2025-10-22
『幸福を手放した罰』

もう、好かれていないのだと思う。

「久しぶりに話せて嬉しい」と送っても
「そうだね」と返信が送られてくるだけ。

「話せなくて悲しかったよ」と送っても
「そうだね」と返信が送られてくるだけ。

あの頃、君と話していた時間だけが
僕にとって唯一楽しいと思えるもの。

けれどもう、あの頃は無くなり
あの頃の君ももう、存在しない。

君の返信から好意が無くなったのだと気付く。
手に入れられたはずの幸福を自ら手放した罰。

ごめんね、あのとき、君の思いを
素直に受け止められなかったから。

僕は今、マンションの屋上で文字を紡いでいる。

やけに烏の鳴き声が煩い。
公園で遊ぶ子供らの声も
部活動に励む少年の声も
響いている吹奏楽の音も。

「ごめんね、先に逝くね」
君に届かない文字を紡ぐ。

君がどれだけ愛を込めた返信をしようとも
きっとそれをもう、僕は見られないだろう。

返信が来なくなったことに対し
君はどんな思いを抱くのだろう。

悲しんでくれるかな、泣いてくれるかな。

「あのときはごめんね」
「本当は好きだったよ」

さっきまで煩かったのが噓のように思う。
小さくなりゆく音の中、世界から消えた。

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