「やっぱりケンタが作ってくれた料理の方がおいしい」

「キュウ……」

 あれから別の屋台を回って、肉の煮込み料理と野菜のスープ料理を食べたのだが、リリスもハリーもちょっと微妙そうな表情を浮かべている。

 確かに肉や野菜の素材自体の味は悪くないのだが、味付けが塩のみの単調な料理が多かった。

「もう少し調味料や香辛料を使ったら味の印象も変わると思うんだけれどね。それにあんまり本格的な調理をするお店もなかったみたいだ」

 料理を出す屋台の数自体は多かったけれど、基本的に焼いたり煮込んだりするだけでシンプルな調理法や味が多そうだった。

「たぶんケンタの世界ほど調味料や香辛料が浸透していない。ケンタが作ってくれる料理はどれも複雑な味がしておいしかった」

「なるほど」

 そういえばこっちの世界でもいろんな調味料や香辛料が使われ始めるようになったのは歴史的にいうと結構あとの時代だったかな。

 リリスが気に入ってくれた唐揚げもタレに漬けているし、他の購入してきたお惣菜やカップラーメンにあれだけ驚くわけがようやくわかった。確かにこの単調な味に慣れてしまうとこっちの世界の料理は新鮮に感じるだろう。

 でも肉と野菜の味はおいしいから、食材の味をしっかりと味わえるシンプルな塩味は俺にとってはいいかもしれない。特にスープに入っていた野菜はこちらの世界では見たことのない野菜も入っていたから十分に楽しめた。



「おお~さっきの屋台街とは違って、こっちの通りもすごいな」

「キュキュウ~」

 屋台街を抜けてやってきた通りにはたくさんのお店が並んでいた。

「こっちは商店が並んでいる。他には個人で不要な物を販売する市もあって、たまに掘り出し物なんかがあったりする」

 なるほど、こちらの世界の商店街のようなものだな。そしてフリーマーケットみたいな場所もあるみたいだ。

 とはいえ、まだこの世界の物価がわかっていないのに掘り出し物も何もない。今日は商店の方を見て回るとしよう。

「へえ~すごくいろんな物が売っているんだね!」

「キュウ!」

 この通りの商店には肉や野菜などの食材、お酒、魔物の素材、雑貨など様々な商店が並んでいた。先ほどの屋台街とは異なり、いろんな種類の商店が並んでいてとても楽しい。

 特に素材のお店はすごいな。牙や骨に毛皮といった魔物の素材がずらりと広げられていた。毛皮とかはいろいろと使うと思うけれど、牙とか骨とかは何に使うんだろうな。やっぱりあれで武器とか作ったりするのだろうか?

「リリス、食材の店を見ていい?」

「もちろん。自由に買っていい」

 食材の商店では今までに見たことのない野菜や干した肉に野菜。生肉なんかは別の場所に保管してあり、包みに入れて販売しているようだな。

 もちろん購入した食材で作った料理はリリスやハリーにも食べてもらうつもりだ。とはいえ金貨10枚以上するような高額な食材も多い。大きな肉をブロックごと販売もしているみたいで、高いのか安いのかわからないな。

 この街にも来られることがわかったことだし、まずはそこまで高価でない食材を買っていろいろと試してみるとしよう。それに肉は解体したクラウドワイバーンの肉が手に入る予定だからな。

「いらっしゃい」

「すみません、初めての食材が多いので、いろいろと教えてください」

「あいよ、任せておきな」

 40代の店主の人に商品の説明を聞く。野菜はどの部分が食べられるのかや焼くか煮るかを聞くだけでもいろいろと参考になる。ベリスタ村や元の世界で見たことのない野菜が多いので、いろいろと試してみるか。



「リリス、たくさん買ってもらってありがとう」

「キュウ!」

 そのあともいくつかの店を回っていろんな食材をゲットした。購入した食材はリリスの収納魔法に入れてある。結構な量を購入したのに手ぶらで歩けるなんて、収納魔法は相変わらず便利である。

「ケンタからはいつもいっぱいもらっているから気にしなくていい。もっといろいろ買っても良かったのに」

「ありがとう。でも最初はこれくらいで十分かな」

 確かにそこまで高価な食材は購入していないけれど、そのぶんいろんな種類の野菜は購入した。気に入った野菜があればまたこの街に来た時購入させてもらおう。

「ここは魔道具のお店か。ここも見ていいかな?」

「もちろん」

「リリスが魔道具を作れるのは知っているけれど、どんな魔道具があるのかと値段を確認しておきたいんだよね」

 この前見せてもらった火を出す魔道具や野営をした時に使った結界の魔道具なんかがお店に売っているのか、売っていたらいくらするのか少し気になるところだ。