「ほう、これは美味であるな!」
「お父様、こちらのお肉もお野菜も本当においしいです!」
村の真ん中でいつものようにみんなで晩ご飯を食べているけれど、今日は村のみんなだけじゃなくて、領主様たちも一緒にご飯を食べている。
この村で収穫した作物に加えて、アリオさんやクロウたちが昨日狩ってきたお肉なんかを食べてもらっている。
「あの温泉の湯をかけて育てた作物はなぜか味も良くなるのです。そして栽培が難しいとされているコショウなども育てることができるので、この村の食事はだいぶ豊かになりました」
「昔は作物がまったく育たなかったもんな……です」
「ふ~む、本当に不思議な温泉であるのだな」
この村で収穫した野菜は領主様の口に合ったようだ。こっちの世界の野菜は本当においしいよね。
領主様だけでなく、フィオナちゃんや護衛の人たちもおいしそうにご飯を食べている。エルフの里のみんながこの村に来てくれた時もそうだけれど、こうやってみんなでおいしくご飯を食べるのはなんだかいいなあ。
「ご馳走さまでした。本当においしかったです」
「うむ。本当に美味であった。こういった場所で食べる料理も良いものであるな」
みんなこの村のご飯に満足してくれたみたいだ。
「ご馳走になった。本当に感謝している」
「満足していただけたようでなによりです」
「後ほど護衛の者の分も含めて代金を払おう」
「い、いえ! 先ほど大金をいただきましたし、これ以上は本当に不要です!」
セリシアさんが慌てて断る。領主様は結局ポーション代として金貨500枚をセリシアさんと村長さんに渡してくれた。みんなで相談をした時にあまりにも大金だったし、万能温泉のお湯を使っただけだから断ったんだけれど、部下や娘の命を救ってくれたからと領主様から断れない感じだった。
さすがにこれ以上お金をもらうわけにはいかないから、こっちの方は受け取るのを断らせてもらった。
「……あのう、ソラ様」
「は、はい!」
晩ご飯を食べ終わったあと、突然フィオナちゃんが僕に話しかけてきた。
今まで一度も話したことがないのに一体どうしたんだろう。
「そちらのワンちゃんに触らせていただけないでしょうか?」
恐る恐るといった様子で僕に話しかけてきたフィオナちゃんはどうやら小さくなったクロウに触りたいみたいだ。偉い人だから、僕が何か悪いことをしたのかなとドキドキしちゃった。
そういえばローナちゃんやミアさんも初めて会った時はクロウやシロガネに触りたかったみたいだし、街ではイヌやネコみたいにベットは見なかったから、珍しいのかもしれない。
だからこそ街で目立ってしまって、この村にいることがバレちゃったんだけれど。
でも一緒に来ている護衛の人たちはそこまで魔法に詳しい人はいないみたいで、クロウとシロガネが聖獣であることに気付いた人はいないみたいでほっとしている。やっぱりセリシアさんやエルフの里の人たちのように魔法に詳しい人は少ないみたいだ。
「クロウ、大丈夫かな?」
「ワオン!」
僕が聞くとクロウが頷く。
「大丈夫だって」
「ありがとうございます! クロウちゃんというのですね!」
すごく嬉しそうな笑顔を見せるフィオナちゃん。本当に可愛い。
「フィオナ様、十分にお気を付けください」
「クロウは魔物だけれど、大人しいから大丈夫だよ」
近くにいた女性の護衛の人が腰に差している剣に手をかける。
魔物だから警戒する気持ちは分かるけれど、さすがにクロウに剣を向けるかもしれないのなら、近付いてほしくないんだけれどなあ……。
「ミローネ、大丈夫です」
「は、はい!」
フィオナちゃんがそう言うと、護衛の人がクロウを警戒しつつも剣は納めてくれた。僕としてもそっちの方が安心できる。
「ワオン!」
「うわあ~とっても可愛いです!」
フィオナちゃんがゆっくりとクロウの頭を撫でる。クロウが暴れないとわかると、首元や背中も一緒に撫でてあげている。
「ふ~む、魔物なのにとても大人しいのだな。こちらの魔物はどのような魔物なのだ?」
「はっ! この黒いオオカミはおそらくブラックウルフの子供かと。そちらの少し大きな鳥も魔物のようですが、見たことのない魔物ですね。ただ、そちらも危険はなさそうです」
ミローネさんが言うにはクロウに似たブラックウルフという魔物がいるらしい。本当は黒狼王っていうすごい魔物なんだけれどね。
でもこれで二人が危険になることがなさそうでほっとした。


