「……なるほど、明日も確認してみないとわからないけれど、クロウとシロガネの言う通りかもね」

 そのあと僕の万能温泉をいろいろと検証してみた。明日になってみないとわからないけれど、僕の万能温泉の効果は温泉から離れると1日しか効力は持たないみたいだ。

 温泉は村の端っこにずっと設置しているままだけれど、温泉自体はずっと冷めることもなく温かいままで、浄化の能力もそのまま残っている。

 だけど、一度お湯を温泉から出すと普通に冷めてしまう。浄化や植物を成長させる効力は残っているけれど、その効果は1日経つと消えてしまうというのが、僕たちの出した結論だった。といっても、ほとんどはクロウとシロガネが確認してくれたんだけれどね。

『むしろ温泉から離れても1日中効果があることに驚いたものだ。温泉から離れた場所でも、お湯をかければ回復するとはな』

『傷を治すためのポーションとは比較にならないくらいの治癒力だからすごいわね』

 クロウがこの村から離れた場所へ行って自分で指を少し切って温泉のお湯をかけたところ、その傷はすぐに治ったらしい。この世界にはポーションという怪我を治す道具があるみたいだけれど、それよりもすごい効果があるらしい。

 村のみんなが狩りへ行く時に持っていってもらえると何かあった時にすごく安心できるね。

『『………………』』

「あれ、どうかしたの?」

 なぜかクロウとシロガネが黙ってしまった。なにかこの万能温泉に変なことがあったのかな?

『いや、何でもないぞ』

『ええ、大丈夫よ』

 よかった、特に何か問題があったりするわけじゃないみたいだ。

「今の温泉だと使えそうな効果はこれくらいかな。あとは作物の方も1日で効果がなくなるのか確認してみたいね」

「今日はもう朝から温泉の湯をかけちまったからな。明日改めて確認させてくれ」

「うん」

「ソラやクロウ様のおかげで畑の作物がたくさん収穫できるからな。肉も十分なほどいただいているし、本当にありがてえぜ!」

 今日はみんな張り切って、朝から作物に温泉のお湯をかけてしまっていた。クロウが狩りをしてくれているから、村の人はみんな手が空いている。その間にみんなで畑をいっぱい広げるという話になって、今は畑を拡張しているところだ。

「それに儂も最近痛かった腰がだいぶ良くなってきたわい。儂と同じようにずっと寝たきりになっていた者の何人かも、起き上がれるようになって作業ができるようになったからのう」

「本当! よかったね!」

 どうやらこの温泉は怪我を治すだけじゃなくて、腰の痛さとかを和らげてくれるみたいだ。

 うん、温泉に入ったみんなが元気になってくれて本当によかった。



「はあ~しかしこの温泉ってやつは最高だぜ!」

「ああ。疲れも取れるし、気持ちが良いし、これに毎日入れるなんて幸せ過ぎるな!」

 晩ご飯を食べて、1日の最後は必ずこの温泉に入って汗を流す。村のみんなが言っているみたいに、毎日温泉に入れるって本当に幸せなことだよね。

「ソラたちが出ていくのは寂しいぜ。本当にいつでも戻って来てくれよ。なんなら、森のことが解決しなけりゃいいなんて思っちまうぜ」

「ありがとう、アリオさん。もし街の生活が合わないなら、お世話になります」

「ああ、たとえ他の場所に行ったとしても、いつでもこの村に来てくれていいんだからな。それにソラは俺たちの命の恩人だし、いつでも歓迎するぜ!」

「うん!」

 作っていた干し肉の乾燥も終わって、街へ入るためのお金ももらった。あとは森のことが解決したら、前にクロウとシロガネと話していたとおり、街へ向かってみることはすでにみんなに話してある。

 村長さんやアリオさんはいつでも村に戻ってきてくれていいと言ってくれた。この村では僕たちを快く受け入れてくれたし、本当に居心地の良い村だった。僕としてはこのままアゲク村でお世話になってもいいと思っている。

 でも一度大きな街を見た方がいいというクロウとシロガネの言っていることもその通りだと思うし、まずは一度街を見てから考えようかな。



『ソラ、少し話がある』

「う、うん」

 温泉であったまってから、僕たちが借りているおうちに戻って寝る準備をしていると、クロウとシロガネが真剣な表情で僕になにか話があるみたいだ。

『この前はこの村じゃなくて、もっと大きな街へ行くことを勧めていたけれど、やっぱりこの村に滞在する方が良いかもしれないわね』

『うむ。シロガネとも相談したのだが、我もそれが良いと思う』

「うん、僕もそれでいいと思うけれど、どうして意見が変わったの?」

 前にこの村は辺境の村だから止めておいた方がいいっていっていたのに。

『ソラの万能温泉という能力がとても強すぎるからよ』

「えっ、僕の!?」