「うわあ~大きな建物だね!」
「この街に冒険者は多く住んでおるからのう。この辺りでは一番大きな建物かもしれぬわい」
街の中を歩いて、冒険者ギルドへと移動する。
冒険者ギルドはとても大きな建物で、3階建てになっている。アゲク村では2階建ての建物自体なかったからすごく驚いた。
冒険者ギルドでは冒険者以外でも素材の買い取りを行っているらしい。ただ、冒険者以外だと少しだけ買い取り金額が安くなるみたいだ。でも冒険者の登録をすると定期的に依頼を受けなくちゃいけないみたいだから、そのためにわざわざ登録をすることはできないらしい。
「それじゃあ行ってくるぜ。悪いが少しだけ待っていてくれ」
「うん、わかった」
冒険者ギルドの中へはアリオさんと村長さんが入る。
本音を言うと僕もものすごく入ってみたかったけれど、クロウとシロガネと一緒に冒険者ギルドへ入るわけにはいかない。冒険者さんの中にはすごい力を持った人もいるらしくて、2人が聖獣であることがバレてしまうかもしれないらしい。
2人が聖獣とバレてしまうと、村に変な人たちがやってくるかもしれないからね。かといって2人だけで冒険者ギルドの外に待っていてもらうのは僕が嫌だ。また街に来る機会はあるだろうし、その時でいいや。
しばらくすると2人が冒険者ギルドから出てきた。どうやら特に問題は起きずに無事にクリムゾンベアの素材を換金することができたみたいだ。
「お待たせしました。いやあ、クリムゾンベアの素材はかなりの高値で売れましたよ」
「まさか素材の一部だけで金貨100枚を超えるとはな……」
「ええっ、すごい!」
この付近で使われている通貨には白金貨、金貨、銀貨、銅貨の4種類があると聞いている。元の世界の物価に合わせると、白金貨が100万円、金貨が1万円、銀貨が1000円、銅貨が100円くらいになるらしい。
金貨が100枚ということは100万円だ! お菓子が山のように買えちゃうよ!
『ふむ、足元を見られているということはないのであるな?』
クロウが小声で村長さんに聞く。
「はい。冒険者ギルドでは買い取り金額が一定に定められており、今回のように高額な金額になる場合にはギルド職員が複数人で鑑定するため、別の場所で買い取ってもらうよりも安全です。他の者に尾行されていないかも確認しております」
『それなら大丈夫そうかしら。人族は考えないといけないことが多くて大変ね』
なるほど、この異世界だと悪いことを考える人はいっぱいいるから、騙されたりお金を盗られないようにそういうことも考えなくちゃいけないんだ。
「弱りきっていたクリムゾンベアを森で発見したと伝えたら冒険者ギルドの職員さんもなんとか納得してくれた。クロウ様と戦った時に魔法による攻撃で毛皮なんかがボロボロになっていて、その話の信憑性もあったからな」
クリムゾンベアの毛皮はクロウの爪や雷魔法の攻撃でだいぶボロボロになっていたから、森で他の魔物と戦った時の傷と思ってくれたらしい。ちゃんとそういう理由も用意しないといけないのは大変だ。
『問題なさそうで何よりだ。これでいろいろな物が買えるのであろう?』
「はい! これだけのお金があれば、様々な物が購入できます!」
「こんな大金を持つのは初めてだぜ……」
これで村に必要な物がいろいろと購入できる。僕も街の市場へ行くのは楽しみだ。
「ソラの服はこんなものでいいか?」
「うん、もう大丈夫だよ。早く次に行こう!」
僕はこの異世界へ来た時に着ていた服と村にあった古着で大丈夫って言ったんだけれど、新品の服も持っておいたほうがいいとクロウとシロガネに言われて、2セットほど新品の服を購入してくれた。
とっても嬉しいんだけれど、僕にとっては服よりも作物や村で役に立つものの方に興味がある。
次は村長さんたちがいつも作物の苗を購入しているお店へ移動した。
「うわあ~いっぱいある!」
そのお店は農家さん向けのお店で、いろんな作物の種や苗、それに実際に成長した作物がたくさん並んでいた。
「ソラは変わっているぜ。普通の子供ならこういった店よりもさっきみたいな服屋やおもちゃなんかが置いてある店に行った方が喜ぶ者なんだけれどな……」
「畑を耕したり、作物を収穫するのもとっても楽しいよ!」
元の世界ではあんまり身体を動かすことができなかったこともあって、身体を思いっきり動かす畑作業なんかはとても楽しい。僕にはこっちの方が合っているみたいだ。
「まずは小麦じゃな。それといろいろな作物の種や苗を購入しておこう」
「うん!」
「ワォン」
「ピィ」
村で育てるためのいろいろな作物の種や苗を購入していく。
「おっ、こいつは珍しい。村長、ソラ、こいつも買ってみないか?」
「これはなんの苗なの?」
アリオさんが持ってきた苗は普通に葉っぱが生えているだけで、なんの苗か僕にはわからない。


