2025-10-24
『幸福とは一体』

もっと話したくて話題を考え続けるけれど
きっと君は私と話したいとは思っていない。

「今日、雨だね。嫌になっちゃう」と送った。
「そうだね、嫌だね」と素っ気ない返信だけ。

「明日は晴れるかな。晴れがいいな」と送った。
「そうだね、晴れるといいね」と送られてくる。

会って話しているときは表情や抑揚から
相手の思っていることを感じ取れるけど。

文字だと何を思っているかを感じ取れず
嫌がっているのではないかと不安になる。

だから「話さないこと」が最善だと思うけれど
話さなければ君が誰かに取られてしまいそうで。

一生懸命、何を話そうかを考え続ける。
どうにか君に興味を持ってもらいたく。

送る指がどれだけ震えようとも
送らなければ繋がり合えないし。

君と話している時間が幸福そのものだった。
君が同じことを思っているとは限らないが。

そんなある日のことだった。
一通だけ君から連絡が来た。

「ここでたくさん話すのはやめよう」

やっぱり、私だけが幸福だと思っていたのか。
君に嫌な思いをさせてまで抱き続けた幸福を。

少しネガティブな思いが胸を占める。
「ごめん」と君に送ろうとしたとき。

入力中...と画面に表示されたから
君に送ろうとしていた文字を消す。

何が送られてくるのだろう、と
不安でいっぱいな私に対し君は。

「会っているときに話す話題が無くなる」
「せっかく話すなら君と会って話したい」

あれ、私が思っていたのと違う。
ポジティブな思いが胸を占める。

「私も会って話したい!」

その文字を送るときの指は
嬉しさのせいで震えていた。

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