「本当にありがとうございました。皆様のおかげでこの村がより快適になりました、またいつでもお越しください」
「こちらこそすばらしいおもてなしをありがとうございました。今度はぜひとも我らの里にもお越しください」
「ええ、その際はよろしくお願いします」
村長さんと長老さんが握手をする。今はアゲク村の入り口でエルフのみんなをお見送りするところだ。
エルフの里のみんながアゲク村へやって来てから5日間が過ぎた。その間はエルフの里のみんなが魔法を使っていっぱい手伝ってくれたおかげで、アゲク村がより快適になった。
特に村を囲っていたこの壁がすごく立派で頑丈になっている。元はみんなで作った丸太の囲いだったけれど、その丸太を覆うような形で土魔法による壁を作ってくれた。壁の上に登れる階段も一緒に作ってくれたし、本当に土魔法は便利だったなあ。
畑を広げたり、クルックスさんの小屋を新しく作ったこともあって、この機会に村をさらに広くした。壁を強固にしたし、これなら魔物がいっぱい来ても全然問題なさそうだ。僕がこの村に来た時と比べたら本当に大違いな気がする。
「ソラ殿、なにか困ったことがあったらいつでも儂らを頼ってほしい。儂らはソラ殿から受けた恩は決して忘れないからのう」
「いつでも頼ってくれると嬉しいぞ」
「うん。もしも困ったらみんなにお願いするね!」
エルフの里のみんなの魔法のすごさはこの三日間でよくわかった。恩とかは気にしないでいいけれど、何か困ったことがあったら助けてくれるとすごく嬉しい。
「ソラくんの温泉は本当に気持ちが良かったよ。特にこの村についた日の温泉は本当に格別だったなあ」
「ええ、あのすばらしい温泉だけでもここまで来た価値はあるわね。次に来る時も誰が来るかで揉めてしまいそうね」
万能温泉を喜んでもらえてよかった。特に疲れている時にあの温泉は気持ちがいいんだよね。
魔法を使って普通よりもここまで早く来られたらしいけれど、その分疲れたんだろうなあ。
「セリシア、ソラ殿をしっかりと守るのだぞ」
「はい、長老! 私の命にかえましても!」
「………………」
相変わらずセリシアさんはすごく大袈裟だよ。でもセリシアさんが引き続きアゲク村に残ってくれてほっとしている。
エルフの里からここまではそこまで遠くないらしいから、たまに帰ることができる。でもあの長い距離でも遠くないんだから、こっちの世界での移動は本当に大変だよね。
「クロウ殿、シロガネ殿、セリシアはまだ未熟なところもあるがゆえ、どうぞよろしくお願いします」
「ちょ、長老!?」
『うむ、引き受けよう』
『ふふ、任せておいて』
長老さんにとってはセリシアさんもまだまだらしい。確かに長老さんの魔法は本当にすごかった。きっとこれまでにいっぱい練習してきたんだろうなあ。
僕も万能温泉のスキルは使えるけれど、魔法は使えないから、クロウとシロガネに魔法を教えてもらっているのを見ると少しだけ羨ましかったりもするんだよね。
「それではありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
「また来てね~!」
エルフの里のみんなは手を振りながらアゲク村を出発していった。この5日間はアゲク村にみんなが来てくれてとても楽しかった。いろんな魔法を見せてもらえたし、また来てくれると嬉しいなあ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「それでは行ってくる」
「村長、お気をつけて。ソラくんも気を付けてね」
「うん!」
エルフのみんながアゲク村から帰ってから3日後。僕たちはまたヤークモの街へ向けて出発する。
今回は収穫したコショウを売るためだ。万能温泉とエルフの里からお土産にもらったいろんな種類の作物のおかげで野菜には困らなくなったし、クロウやシロガネにセリシアさんたちが狩りをしてくれるからお肉にも困らなくなった。
だけどご飯だけじゃ何かあった時に困るから、収穫した作物を売ってお金に換えるらしい。他にも金属の物はこの村では手に入らないから、街で購入するためにもお金は必要だもんね。
「皆さん、村長をお願いします」
「セリシア、みんなを頼むぜ」
『うむ、任せておくがいい』
『ええ、任されたわ』
「はい、承知しました」
前回ヤークモの街へ行った時は村長さんとアリオさんと一緒に出掛けたけれど、今回はアリオさんがお留守番で、代わりにセリシアさんが一緒に同行してくれる。そういえばセリシアさんと初めて出会ったのはヤークモの街からの帰り道だったっけ。
クロウとシロガネに乗って移動するから、どうしても人数は限られてしまう。あの時とは違ってアゲク村にはすごく丈夫で立派な壁があるから、もしかすると村の方が安全かもしれない。
「いってらっしゃい!」
「うん、行ってきます!」
ローナちゃんや村のみんなのみんなの見送りを受けて、ヤークモの街へ出発した。


