「こんな感じで、いいっすかね」
「良いと思います」
「そ、そっかっ、良かったっ。はははは」
ぎこちない会話を角俣としつつ、作業をする。あの話しをして5日目。合同二学年役員では射的と輪投げをする事になった。今は、使っていない準備室で、長机を端に寄せ、射的用の三段の台を製作中である。ただ、今それを製作しているメンバーが3人であり、定時制は自分しかでていない。しかも5日間で作業日が3日もあったのだが、どの日も定時生徒自分一人なのだ。二人は学校に来ていても用事がるとかで来ず。
(ったく本当にあるのかよ用事!!)
そう問いつめたくもなるが、最初の顔合わせが兎に角最悪だったので、行きたくないのも理解出きる。
(だいたい、今回あの二人は自分と仲が良いからって役員させられてる節あるし尚の事強くは言いにくいんだよな)
自分とて本音をいえば、今だって来たくはないが、長になってる手前そういうわけにもいかず、授業前に仕事を早上がりさせてもらい参加している状況だ。ただ、その空気は理解した上でも、角俣と住川は来て作業をしているのだから、ある意味大人なのかもしれない。
(ただ、やっぱりやりにくいーー ったく千納時いればちったーー 違うのに)
彼は、3学年長イコール生徒会長の補佐でてんてこまえのようなのだ。学年長は2、3年する形式であり、必然的に彼が来年の3年の学年長であり、生徒会長となる。そんな背景から引継諸々踏まえて、3年の方にも手伝いに行かなくてはいけないらしい。なので、一回は顔を出すも、後はこちらに任せて退席してしまう。忙しい事が理解出きるので引き止める事は出来ない。ただ、千納時がいるだけで、二人も断然やりやすくなるだろうし、自分も気持ちの持ちようが違う。流石に何かと関わってきたせいもあるかもしれないが、彼とならこんなに気を使う事なく話せ、笑える。
(まあ、時たま突拍子もない事するせいか、鼓動がヤバい事になるけど)
そんな事を思いを巡らせていると、何故だか少し寂しさを感じた。一瞬その感情に驚き作業の手が止まるも、こんな事で弱音じみた姿勢をとってたら、皮肉を言われるのは目に見えている。
自分は、一回大きく息を吐き、気持ちを入れ替え、住川を見た。
「あの、これっ、どこに飾ります?」
「…… どこでも良いんじゃないですか」
「そ、そうなんすね。さっき来た時千納時が、住川さんに飾りの事は聞けばいいって言ってたもんですから。自分そんなセンスないんで」
「千納時君が、あなたに? そんな話しを? 私に直接じゃなくて……」
「い、いや。彼もそんなつもりじゃなくて、ついでみたいな感じっていうか」
すると、眼鏡越しから鋭い視線を送る。
「前から思ってたんですけど、あなた。千納時君と凄く仲良いですよね。どういうつもりですか? 彼を利用しようとしてるんですか?」
「い、いやっそんなつもりは更々なくてっ」
自分が言葉を言い終わる前に住川はスタスタと準備室の入口まで行くと振り向く事無く口を開く。
「すいません。私、教室に戻ります。クラス展示もありますから。角俣君お先に」
「ああ」
すると彼女はそそくさとその場を後にした。
(何かまずい事言ったか?)
皆目検討がつかないまま、深い溜息を吐く。その直後だ。
「気にする事はない」
斜め前で作業していた角俣が声を上げた。いきなりの事で、反応出来ない自分に対し、彼は自分の方を見る。
「住川も根はいいやつなのだが、思い込みが激しい。それに千納時を異様な程崇拝しているので、君が千納時とそんな話しが出来るのが羨ましいのだろう」
「そう、なんすか? 俺は千納時と会ってる時間なんて限定的で、よくわからないっていうか」
「彼は必要な話しはするものの、それ以上の事言わない。ただ、君とはなんだか雰囲気が違うような気がする。それは役員として彼をいつも側で見ているので察する事は出来る」
「そんなに違う感じないんすけどっ」
「最初っからそうなら比べようがない。だが、千納時がある意味見込だ男だけはあるな」
すると、彼が俺を見て二カリと笑う。
「この空気感の中、赴き責任を全うし作業する姿勢は、賞賛に値する」
体育会系丸出しのオーラを一気に放つ角俣が再度二カリと笑う。その姿があまりにも彼の姿と合致していると同時に、千納時以外の全日制生徒に予想だにもしていなかった言葉に気持ち恐縮と照れが混じる。そんな中、自分は小さく会釈し呟く。
「あざっす」
(流石にきちーーわ)
堂鈴祭もあと3日。校内はもう学祭一色であり、どこか浮き足だっている感じだ。ただ、自分はその空気にを感じつつも疲労が溜まっていた。相変わらず作業は自分一人であり、昼間の仕事もいつもより早くあがる関係上出勤が早まっている。いくら自分が若いとはいえ流石に堪え、思わず溜息を付く。すると、目の前に千納時が生徒と話している姿を捉えた。が、口調はいつもの調子であるものの、顔が完全に強ばっている。それは話しを終わった生徒達も思ったらしく、自分とすれ違う際に、彼が怒っているように見えたと話しながら通りすぎていったのだ。確かにあの整った顔からのバキバキな目で見られたら、圧が凄いわけで、人によっては怒っているように見えるかもしれない。しかし、裏を返せば、いつも変わらない千納時の異変は緊急事態に等しい。多分彼自身気づいていない可能性もある。
