「鳥さん、元気でね!」

 みんなで温泉を楽しんだあと、身体を乾かして服を着た。

 鳥さんも呪いが消えて元気になったみたいだし、ここでお別れだ。元気でやっていけるといいなあ。

「ピュイ!」

「えっ!?」

 クロウと一緒に元来た道の方へ戻ろうとしたところで鳥さんが一鳴きすると、鳥さんの身体が光り輝いて一気に3メートルくらいの大きさになった。

 これはクロウが大きくなった時と全く一緒だ。

『ソラ様、この度は私の呪いを解いていただきましてありがとうございました』

「と、鳥さん……?」

 大きくなった鳥さんは小さかった姿と同じで、綺麗な白っぽい銀色の羽毛を全身に纏い、お腹はとってももふもふとしている。そしてとても流暢な言葉で話し始めた。

『やはり貴殿も我と同じ聖獣であったか』

『ええ、これまで黙っていて申し訳ございません。あなたとソラ様がどのような方かわからずに試すような真似をしたことを謝罪しますわ』

『気にする必要はない。我も最初は人など、とてもではないが信じられなかったからな』

 鳥さんとクロウが普通に話している……

 この鳥さんはクロウと同じ言葉を話せる聖獣だったみたいだ。どうやらクロウは気付いていたらしい。

 聖獣は珍しいってクロウから聞いていたけれど、立て続けに会えるなんて。クロウは運命だと言っていたけれど、僕がこの世界に来たことと関係があるのかな?

『私は銀翔鳥(ぎんしょうちょう)と申しますわ。この呪いは昔とある魔物を倒した際にかけられてしまった強力な呪いです。徐々に命を蝕んでいく呪いですが、様々な手を尽くしても解除できず、私は死を覚悟していましたわ。ですが、この強力な呪いをソラ様があっという間に解いてくれました。どうかこのご恩を返させてください!』

「い、いえ。無事に呪いが解けてよかったです。別に僕が何かを失ったというわけではないので、本当に気にしないで大丈夫ですよ」

 僕の万能温泉は何かを消費したりせずに使える能力だ。温泉に入っていただけだし、別に対価なんて必要ない。

『そんな、命の恩人であるソラ様に何もお返しできないなんて……。何かお役に立てることはないでしょうか!』

「え、え~と……」

『ソラ、そこまで言うのなら、この者にも我らと共についてきてもらえば良いのではないか?』

「でも、僕たちは行く当てがないし、泊まる場所だってないんだよ……」

『大丈夫ですわ! 自分のことは自分でなんとかしますから、どうか同行させてください!』

『我ら聖獣と呼ばれる存在は他の者よりも知性や力があるぶん、自身に誇りを持っているのだ。我もソラに命を救われた身で、命を救われた恩を返したいというこの者の気持ちはわかるつもりである。ソラがもしも嫌でなければ、その者も同行させてやってくれないか?』

『どうかお願いしますわ!』

「も、もちろん嫌じゃないです。わかりましたから、頭を上げてください!」

 銀翔鳥さんが僕に向かって頭を下げてきた。

『本当ですか! ありがとうございます!』

「う、うん。僕のほうこそ、何も知らないのでよろしくお願いします。でも、銀翔鳥さんが負担にならない範囲で大丈夫ですからね!」

 むしろ僕の方がお礼を言うべきことなんじゃないかな。

『承知しましたわ! それではソラ様、どうか主従の証として、私に名をいただけないでしょうか?』

「………………」

 銀翔鳥さんもクロウと同じことを言っている。もしかすると聖獣さんは命を救われたら、その人に従わなきゃいけないとかあるのかな?

「あの、主従とかじゃなくて友達とかじゃ駄目かな……?」

『友達ですか? ですが命の恩人であるソラ様にそれは馴れ馴れしいかと……』

「そんなことないよ。僕は友達の方がいい!」

『我もソラの友である。心優しきソラがそういった関係を望まない以上、同行を望むのならそれを受け入れるべきだ』

『わ、わかりましたわ』

『ソラ、我と同じように友にあだ名をつけるような感覚で問題ない』

「……うん、わかった」

 どうやらあだ名だけは付けてあげないと駄目みたいだ。友達なんて全然いなかったから、あだ名をつけるのはあんまり得意じゃないんだよなあ。

 クロウもそうだったけれど、あだ名をつけることには何か意味があったりするのかな?

 う~ん、綺麗な羽毛をしているからギン、ギンショウ……そういえば、白っぽい銀色のことを白銀(しろがね)と呼ぶってお父さんに聞いたことがあった。

「それじゃあ、シロガネって名前はどうかな? 僕がいた場所だと、銀翔鳥さんの綺麗な羽の色のことをそう呼ぶんだ」

『シロガネ……とても素晴らしい名をありがとうございますわ、ソラ様!』

「気に入ってもらえて良かった。シロガネ、僕のことはソラって呼んでほしいな。それにもっと普通にしゃべってもらえた方が僕も嬉しいんだ」

『わかったわ、ソラ!』

 そう言いながら、シロガネはとても喜んだ表情を浮かべてくれた。