「皆様、お帰りなさいませ」

「みんな元気そうでなによりだぜ」

 アゲク村へ入ると、村のみんなが僕たちを迎えてくれた。僕たちがいない間、大きな出来事は起きていないみたいでほっとする。

「ソラお兄ちゃん、お帰りなさい!」

「ローナちゃん、ただいま」

 ローナちゃんが僕に抱き着いてきた。まだ10日くらいしかこの村から離れていないのに、なんだか久しぶりにおうちへ帰ってきたみたいだなあ。

「シロガネ様、クロウ様もお帰りなさいませ」

「思ったよりもお早いお帰りでしたな」

『ただいま。みんなも元気そうで良かったわ』

『うむ。この村も何もなかったようで安心したぞ』

 村長さんとグラルドさんも僕たちのことを心配してくれていたみたいだ。

「セリシアも帰ってきたんだな。もしかするとそのままエルフの里から帰ってこないんじゃないかと心配していたぜ」

「ソラくんのおかげで里の憂いもなくなりましたからね。私たちを送り出してくれました村の皆様に感謝しておりますので、今まで以上に頑張りますよ!」

 アリオさんも僕と一緒でセリシアさんがそのままエルフの里に残るんじゃないのか心配していたらしい。

「詳しいお話は後ほど聞かせてほしいですが、まずはご飯にしましょう」



「なるほど、無事に聖天の樹が元に戻ったようで何よりですな」

「はい。本当にソラくんのおかげです」

 久しぶりにアゲク村で晩ご飯をお腹いっぱい食べたけれど、やっぱり野営をして食べるよりも落ち着く。クロウ、シロガネ、セリシアさんと一緒に野営をしながら食べるご飯もおいしかったけれど、村のみんなと一緒に食べるご飯もとてもおいしかった。

 ご飯を食べたあとはいつものように万能温泉を出して、順番に入ってもらっている。僕たちは先に村長さんの家で、村長さん、アリオさん、グラルドさんたちに今回の旅のお話をしているところだ。

「それにしても盗賊たちに出会うとは大変だったな。まあ、この3人が一緒にいるのなら、この村にいるよりもよっぽど安心だとは思うが」

「セリシアさん一人で全員やっつけちゃったんだよ!」

「クロウ師匠とシロガネ師匠がお相手をしていたら骨ひとつ残さなかったかもしれませんから、あの盗賊たちはある意味運が良かったのかもしれません」

 初めて盗賊に出会ったけれど、みんなが一緒にいてくれたおかげで少ししか怖くはなかった。みんなが強いのは知っているけれど、それでもやっぱり怪我をしないかほんの少しだけ心配だったからね。

「でもそれだけじゃなくて、とっても長い川を渡ったり、行商人のおじちゃんと出会ったりしていろんなことがあったよ! それにエルフの里はとっても綺麗だったし、魔法で畑を耕したり、大きな鳥さんを飼っていたりしてとってもすごかったんだ!」

「ソラが楽しめたのならなによりだぜ」

「うむ。世界はとても広いからのう」

 盗賊には出会ったけれど、他にもいっぱい楽しいことがあったし、ヘーリさんやエルフの里のみんなに出会えたし、この10日間の旅は本当に楽しかったなあ。

『ソラが楽しめたのならなによりだ』

『ええ。また新しい場所へ行くのもいいかもしれないわね』

「その際は私も同行させてください」

 この村での生活はとても楽しいけれど、3人と一緒に新しい場所へ行くのはとっても楽しかった。またそういう機会があったら楽しみかも。

「里の者が改めてソラくんにお礼を伝えたいそうなので、この村へぜひお邪魔させていただいと思っているのですが、問題ないでしょうか?」

「ええ、セリシア殿の里の者でありましたら歓迎させていただきますよ」

「ありがとうございます」

 そういえば長老さんとミリアルさんがそんなことを言っていた。お客さんがアゲク村に来てくれるのは楽しみだなあ。

 クロウとシロガネでも3日は掛かったから、エルフの里のみんなはその倍くらいはかかるのかもしれない。

「そして今回のお礼にと、里の者があちらで採れる作物や果物の種や苗をたくさん持たせてくれました。ソラくんの温泉の力があれば、この村でも育てることができると思いますよ」

「おお、それはありがたいのう」

「ああ。今まで以上にいろんなものが食べられるな」

 セリシアさんの言葉に嬉しそうにしている村長さんとグラルドさん。やっぱりおいしい食材が増えると嬉しいよね。僕もあのルミエオレンという果物のジュースがとっても甘くて忘れられない。この村でも食べられるといいなあ。

『そういえば、私たちが出発する時よりも畑がだいぶ広がっていたわね』

『うむ。それに大きな小屋も新しくできていたな』

「へへっ、俺たちもみんながいない間に遊んでいたわけじゃないですよ。今後のことも考えて、みんなで畑を拡張しておきました」

「小屋の方は家畜を飼うためのものです。こちらも皆様がいない間に村の者で建てて準備をしておきました」

「皆様に頼り切りになってしまうのも良くないですからな。儂らもできることはさせていただきます」

 僕たちがいない間に村のみんなも頑張っていたみたいだ。今日のうちにできることもいろいろありそうだけれど、その前にいつもみたいに温泉に入って身体を休めよう。