「おお~い、戻ったぞ」
「ただいま帰りました」
「うわあ~すっごいね!」
ミリアルさんとセリシアさんにエルフの里を案内してもらってから戻ってのんびりしていると、里の入り口の方から大きな魔物を魔法で浮かばせたエルフのみんなが帰ってきた。
『ほう、こいつは大物だな』
『ずいぶんといっぱい狩ってきたのね』
「ソラ殿やクロウ殿とシロガネ殿に感謝しているので、みな張り切ったようですな。今夜はご馳走ですよ」
聖天の樹が回復の兆しを見せたこともあって、みんな嬉しそうだ。
あんなにいっぱいの獲物を狩ってこられるなんて本当にすごいなあ。今日の晩ご飯がとっても楽しみだ。
「柔らかいのにすっごくジューシーでとってもおいしいね!」
『ほう、なかなか美味であるな』
『ええ、とってもおいしいわ。それにいろんな種類の料理があるわね』
今日の晩ご飯も昨日と一緒でエルフの里のみんなと一緒に食べている。
だけど昨日よりもいろんな種類の料理が並んでいた。さっきみんなが狩ってきた魔物がもう解体されて食卓にならんでいるみたいだ。お肉の種類だけでなくて、いろんな部位もあって、それぞれ味が全然違うけれど、どれもとってもおいしい。
「おおっ、こいつはうまい!」
「ふむ、香辛料を加えるだけでこれほど味が変わるのか。これは見事じゃ!」
そして昨日はいろいろとあって渡せなかったけれど、エルフの里のみんなにアゲク村で取れたコショウと砂糖のお土産を渡した。この里でもそれとは別の香辛料を使っていたみたいだけれど、こっちのコショウのほうが風味は強くて焼いたお肉には合いそうかな。
それにこっちの串焼きには砂糖を使った甘辛いタレが付いていて、とってもおいしかった。長老さんに聞いたら、魚醤といってお魚さんから作ったしょっぱい調味料と砂糖を合わせたタレらしい。
「これほどすばらしい香辛料をこんなにいただいてしまってもよろしかったのかな?」
「うん。すぐにアゲク村で育てることができるからね」
「おお、それはありがたいのう」
コショウや砂糖は万能温泉の力ですぐに成長して作れることが分かっている。こんなに喜んでくれるのなら、もっといっぱい持って来られればよかったなあ。
それに種や苗を持ってきていたら、もしかするとこのエルフの里でも育てられる可能性もあったかもしれない。もう一度この里に来ることができそうなら、種や苗も持ってこようかな。
「本当に皆様にはいくらお礼を伝えても足りませぬ。それで、この村はいかがでしたかな?」
「とっても快適だった! ご飯もすごくおいしかったし、綺麗で広くて畑や牧場もあって、本当に楽しかったよ!」
『うむ。結界のおかげで面倒な輩も入って来られないのはありがたいな』
『そうね。安心して過ごすことができるのは助かるわね』
僕と同じでクロウとシロガネもこのエルフの里が気に入ったみたいだ。
「それはなによりです。……もし皆様がよろしければ、この里で暮らしませぬか?」
「えっ!?」
長老さんがいきなりそんな提案をしてきた。
「皆様が元いた村のこともあるので無理にとは言いません。聖獣であるクロウ殿とシロガネ殿は良からぬ輩から狙われることもあるかと思います。そしてなによりソラ殿が最も狙われるかもしれません。この里であればそういった者が入ってくることはなく、平和に暮らせるでしょう。もちろんお好きな時に出て行ってもらって構いませんので」
確かに長老さんに言われた通り、僕たちにとっては他の人が入れないこの里の方が暮らしやすいかもしれない。
『ふむ、それも選択肢としてはありか』
『そうね、少なくとも安全に暮らせるかもしれないわ』
「………………」
そうか、全然考えていなかったけれど、クロウとシロガネにとってはこの里で生活をした方が安全に楽しく暮らせるのかもしれない。
『我らのことを考える必要はない。我とシロガネがいる以上、ソラに迫る危険はすべて排除するつもりだからな』
『その通りよ。優しいソラのことだから、私たちのことを考えているのかもしれないけれど、それは気にしなくていいわ』
僕の考えは2人に見透かされているみたいだ。
「……やっぱり僕はアゲク村にいたいかな。もちろんこの里が嫌な訳じゃないよ。長老さんやミリアルさんもとっても優しくしてくれるし、本当に良い場所だからね。だけど僕がこんな力を持っていることを全然知らないのに僕たちを受け入れてくれて、自分たちも食べる物があんまりないのにそれを分け与えてくれたアゲク村の人たちにはすっごく感謝しているんだ。クロウとシロガネにはいっぱい迷惑をかけちゃうかもしれないけれど、もっと村のみんなと過ごしたい」
『我らのことを気にする必要はない。ソラの隣にいられれば我はそれで満足だ』
『ふふっ、そうね』
「今はまだ村の周りの柵ができたばかりだけれど、みんなで畑を耕したり作物を収穫するのはとっても楽しいんだよ。それにいろんな作物が収穫できるようになったから、おいしいご飯も食べられるようになったんだ。僕たちの大きなおうちも一緒に建てたんだよ。みんなも遊びに来てほしいなあ」
「うむ、承知しましたぞ。皆様が暮らす村にぜひともお邪魔したくなりましたな。何人かでお邪魔させていただきたいと思います。もちろん皆様もいつでもこの里までいらしてください」
「ああ、歓迎するぜ!」
「いつでも来てくださいね!」
「うん!」
エルフの里のみんなは僕が断ったことを気にする様子もなく、アゲク村にも来てくれるみたいだ。
クロウとシロガネのおかげでアゲク村からここまではそんなに時間はかからないし、またエルフの里にお邪魔させてもらおう!


