「コケコケ!」

「気持ちよさそうでよかったあ」

「魔物にも温泉の良さが分かるのですね……。それにしてもとっても気持ちが良さそうです」

 夜になって、いつものようにみんなで万能温泉に入ったあと、最後にクルックスさんにも温泉に入ってもらった。

 セリシアさんの言う通り、みんなと一緒でとても気持ちよさそうに温泉に浸かっている。

『むしろ魔物だからこそ温かい湯に浸かれることなどないから快適なのだろう』

『ええ、汚れや土埃が不快だから、どんなに寒くても川に入らなくちゃいけないものね』

「そうなんだ」

 元の世界には温泉に入っているお猿さんやカピパラさんをテレビで見たことがあるけれど、自然に温泉が沸くことはあんまりないのかもしれない。確か火山の近くとかに温泉が沸くんだよね。

「コケー♪」

 最初は暴れていたクルックスさんだけれど、少しずつ村に慣れてきたみたいで、ちょっとずつ大人しくなってきてくれた。このまま村で一緒に住んでくれることを選んでくれると嬉しいんだけれどなあ。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「コケ~!」

「コケコケ!」

「みんな今日も元気だね」

「ええ。もうすっかりこの村に馴染んだようです」

 最初は1羽だけだったクルックスさんも今この数日ででは3羽まで増えている。シロガネやセリシアさんが新しく連れてきてくれた。みんな最初は暴れていたけれど、今ではこの村で楽しそうに暮らしている。

「みんなこの村に残ってくれて良かったあ」

「おいしい食事をお腹いっぱい食べることができ、温かい温泉に毎日入れて外敵もまったくいないのですからそれも当然ですね」

 シロガネやセリシアさんに何回か森の方まで連れていってもらったけれど、そのまま村まで一緒に戻って来てくれた。

 クルックスさんが村のみんなと一緒にアゲク村まで戻ってきてくれた時はすごく安心したんだよね。

「コケー!」

「クルコはいつも一番元気だね!」

 一番活発に走り回っているクルックスさんは最初にこの村へ連れてきた子だ。全員がこの村で暮らすことを選んでくれた時に3羽のクルックスさんに名前を付けてあげた。

 ちなみに名前は村のみんなで相談して決めた。クロウとシロガネはなんだか僕だけで名前を付けるのを嫌がっていたみたいだし、やっぱり名前を付けるのにはなにか意味があるのかもしれない。

『……それにしてもソラはよくあれらの区別がつくな』

『私にもどれがクルコなのかさっぱりわからないわね……』

「ええ~みんな全然違うよ。あっちの一番大きいのがクルミで、そっちで水浴びをしているのがクルルだよ」

「ローナは全然わかんない」

「……ソラ坊はやっぱり大物だな」

 みんなあんまり違いが分からないみたいだ。こんなに違うのにね。ちなみにここにいる3羽は全部女の子だ。女の子だけでも卵を産めるのか不思議だったけれど、無精卵といって孵らない卵らしい。難しくて僕にはよくわからなかった。

「おお~い、エルフの里の人たちが来たぞ!」

「里の者が来たようですね。思っていたよりも早かったです」

 村の入り口の方から見張りをしていた人の声が聞こえた。

 まだ帰って来てから10日しか経っていないのにもうこのアゲク村まで来てくれたんだ。



「初めまして、この村で村長をしておりますエルダと申します」

「ヴァリンと申します。この度は我らを村に受け入れてくれて感謝いたします」

 村長さんと長老さんが握手をする。

 エルフの里からは長老さんとミリアルさんを含めた合計8人が来てくれた。今は村長さんの家で挨拶をしているところだ。本当はもっと大勢で来たかったらしいけれど、いきなり大勢で来たら村のみんなに迷惑になるから少人数で来てくれたらしい。

「こちらこそセリシア殿には本当にお世話になっております」

「それは何よりです。この子は子供のころからおてんばで、いつも手を焼いておりましたから、立派に成長してくれて儂も嬉しいです」

「ちょ、長老!?」

 セリシアさんが顔を赤くしている。いつも凛々しいセリシアさんがこんなに慌てている姿は見たことがない。すっごい年上だけれど、やっぱり長老さんから見たらまだ子供なのかも。

「ソラ殿、クロウ殿、シロガネ殿。無事に聖天の樹が元の姿に戻りました。本当に皆様のおかげです、改めてお礼申し上げます」

「ううん、気にしないで。僕たちの方こそ、みんながくれた種と苗のおかげでいろんな作物が採れるようになったよ!」

 エルフの里からお土産としてもらったいろんな種類の種や苗はすでに成長して収穫できている。今まで村にあった作物と合わせて、いろんなご飯が食べられるようになって、とっても感謝している。

 ルミエオレンだけは成長に時間がかかるらしくてまだ収穫できていないけれど、万能温泉のお湯のおかげで立派な大きな木に成長しているからもうちょっとだ。

『おかげでこれまでよりも食事が楽しくなったものだ。感謝しているぞ』

『ええ、おいしい料理が作れるようにもなったわ』

「それはなによりです。それにしてもここは本当に立派な村で驚きましたよ」

「みんなでいっぱい頑張ったんだよ! あとで案内するね!」

 最初のころに比べたらアゲク村は本当に大きくなったと思う。

 エルフの里に行った時はみんなに案内してもらったから、今日は僕たちがアゲク村を案内する番だ!