「おお~い、領主様たちが来たぞ!」
領主様たちが街へ帰ってから2週間くらいが過ぎたころ、門で見張りをしていた村の人が慌てて村の方へ走ってきた。
アゲク村を囲うように作った前の門よりも大きいから、ここまで走って来るのも大変だったと思う。
『来たか。領主たちの反応はどうであった?』
「新しくできていた大きな壁にとても驚いていました」
『当然の反応ね、それじゃあ私は空から様子を見てくるわ』
たった2週間であれだけ大きな門が新しくできていたら、普通の人はびっくりするよね。
「ふむ、それでは行こうかのう」
「よろしくお願いします」
長老さんと村長さん、セリシアさんとクロウにシロガネと一緒に大きな門の方へ領主様たちを迎えに行く。
『前回と同じくらいの護衛の数ね。馬車の数が多いみたいだけれど、付近にも他の人影は見えないわ』
『ふむ、この村を攻めてくるわけではないようだな。さすがに考え過ぎであったか』
「娘の命の恩人に無礼な振る舞いをするような者ではなかったようですな。ですが、備えておくに越したことはございません」
「私もほっとしました」
シロガネが周囲を見て回ってくれて、誰もいないことがわかって僕もほっとした。
やっぱり領主様は悪い人じゃなかったみたいだ。
「それでは中へご案内しましょう」
「領主様、フィオナ様、アゲク村へようこそ」
「「「ようこそ!」」」
まずは村長さんと村の人たちが領主様たちを迎える。
「う、うむ。出迎え感謝する……」
「すっごく大きな壁が新しくできていてびっくりしました!」
領主様とフィオナちゃん、前に村へ来ていた護衛のみんなもとても驚いている。
「こちらの壁は一体どうしたのであろうか?」
「それについては儂の方から説明させてもらうとしよう」
「あ、あなたは?」
領主様の前に長老さんとエルフの里のみんなが前に出る。
エルフの里の人たちが応援を呼んでくれ、里のみんながアゲク村へやって来て、みんなの力を合わせてこの壁を作るのを手伝ってくれた。壁自体はすぐにできたけれど、領主様に話をつける手伝いをしてくれるために長老さんと10人くらいがそのまま残ってくれている。
また長老さん以外はくじで決めたから、里へ帰るみんなはすごく残念そうにしていたっけ。この村のおいしいご飯と温泉にとっても満足してくれたみたいで僕も嬉しかった。
「儂はヴァリンという者じゃ。ルーデンベルク=ハルグ殿、エルフのヴァリンという名に聞き覚えはないかのう?」
「ま、まさか、ヴァリン様ですか!? し、信じられません、本当にあの時のままのお姿です!」
「ほう、儂を覚えておるのか?」
「はい! 我がルーデンベルク家の恩人であるヴァリン様ですよね! 一度だけですが、父と共にいたところでお話させていただいたことがございます。もっとも、当時の私はまだ子供でしたが」
「ほうっ、もしやあの謁見の間でオルグ殿の後ろにおった童であったか?」
「その通りでございます! 覚えていただき、とても光栄でございます!」
領主様が長老さんの前に片膝をついた。
オルグさんというのは先代の領主様で、今の領主様のお父さんみたいだ。ちゃんと領主様は長老さんのことを覚えていたらしい。
……でも領主様ってすごい偉い人なんだよね? それなのに長老さんの前ですごく畏まっているってことは長老さんてそれ以上にすごいのかな?
「お父様、こちらの方はいったい……」
フィオナちゃんや護衛の人たちが驚いている。他の護衛の人たちは長老さんのことは知らないみたいだ。
「うむ。ヴァリン殿はルーデンベルク家の恩人である。まだ我が父……フィオナの祖父が当主であったころ、何百年に一度かの大規模な魔物の群れが現れた。その大規模な魔物の群れは森に住む魔物を飲み込み、さらに大きな集団となって、ルーデンベル家の領地を次々と襲っていったのだ。騎士や街の冒険者の力を借りて討伐にあたったのだが、それでも魔物の群れの勢いを止めることができなかった。そんな時に魔物の群れを強大な魔法を使い殲滅してくれたのがヴァリン殿なのである」


