「まずは冒険者ギルドへ行く」

「なるほど、昨日倒したクラウドワイバーンを買い取ってもらうんだな」

「キュ」

 昨日リリスがあっさりと倒してくれたクラウドワイバーンは収納魔法にしまってある。かなり珍しいようだし、結構な金額で買い取ってもらえるんじゃないかな?

「不要な素材は買い取ってもらうけれど、食べられる部分は全部もらうからいろいろと作って」

「……了解だよ」

 お金というよりかは解体して肉を食べるためだった。

 確かに俺もあの恐ろしかったワイバーンがどんな味をするのか気になってしまう。正直な話、クマや鳥の味は多少想像がついたけれど、あの大きなワイバーンはどんな味なのだろう?

 ……でも冒険者ギルドかあ。イメージ的には街の腕自慢の屈強な男が集まっているイメージだ。リリスみたいな冒険者ばかりだったらいいんだけれど。



「ここがこの街の冒険者ギルド」

「だいぶ大きな建物だね」

「キュウ」

 街の中を歩いて、この街で見てきた中でも一際大きな建物の前へやってきた。

 街を歩いている間はずっときょろきょろしていたから、おのぼりさんと思われていたのかもしれない。先に俺の服装をなんとかした方が良いかなと思ったけれど、この街は本当にいろんな種類の服装をした人がいて、それほど目立ってなさそうだったから、そのままここへやってきた。

 解体作業は時間がかかるらしいから、最初に頼んでおいた方が良いらしい。

 カランッ、カランッ。

 リリスが先頭になって冒険者ギルドの木製のドアを開くと、ドアの上に設置されていた鐘が鳴る。

 一瞬注目されるのかとも思ったけれど、中は人が多く喧騒に包まれていたため、誰も気にしていない様子だった。

 冒険者ギルドの中には厳つい装備をした冒険者たちがいる。ただ、ガチムチの男たちだけというわけではなく、女性冒険者やスラリとした線の細い男性冒険者もいた。

 ……さすがにリリスみたいな少女の姿をした冒険者はいなかったけれど。

「冒険者ギルドへようこそ。ご依頼の発注ですか?」

 特に誰かに絡まれるようなことはなく、カウンターの女性にリリスが話しかける。リリスと俺の外見から依頼を発注した側に見られているようだ。

「魔物の解体と買い取りをお願いしたい」

「承知しました。小さなものでしたら、こちらでそのまま受け付けますが」

「ここだと到底入りきらない。10メートル近くあるから収納魔法を使って収納している」

「しゅ、収納魔法ですか! かしこまりました、こちらの冒険者ギルドの横に併設されております解体場までご案内します」

 やはりリリスが使用した収納魔法という魔法はかなり珍しい魔法らしい。まあ、あんな便利ですごい魔法が普通の人に使えたるわけはないよな。

 そのまま冒険者ギルドの横にある大きな屋根のある建物へと移動した。

「おお~ここも迫力があってすごいね!」

「大きな魔物を一人で解体するのはとても大変ですからね。血抜きだけ済ませて、残りはこちらに任せる方も多くいらっしゃいます」

 ギルド職員さんに案内されて隣までやってきたが、体育館のような広い場所で複数人がイノシシやシカみたいな大きな魔物をこれまた大きな刃物でズバズバと解体していく。

 これはこれでなかなか見ごたえがある。……ただやはりというべきか、血の匂いが結構きついな。一応その辺りも考えてか、大きな窓を全開にしているが、それでもけっこうな匂いである。

「大物の解体をお願いします。収納魔法に入れてあるようです」

「ほう、そりゃすげえな。そこに出してくれ」

 職員さんに案内されて解体場の一番奥へやってきた。

 そこには上半身裸のガチムチなおっちゃんがノコギリを持っていた。この人が解体をしてくれるのか。地面にはシートが敷かれているから、この上に出せということだろう。

「わかった」

 そう言いながらリリスは黒い渦に手を突っ込み、そこから大きなクラウドワイバーンの死骸を取り出す。毎回思うが、この収納魔法という魔法はどういう仕組みなのだろうな……。

「ほ、本当に収納魔法……」

「こ、こいつは驚いた……。クラウドワイバーンじゃねえか。収納魔法も使えるようだし、お嬢ちゃんはいったい何者だ……?」

 職員さんとおっちゃんが目を丸くして驚いている。

 俺も改めて見ると驚いた。ここにあるイノシシやシカ型の魔物よりも遥かに大きい。よくこんな大きな魔物を瞬殺できたものだよ。

「ギルドカードがございましたら、割増で買い取りが可能となりますが……」

「はい」

 リリスがギルドカードを職員さんに見せる。魔物の解体や買い取りなどは一般の人も頼めるらしいのだが、冒険者として登録していると高く買い取ってくれるらしい。

 他にもギルドカードは身分証明書にもなるし冒険者ならではの特典がいくつかあるようだ。ただし、冒険者になるためには試験を受けなければならない。俺には縁のない話だな。

「えっ、Aランク……し、失礼いたしました!」

「まさかこんなお嬢ちゃんがAランクとはな……」

 衛兵さんたちと一緒で、リリスがAランク冒険者であることに驚いている。やはりAランク冒険者はそれほどすごいことなのだろう。