「ふう~やはりソラくんの温泉は気持ちがええのう」

『うむ。街までの道中もこの温泉があるだけで楽になるな』

「ああ。数日間入らないだけで温泉が恋しくなってしまうからなあ」

 アゲク村へ帰ってきて、早速みんなで万能温泉に入っている。街までの往復でも温泉には入ってきたけれど、やっぱりアゲク村でみんなと安心して温泉に入るのが一番ほっとする。

 僕たちが街へ出掛けている間、村のみんなも元気そうで本当によかった。



「コケー!」

「ただいま、クルコ。元気そうだね」

 僕たちが温泉に入ったあとは女性の人たちも温泉に入って、最後にクルックスさんたちが温泉に入る。クルコや他のみんなもすごく元気そうだった。

 クルックスさんがいる場所に行くと、クルコが一番に駆けてきた。

「みんなソラくんたちがいなくて寂しかったのよね」

「ソラお兄ちゃんがいない間はみんな不安そうだったよ!」

「そうなんだあ。みんなもただいま」

「コケコ~」

「コケ!」

 エマさんとローナちゃんがそんなことを言ってくれる。僕もみんなが元気そうにしてくれていて嬉しい。



「それでは乾杯!」

「「「乾杯!」」」

 みんなで温泉に入ったあとは村の中心に集まってみんなで宴会だ。

「かあああ~うまい! やっぱり酒は最高だぜ!」

「ああ、最高だ!」

 アリオさんたちが街で購入してきたお酒を飲んでいる。みんな本当においしそうに飲むなあ。

「でもやっぱり、エルフの里の皆さんにもらったワインの方がおいしいわね」

「ああ、こればかりはしょうがないさ」

 ただ街で購入してきたお酒よりもエルフの里のみんなが持ってきてくれたお酒の方がおいしいらしい。

『ふふっ、ソラはもう少し大きくなってからよ』

『うむ。前にも言ったが、酒は身体が大きくなってからだぞ』

「う、うん」

 僕がおいしそうにお酒を飲んでいる村のみんなのことを羨ましそうに見ていると、シロガネとクロウに注意されてしまった。

 やっぱり駄目って言われちゃうと羨ましくなっちゃうよね。

「レッドアッシュの実と一緒に街で購入してきたグルーブからもワインを作ることが可能ですからね。もしかしたらこのアゲク村でもワインが作れるかもしれません」

「うむ、うまくできるといいのじゃがな」

「ああ。村で酒が作れたら最高だぜ!」

 ワインの元になるグルーブの苗をミアさんのお店から買ってきた。これが成長すると実がなって、それをすりつぶして保存しておくとワインを作ることができるらしい。

 村長さんとアリオさんもすごく楽しみにしている。

「グルーブの実の果汁はジュースにもなりますよ」

「うん、楽しみだね!」

 ワインだけじゃなくてジュースも作れるみたいだし、僕やローナちゃんも一緒に楽しめるみたいだ。

 セリシアさんが言うにはこのグループも木が育つまで結構時間がかかるらしい。万能温泉のお湯をかけたとしてもルミエオレンみたいに少し先になりそうだ。

「さあ、みなさん疲れたでしょう。たくさん食べてくださいね」

「ありがとう、エマさん」

『とってもおいしいわね』

『うむ。日々の料理もだんだんと美味となっていく気がするぞ』

 今日は僕たちが無事に村へ帰ってきたお祝いということで、たくさんの料理が並べられている。2人の言う通り、いろんな食材や香辛料が手に入るようになってきて、毎日のご飯が今まで以上においしくなってきた。

 クルックスさんの卵も定期的に手に入るようになったのもすごく助かる。この卵焼きもすごくおいしい。街で購入してきたレッドアッシュもどんな味に育つのか楽しみだなあ。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「うわっ、少しピリッとしているね……」

「ええ、これがレッドアッシュですか。確かに辛味が強いですね。ですが、この辛味は癖になりそうな味です」

『むっ、刺激はあるがこれはいけるぞ』

『……私には少し辛いわね。こっちの緑色の方はなかなかおいしいわ』

 アゲク村に帰ってきてから1週間が経った。グルーブのほうはまだ掛かりそうだけれど、新しく育て始めたレッドアッシュは収穫できるようになった。

 万能温泉のお湯のおかげで完熟まで育てるのが難しいとされていたレッドアッシュも真っ赤になるまで育てることができ、それを乾燥させてすりつぶした香辛料を使った料理をお昼にみんなで食べている。

 野菜炒めにまぶすといつものコショウよりも辛くて刺激的な味だった。僕にとってはちょっと辛いかもしれない……。みんなも好き嫌いがあるみたいだ。

 こっちの緑色の方は炒めたり茹でたりしたら、結構おいしく食べられる。

「やはり香辛料が増えると様々な味が楽しめて良いのう」

「ああ。それにいろんな作物も収穫できるようになったし、どんどんと村が大きくなっていくぜ」

 このアゲク村が大きくなっていくのは僕もとても嬉しいことだ。

「お~い、大変だ! 誰か来てくれ!」

「っ!?」

 そんな平穏なお昼の時間に見張りをしていた人の大きな声が村の中に響き渡った。