「はあ~気持ちいい~」
『毎日この温泉に入ることができて幸せね』
『うむ。一日の終わりにこうして身体を休めることができるのは最高であるな』
晩ご飯を食べて、いつものように温泉へ入る。
今日はシロガネも一緒だ。シロガネはローナちゃんと一緒に入ることもあれば、僕やクロウと一緒に温泉へ入ることもある。
「クロウ様やソラ様のおかげでおいしい飯をお腹いっぱい食べることができるし、シロガネ様のおかげで村の壁が強化されております。本当になんとお礼を言えばいいやら……」
「ううん。僕たちの方こそ、この村に住まわせてくれて、本当にありがとう!」
毎日おいしいご飯を食べることができて、村のみんなと一緒に畑を手伝って、温泉で疲れを癒してからぐっすりと眠る。本当にこの村に来てからすごく幸せな毎日を過ごすことができている。
むしろ僕の方が村長さんたちにお礼を言いたいくらいだ。
『少しずつではあるが、より快適に生活ができるようになってきたようだな』
『ええ。村の周囲の壁も形になってきたわね。それに村の周囲に作る予定の罠も面白かったわ。私たちでは作れないああいった仕組みを考えられるのはすごいわよね』
『うむ、こればかりは素直に褒めるしかないな』
「シロガネ様とクロウ様にそう言っていただき、とても光栄です!」
今日はドワーフのグラルドさんも一緒に温泉へ入っている。白い立派な髭を生やしたグラルドさんが温泉に入っていると、なんだかとても画になるなあ。
『あとはもう少し美味なる肉があればより快適なのだがな』
「えっ、クロウが狩ってきてくれたお肉はとってもおいしかったよ」
前にクロウが狩ってきてくれたワイルドボアとワイルドディアという大きいイノシシとシカの魔物のお肉はとってもおいしかった。元の世界では牛さんや豚さんや鳥さんしか食べたことがなかったけれど、どっちも同じくらいおいしい。
『森にはそれ以上においしい魔物もいっぱいいるのよ』
「で、ですがあれ以上の肉となると、その魔物の強さは……いえ、愚問でしたな」
村長さんが何かを言おうとしたところで首を振った。もしかすると強い魔物ほどおいしかったりするのかな?
『あとは街に行って必要な物を揃えたいところだな。畑を広げている最中であるし、他の作物などの苗を集めても良いかもしれん』
『そうね。せっかくソラのおかげで作物の収穫が早くなったことだし、いろんな種類の作物を育ててもいいわね。少なくともパンを焼くために麦は欲しいわ。収穫をさらに早めるために畑を耕す道具を購入するのもいいわね』
「パンかあ~」
このアゲク村では6種類くらいの作物を育てているけれど、麦や米なんかは育てていないみたいだ。
麦があるとパンが焼けたり麺なんかができるんだよね。シロガネに言われてみると、焼き立てのパンが食べたくなってきた。
村でのこれまでの生活でも十分快適だったけれど、どうやらまだまだ快適になるらしい。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『それでは行ってくる』
「うん、気を付けてね!」
昨日と同じように午前中はシロガネが北の森へ行って村の周囲に作っている壁の材料になる木材を持ってきてくれた。そのあとは交代をしてクロウが南の森の様子を見に行きつつ、獲物を狩ってきてくれる。
シロガネと一緒に村の入り口でクロウを見送った。
「やっぱり毎日温泉のお湯をかけ続けると成長が早いね!」
『ええ。味もおいしくなるし、本当にソラの温泉はすごいわね』
「シロガネちゃん、大きいのが採れたよ!」
『あら、本当ね。おいしそうだわ』
午後はシロガネやみんなと一緒に畑を手伝っている。
ローナちゃんも僕もあんまり力がないから、野菜を収穫する作業を手伝うことが多い。畑を耕すのは村の男の人たちがやって、温泉のお湯をかけたり作物を収穫するのは僕たち子供と女の人が多い。
『このままのスピードで成長すると、食べる量よりも収穫できる作物の方が多くなってしまいそうね』
「ソラくんのおかげで村のみんなが毎日お腹いっぱい食べられて本当に幸せだわ。ありがとうね、ソラくん」
「ソラお兄ちゃん、ありがとう!」
「うん!」
エマさんとローナちゃんからお礼を言われた。僕もみんなが喜んでくれてとても嬉しい。
『壁が完成したら、牧畜や酪農なんかを初めてもいいわね』
「ぼくちく? らくのう?」
『この村の中で牛や羊や魔物なんかを育てるのよ。うまくいけば卵や牛の乳なんかも毎日手に入るようになるし、お肉も森へ狩りに行く必要がなくなるわ。ソラの温泉のおかげでエサには困らないからね』
「うわあ、すごいね!」
「ええ、とても素晴らしいわね!」
元の世界であった牧場みたいな感じかな。なるほど、牛さんたちが食べる野菜とかも万能温泉の力で増やせるのなら、エサの心配はしなくてすむもんね。さすがシロガネだ!
村の周囲に壁ができて安全になれば、他の魔物も村の中に入って来られないからね。
「大変だ! クロウ様が!」
「えっ!?」
みんなで畑の収穫をしていると、村の入り口で見張りをしていた村の人が大きな声を上げた。


