「散歩行ってくる」と言って行く。

僕の恋人は愛おしい。

不機嫌なとき、僕のことを無視する癖があるけれど
あまりにも綺麗な花が道端に咲いているのを見つけ。

「このお花、凄く綺麗」と僕に言ってくる。
さっきまで不機嫌だったくせにもう上機嫌。

恋人が上機嫌だと、こちらまで上機嫌になれる。
笑っている君が隣にいるから僕も笑顔になれる。

僕の恋人は優しい。

一緒に散歩をしていたとき
犬を連れた女性とすれ違い
犬に向かって微笑んでいた。

前を見て歩けばいいのだけれど
犬を見て微笑むという仕草から
恋人の心にある優しさに触れた。

その優しさが今の僕を形成していて
犬を連れた人とすれ違うたびに僕も
犬に向けて最大限の微笑みを向ける。

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