2025-10-20
『見えなくなるまで、笑っていた』
別れ際、笑顔で見送ってくれる人が好きです。
なんせ、僕は別れ際に泣いてしまうのだから。
別れ際、伏し目がちに去る人も好きです。
会えないような雰囲気が漂っているから。
駅前、「終電逃しちゃうよ」と急かしながら
駅まで一緒に走ってくれた友達が思い浮かぶ。
僕は改札口を通り、振り返ってすぐに
「ここまでありがとう」と友達に言う。
「お前が安全に帰れるか心配やわ」と言われ
「安全に帰れるわ、お前のほうが心配や」と
お互いが心配をし合う気持ち悪い友達だけど。
僕が見えなくなるまで友達はこちらに
最大の笑顔を向け続けてくるから僕が
「気持ち悪いわ」とLINEを送るとすぐ。
「もう、悲しいわ」と返信が来る。
だからあえて、見える位置に戻り。
「おい」と声を出して呼びかけてみると
真顔だった友達が笑顔になりゆく瞬間が
一瞬の出来事だったけれど一生のようで。
「あはは」と笑ってしまった、可笑しくて。
僕の笑顔を見て、友達も「あはは」と笑う。
改札口を通して笑い合う男性を果たして
周りの通行人はどう思っているだろうか。
「ほな、また会おうな」と言い残し
僕は自分の乗るべき電車へと向かう。
相変わらず、見えなくなるまで笑顔な友達。
その笑顔に応えたくなり、大きく手を振る。
大きく手を振り返されて、笑った。
そして友達に見えない所で泣いた。
別れは僕にとって、途轍もなく悲しい。
どうせまた、会えるのだろうけれども。
電車に乗り、座席に座って外を眺めた。
もう暗くなっていて、自分の顔が映る。
頬を伝った涙の跡がそのまま残っている。
ハンカチを取り出して拭いている途中で。
スマホが通知音を鳴らした。
「今、電車の近くを歩いてんだけど」
「もしかして俺のこと、見えるか?」
可笑しかった、見えるわけないのに。
「こんなに暗けりゃ、もう見えないよ」と返信。
さっきまで別れで泣いていた僕に笑顔をくれた。
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『見えなくなるまで、笑っていた』
別れ際、笑顔で見送ってくれる人が好きです。
なんせ、僕は別れ際に泣いてしまうのだから。
別れ際、伏し目がちに去る人も好きです。
会えないような雰囲気が漂っているから。
駅前、「終電逃しちゃうよ」と急かしながら
駅まで一緒に走ってくれた友達が思い浮かぶ。
僕は改札口を通り、振り返ってすぐに
「ここまでありがとう」と友達に言う。
「お前が安全に帰れるか心配やわ」と言われ
「安全に帰れるわ、お前のほうが心配や」と
お互いが心配をし合う気持ち悪い友達だけど。
僕が見えなくなるまで友達はこちらに
最大の笑顔を向け続けてくるから僕が
「気持ち悪いわ」とLINEを送るとすぐ。
「もう、悲しいわ」と返信が来る。
だからあえて、見える位置に戻り。
「おい」と声を出して呼びかけてみると
真顔だった友達が笑顔になりゆく瞬間が
一瞬の出来事だったけれど一生のようで。
「あはは」と笑ってしまった、可笑しくて。
僕の笑顔を見て、友達も「あはは」と笑う。
改札口を通して笑い合う男性を果たして
周りの通行人はどう思っているだろうか。
「ほな、また会おうな」と言い残し
僕は自分の乗るべき電車へと向かう。
相変わらず、見えなくなるまで笑顔な友達。
その笑顔に応えたくなり、大きく手を振る。
大きく手を振り返されて、笑った。
そして友達に見えない所で泣いた。
別れは僕にとって、途轍もなく悲しい。
どうせまた、会えるのだろうけれども。
電車に乗り、座席に座って外を眺めた。
もう暗くなっていて、自分の顔が映る。
頬を伝った涙の跡がそのまま残っている。
ハンカチを取り出して拭いている途中で。
スマホが通知音を鳴らした。
「今、電車の近くを歩いてんだけど」
「もしかして俺のこと、見えるか?」
可笑しかった、見えるわけないのに。
「こんなに暗けりゃ、もう見えないよ」と返信。
さっきまで別れで泣いていた僕に笑顔をくれた。
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