「それではソラくんの来訪を祝って乾杯!」
「「「乾杯!」」」
真ん中に大きな焚き火を燃やして、その周囲を村のみんなで囲んで晩ご飯になった。
「うわっ、おいしい!」
「ワォン」
「ピュイ」
僕たちの目の前にはこんがりと焼かれたお肉と野菜が並べられている。そしてそれにはほんのりと塩味がついていた。
昨日食べた焼いたお肉もとてもおいしかったけれど、やっぱり少しでも塩味があると全然違う。それにお野菜はとってもおいしかったし、元の世界のご飯と比べても十分過ぎるほどおいしかった。
僕は病院食が多かったし、もしかするとそれも関係があるかもしれない。病院食は栄養もあって消化がしやすいけれど、おいしさを一番に考えられてはいないからね。
「たいしたものがなくてすまんのう。それにあれほどの肉をもらって感謝するわい」
「ううん、すっごくおいしいよ! 僕たちだけだとあんなに食べられないからね」
「悪いな、ソラ。半分は干し肉と燻製にしてやっからな」
「うん、ありがとうアリオさん」
クロウとシロガネと相談をして、替えの服やお塩をもらう代わりにここまで持ってきたお肉を村の人たちへ渡すことにした。シロガネの氷魔法でお肉を冷やしているとはいえ、生の状態だとほとんどもたない。
それならお礼に村の人たちへと思って渡したら、渡したお肉の半分を干し肉や燻製肉にしてくれるらしい。お塩も使ってくれるし、これじゃああんまりお礼にはならないみたいだ。
「こんな辺境の村によく来てくれたのう」
「まだこんなに小さいのにここまで一人で旅をしているなんて偉いわ」
「ありがとう」
村の人たちは僕にとても優しく接してくれた。クロウとシロガネが言うには世界には悪い人もいっぱいいるみたいだけれど、この村の人たちはみんな良い人みたいだ。
「お兄ちゃん、犬さんと鳥さんに触ってもいい?」
ご飯を食べ終わると、僕よりも小さい幼稚園くらいの髪の毛を三つ編みにした女の子が母親と手を繋いでやってきた。
「おお~相変わらずローナは可愛いな! ソラ、俺の娘のローナと妻のエマだ。もし大丈夫そうだったら、娘にクロウとシロガネをちょっとだけ触らせてやってくれないか?」
「クロウ、シロガネ、触っても大丈夫かな?」
「ワォン」
「ピュイ」
「大丈夫そうだよ」
僕の問いに2人が頷く。どうやら2人とも僕以外の人に触れられても大丈夫みたいだ。
「ほう、まるでソラの言葉がわかっているみたいだ。まあ、そんなわけはねえか。それじゃあローナ、噛みつかなそうなこっちの大きな鳥さんから触らせてもらえ」
「うん!」
ローナちゃんがまずはシロガネの方へゆっくりと手を伸ばす。
「うわあ~柔らかくて気持ちいい! それにとっても可愛いね!」
「ピュイ!」
ローナちゃんはシロガネのもふもふなお腹を撫でたあと、ゆっくりとシロガネを抱き上げる。ちゃんと優しく抱いて撫でてくれているから、シロガネも気持ちよさそうにしている。
「随分と人懐っこい魔物だな。それにシロガネもクロウもこの辺りじゃ見かけねえ魔物だ。まあ、これだけおとなしいなら、自分から人を襲うことはなさそうだな」
「そうなんだ」
2人は聖獣と言っていたし、やっぱり魔物よりも数が少ないのかな。そういえば聖獣って普通の人から見たらどう思うんだろう?
「クォン!」
「ワンちゃんは真っ黒でとっても格好いいね! それにこの子もすっごく柔らかい!」
続けてクロウに抱き着くローナちゃん。クロウの方も頭を撫でられて少し嬉しそうだ。
「ローナちゃん、名前はクロウで男の子だよ。シロガネは女の子なんだ」
「うん! ローナです! クロウくん、シロガネちゃん、よろしくね!」
「ワォン」
「ピュイ」
「ははっ、なんとも微笑ましいな。ソラ、うちの娘がクロウとシロガネに懐いたみたいだし、今日はうちへ泊まるといい。一応空いている家はあるが、一緒にいるやつは多いほどいいだろ」
「ええ、遠慮はいらないわよ」
「えっと……うん、お世話になります!」
「やったあ、ソラお兄ちゃんも一緒だ!」
アリオさんとエマさんがそう言ってくれているし、クロウとシロガネの方を見たら頷いてくれた。せっかくアリオさんとエマさんが誘ってくれているし、ありがたくお願いすることにした。
ローナちゃんも可愛らしい笑顔でとても嬉しそうだ。僕は一人っ子だったけれど、もしかすると妹がいたらこんな感じだったのかなあ。
その後はローナちゃんに続いて他の村の子供たちもクロウとシロガネを触ったり抱きしめたりしていた。どうやらみんな興味があったけれど、なかなか言い出せなかったようだ。
そのままアリオさんのおうちでお世話になって、僕はクロウとシロガネに挟まれ、ローナちゃんはシロガネの隣で横になった。初めて来た村だけれど、みんなとても優しくて屋根のあるおうちで寝られることと、クロウとシロガネの間にいて安心してぐっすりと眠ることができた。


