「ほう、こいつはすげえな」
「うむ、これは見事なものじゃ」
「みんなで畑を大きくしたんだよ、すごいでしょ!」
村長さんの家で挨拶を終えてからエルフの里のみんなにアゲク村を案内している。
まずはこの村の畑だ。僕たちがエルフの里へお邪魔している間にみんなが今までよりもずっと広く畑を広げてくれていた。そこにエルフの里からもらった作物や果物なんかを植えて万能温泉のお湯をかけて成長させたことによって、今では立派な畑になっていた。
エルフの里と比べたらそこまで大きくないかもしれないけれど、この村にいる人数から考えたら十分だ。
「あら、ルミエオレンの木がもうこんなに育っているのね」
「ええ、これもソラくんの万能温泉の力です。本来ならばアレンディールの森付近でしか育たないはずのルミエオレンの木が何倍も早く成長しました」
「ふむ、それはすごいのう」
まだ実はなっていないけれど、小さな芽だったルミエオレンはもう立派な木になっている。セリシアさんによると実をつけるまでもう少しかかるそうだ。
でも他の作物はもうすでに収穫して毎日の食卓に出ている。今までの倍以上の種類の野菜が一気に収穫できるようになったから、村の料理を作る人たちは一気に忙しくなった。
『ふっふ、よく見てるがいい』
「クロウ様?」
クロウが風魔法を発動させると、激しい風が作物の間を通り過ぎながら、茎になっている実をもぎ取っていく。
これはエルフの里でエルフのみんなが使っていた魔法の使い方だ。
「「「おおっ!」」」
『我にかかればこんなものだ』
『まったく、クロウったら』
みんなも驚いている。あの時にエルフのみんなが使っていた魔法よりも広い範囲を一気に収穫してしまった。
エルフの里へ行く前は魔法の細かいコントロールをできなかったはずだけれど、いつの間にかできるようになっていたんだよね。シロガネもそうだけれど、村の外でセリシアさんと魔法の訓練をしている時にこっそりと練習していたのかな。
でもクロウのおかげで畑がこんなに大きくなったのに収穫の時間はそれほど増えなくなったんだ。
「次はこっちだよ!」
「おお、これはクルックスですな」
「この村でも飼っていたのですね」
「コケ~!」
続いてやってきたのはクルックスさんのいる場所だ。
「クルコ」
「コケコケ!」
僕が手を振ると、1羽のクルックスがこっちまで走ってきた。クルコだけは呼ばなくても僕を見たら、いつもすぐに近寄ってくれる。
頭を下げてきたから、撫でてあげると嬉しそうにしていた。
「ほう、これはよく懐いておりますな。以前に聞いたお話ではこの村でクルックスを飼っていたとは聞いておりませんでしたが……」
「皆様が戻ってきてから飼い始ました。いろいろとありましたが、この村の食事とソラくんの温泉をとても気に入ってくれたようで、柵の外に出してもすぐに戻ってくるのですよ」
「なんと、それはすごい!」
村長さんが長老さんに説明をしてくれる。
みんなもこの村にだいぶ慣れてくれたみたいだ。
「ほお、これはソラくんの温泉ですかな?」
「うん。雨の日はあっちの方に移すんだよ」
次は僕の万能温泉を設置している場所を案内している。
いつもは木の柵で囲った場所に設置をして、自由にそのお湯を使ったりしているけれど、その隣には屋根付きの大きな小屋をグラルドさんが建ててくれた。雨が降ったり外が寒い日にはこっちの方に温泉を移動するためだ。
とはいえ、それ以外の時はいつも通り外に配置している。やっぱりこの世界はとっても星空が綺麗だから、外で温泉に入る方が僕も好きだ。
「見てると入りたくなってしまうな」
「ええ、里のお風呂よりもソラくんの温泉の方が気持ちいいからね」
そう言ってくれると嬉しいなあ。もちろん村の案内が終わったら温泉に入ってもらうつもりだ。
エルフの里からアゲク村まで結構な距離があってきっとみんな疲れているから、温泉で身体を休ませたいに違いない。僕もエルフの里から帰ってきた時はだいぶ疲れていた。身体の疲れは毎日温泉に入ることで癒されたけれど、やっぱりずっと外にいると精神的に少しずつ疲れてきちゃうんだよね。
そのあとはエルフのみんなが今日泊まるためのおうちを案内した。エルフのみんながこの村に来ることは分かっていたから、新たに大きめの家をみんなで建てたんだ。
いくらシロガネが木材をすぐに村まで運べるからといって、こんなに早く大きな家を建てられるなんて本当にすごいよね。エルフの里のみんなもとても驚いていた。


