セリシアさんとクロウは村の残りの壁を作っているけれど、僕にはあっちの手伝いは何もできないからシロガネと一緒に村の畑の方へ行く。

 するとそこにはアリオさんたちがいた。

「おう、ソラ。早速昨日の夜に植えた作物が育ってきたぜ。例のサヴィードの種もバッチリ芽が出てきているぞ」

「本当! 良かったあ!」

 昨日の夕方に街へ帰ってきたばかりだったけれど、村で育てていた作物に万能温泉のお湯をかけておいた。それに加えて、まだ空いていた畑に街で購入してきた作物の苗や種の一部も植えてある。夜に僕たちが寝ている間もぐんぐんと成長しているからね。

 アリオさんに教えてもらってみてみると、確かに昨日植えたばかりの苗はもう結構伸びていて、発芽するかわからなかったサヴィードの種からも緑色の芽が土の中から顔を出していた。

 万能温泉のお湯をかけると、気候や土質みたいな条件なんて関係なく植えた作物は成長するらしい。

『やっぱりソラの温泉はすごい効果ね……この場所に適さない植物でも成長するなんてすごいわ』

「ああ。元々の土質はむしろ他の場所よりも良くねえからな。本当にソラのおかげだぜ!」

「えへへ~」

 シロガネとアリオさんに褒められてとても嬉しい。

 僕がみんなの役に立つことができていると実感できる。

『ただ今の畑だと場所が全然足らなそうね』

「ええ。作物が急激に成長してくれているから様々な野菜を順番に育てているけれど、それでも街でたくさんの新しい苗や種を買ってきたからまだまだ場所が足りませんね。今は村の壁を優先して作っているから、それが終われば村の者全員で畑を拡張していく予定です」

『そうね。畑を広げ終わったら、柵を立てて魔物の酪農と牧畜をおこなっていきたいわ。定期的に卵や乳を得られると助かるわね』

「うちの村でそんなことができるようになるなんてなあ~今から楽しみだぜ!」

「うん、とっても楽しみだね!」

 前にも話していたけれど、作物がたくさん採れるようになったら魔物のエサをいっぱい育てられて、この村の中で魔物を飼うことができる。今みんなが作っている村の壁は新しく作る予定の畑や魔物を飼う柵のことも考えて広く作ってある。

 魔物を飼うことができれば、この村の中で魔物を育てて牛乳みたいな魔物の乳や卵を得ることができるらしい。それに魔物のお肉が手に入るようになれば、危険な狩りへ行く機会も減るんだって。まだまだ先の話だけれど、とっても楽しみだ!

 その後は僕もみんなと一緒に畑の作業を手伝った。まだ身体が小さくて力がない僕でも作物にジョウロで万能温泉のお湯をかけたり、低い場所に生えている野菜なんかの収穫を手伝うことはできる。

 シロガネも魔法を使って収穫のお手伝いをしてくれるからとっても早い。こうやって村のためにみんなで働くのはすごくいいことだよね!



「よし、ついに完成だ!」

「すげえ、もう完成しちまったぜ!」

 お昼過ぎになって、朝から村のみんなで作っていた村の壁が完成した。村の周囲を取り囲む立派で大きな丸太の壁が出来あがる。

 この壁があれば、魔物や盗賊たちが来てもそう簡単には村の中に入ってくることはできない。

「これもセリシア殿のおかげじゃ。本当にありがとうございます」

「こちらこそ、昨日の夜から食事をご馳走いただいてありがとうございます。とってもおいしかったですよ」

 村長さんがセリシアさんにお礼を伝える。身体能力強化魔法を使ったセリシアさんの力は本当にすごくて、太くて大きな丸太を軽々と持ちあげていた。

 前にクロウとシロガネに僕も魔法を使えないか聞いてみたんだけれど、魔法を使うには魔力というものが必要で、それを持っているかはその人次第らしく、魔力を持っていない僕には魔法を使うことができないらしい。

 魔法を使えるセリシアさんが羨ましいなあ。おっといけない、万能温泉なんてすごい能力を貰った僕がそんなことを言ったら罰が当たっちゃうよね!

『うむ、これでソラ……や村の者が安全に過ごせるようになるであろう』

『そうね、これでみんな夜も多少は安心できそうね。セリシアのおかげでだいぶ早く進んだわ。ありがとうね』

「もっ、勿体ないお言葉です!」

 シロガネにお礼を言われてセリシアさんはとっても嬉しそうだ。