スキル【万能温泉】で、もふもふ聖獣達と始める異世界辺境村おこし。


「この温泉に浸かるだけで娘の毒が治るのであるな!」

「はい、おそらくですが」

「おおっ、感謝する!」

「領主様、まずは我々が試しに……」

「いや、その必要はない。すぐに娘を入れてやってくれ」

「か、かしこまりました」

 護衛の人たちの中には女性の人もいた。万能温泉の力を試すようなことはせず、すぐにフィオナちゃんを万能温泉に入れてくれた。



「お父様!」

「おおっ、フィオナ!」

 しばらくの間村長さんの家で待っていると、フィオナちゃんが走ってきて、領主様に抱き着く。

 あれだけ元気に走れるということはもう身体の毒は大丈夫みたいだ。

「もう大丈夫なのか? 痛いところはないのか?」

「はい! 今はもう全然痛くも苦しくないです! むしろ前よりも元気に感じるくらいです!」

「よかった、本当によかった……」

 領主様はフィオナちゃんを抱きしめながら涙を流している。フィオナちゃんもとっても喜んでいるし、毒が治って本当によかった。



「大変見苦しいところをお見せした」

「とんでもございません。娘の無事を喜ぶのは親として当然のことでございます」

「ええ。ご息女が回復して本当によかったです」

 あのあと一緒に来ていたお医者さんの人がフィオナちゃんの体調を確認したところ、毒が完全に回復したことがわかった。

 改めて村長さんの家で領主様たちと向かい合っている。村長さんとセリシアさんがいて、僕とクロウとシロガネは少し後ろのほうでこっそりと話を聞いている。

「見ていただいた通り、あの温泉には非常に強い治癒効果がございます。もちろんすぐに領主様へ報告すべきことであったかもしれませんが、あの温泉のお湯の効果は短い間に消えてしまいます。そのためこの温泉の湯をそちらまで持ち運び、効果を説明して調べてもらうことが叶わず、どうしたものかと悩んでいたところでございます」

「それとあの温泉の力を狙って悪しき者がこの村へ集まってこないかが心配で公表をすることができませんでした。本当に申し訳ございません」

 さっきみんなで相談したことを領主様に説明する。ちょっと苦しいかもしれないけれど、悪い人たちがこの村へ集まってこないように黙っていたのは本当のことだ。

「……う~む、そのような力がある湯の存在は初めて聞く。だが、街の治療師たちが治すことのできなかったフィオナの毒を実際に治したのも事実だ。そしてこの村が過酷な環境であると事前に聞いていたが、畑には多くの作物が実っていた。先ほど作物の成長を促すとも言っておったな」

「左様です。こちらのお湯を作物かけると普通の何倍もの速度で成長し、味も良くなるのです。そしてこの温泉のお湯は汲んでもすぐに湧き、汚れなどもすぐに消えていくのです」

「なんと……それはすごい。確かにそんなにすばらしいものがあれば、この村を多くの者が狙う可能性もある」

 やっぱり領主様もそう思うみたいだ。う~ん、みんなで平和に万能温泉の力を使うみたいな発想はあまりないのかなあ……。

「領主様、先ほどいただいたポーションの代金はお返しします。そしてフィオナ様を助けた礼ということでありましたら、このアゲク村のことをそのまま秘密にしておいていただけないでしょうか? 私はこの村や村の人たちに大きな恩があり、この村に置いてもらっています。どうか、そのままの生活を続けさせてください!」

「どうかお願いします」

 セリシアさんと村長さんが頭を下げる。僕も二人に倣って後ろで頭を下げた。

「……ふむ。これほど強力な治癒効果のある湯となると私の方でもどうすべきか迷うところであるな。そなたたちの言葉を疑うわけではないが、あの温泉のことをこちらでも調べても良いだろうか? それを見て今後のことを改めて話させてもらいたい」

「は、はい。承知しました……」

「もちろん、湯の効果が異なっていたからといって処罰をするつもりなどない。我が部下や娘の命を救ってくれた皆の者にはこちらもできる限りの礼儀を尽くすつもりである。ただ、もしかするとこの温泉の湯の力を貸してもらうかもしれぬ」

 どうやらいきなり万能温泉を没収するみたいなことはないらしい。村長さんが言っていた通り、領主様は悪い人間じゃないみたいだ。

 万能温泉がこの村で自然に湧いたことにしておけば、たとえ温泉を奪いに来たとしても、温泉を消せば何とかなる。温泉の効果が1日で消えるのは本当だし、ここから一番近い街まで持って帰って利用することもできないはずだ。万能温泉のお湯の効力がすぐになくなるのはある意味良かったのかもしれない。

 さすが村長さん。今のところ村長さんの考えがとてもうまくいっている。