すると体が勝手に彼に近づと、千納時も自分に気づく。
「都築、俺も今から準備室にっ」
彼の言葉の途中で、自分は千納時の手首を掴む。すると彼の形相が驚きへと変化する。
「ちょっと、良い?」
千納時の返答を聞く前に自分は回りを見渡し近くにあったベンチに行くと、手首から手を離すと共に彼の両肩に手を置き座らせる。
「都築?」
「とりあえず、座って動くなよっ」
一言千納時に言い、ダッシュで視界に入った自販機でスポーツドリンクを二本買うと、すぐさま彼の元へと向かい目の前に立つ。相変わらず千納時は何が起きたかわからないといった表情でこちらを見ていた。そんな彼の前にボトルを差し出す。
「うんっ」
「俺に?」
「そうだけど」
いきなりの事で、彼も自分の行動の意図が理解出来ないようで再度首を傾げる。
「頑張りすぎだからな!!」
「俺、の事?」
「他に誰がここにいんだよ」
半信半疑の彼にボトルを無理矢理渡し、自分は鄰に座り飲料を一気に飲む。その姿を横で暫し見つめていた、千納時が軽く笑う。
「俺、いつもの通りにこなしていたつもりだったんだが」
「そりゃ、仕事はこなしているさ。ただ余裕ありませんって感じだったけどな」
「はははは。そっか」
すると、彼もボトルを開け飲料を口に含み、一回息を吐く。
「有り難う。助かったよ都築」
彼はつぶやきエンジ色に染まりつつある空を暫く見つめる事暫し。そのままの姿勢で自分の名前を呼び告げる。
「久々だな。こんな感じ。でも最近君といると気持ちの凪が収まっていくんだ。不思議だと思わない?」
いきなり疑問をなげかけられると同時に、満面の笑みをこちらに向けられる。いつもの彼の笑みに、嬉しくなる気持ちと少し照れくさくなり、視線を反らす。
「そ、そんなの自分にはわかんねーしっ」
「確かに」
「何だそれっ だったらこっちに疑問なげんなよっ」
互いに笑いながら、たわいのない会話を暫しした所で、準備室へと足を進めていくと、目の前に角俣が現れたのだ。
「角俣ーー」
声に反応し、彼が振り向くとこちらに近づく。
「都築、千納時学年長、お疲れ様です」
「角俣もお疲れーー って言うか角俣今行く所? 自分等も今からなんだけどさ。にしても大詰めでクラスの出し物と両立だからだ大変だよな」
「クラスの方はそうでもないのだが、柔道の模擬戦を文化祭の時にする関係で、部活の方が忙しい」
「うわ、それ大変っ」
会話の途中で寒気を感じ言葉を切ると共に、その元となっている方向を見る。それは角俣も感じたらしく、自分同様、千納時に視線を送る。すると、先程までの表情から一転、今日一ぐらいの胡散臭い笑みを浮かべて自分等を凝視しているのだ。思わず苦笑いをし首を傾げると、彼がそのままの表情で口を開く。
「二人はいつからそんなに仲良くなったのかな?」
(すっげーー 怒ってるんですけどっ)
急転直下の出来事にただたどうして良いかわからず、自分は再度苦笑を浮かべた。
「良いと思います」
「そ、そっかっ、良かったっ。はははは」
ぎこちない会話を角俣としつつ、作業をする。あの話しをして5日目。合同二学年役員では射的と輪投げをする事になった。今は、使っていない準備室で、長机を端に寄せ、射的用の三段の台を製作中である。ただ、今それを製作しているメンバーが3人であり、定時制は自分しかでていない。しかも5日間で作業日が3日もあったのだが、どの日も定時生徒自分一人なのだ。二人は学校に来ていても用事がるとかで来ず。
(ったく本当にあるのかよ用事!!)
そう問いつめたくもなるが、最初の顔合わせが兎に角最悪だったので、行きたくないのも理解出きる。
(だいたい、今回あの二人は自分と仲が良いからって役員させられてる節あるし尚の事強くは言いにくいんだよな)
自分とて本音をいえば、今だって来たくはないが、長になってる手前そういうわけにもいかず、授業前に仕事を早上がりさせてもらい参加している状況だ。ただ、その空気は理解した上でも、角俣と住川は来て作業をしているのだから、ある意味大人なのかもしれない。
(ただ、やっぱりやりにくいーー ったく千納時いればちったーー 違うのに)
彼は、3学年長イコール生徒会長の補佐でてんてこまえのようなのだ。学年長は2、3年する形式であり、必然的に彼が来年の3年の学年長であり、生徒会長となる。そんな背景から引継諸々踏まえて、3年の方にも手伝いに行かなくてはいけないらしい。なので、一回は顔を出すも、後はこちらに任せて退席してしまう。忙しい事が理解出きるので引き止める事は出来ない。ただ、千納時がいるだけで、二人も断然やりやすくなるだろうし、自分も気持ちの持ちようが違う。流石に何かと関わってきたせいもあるかもしれないが、彼とならこんなに気を使う事なく話せ、笑える。
(まあ、時たま突拍子もない事するせいか、鼓動がヤバい事になるけど)
そんな事を思いを巡らせていると、何故だか少し寂しさを感じた。一瞬その感情に驚き作業の手が止まるも、こんな事で弱音じみた姿勢をとってたら、皮肉を言われるのは目に見えている。
自分は、一回大きく息を吐き、気持ちを入れ替え、住川を見た。
「あの、これっ、どこに飾ります?」
「…… どこでも良いんじゃないですか」
「そ、そうなんすね。さっき来た時千納時が、住川さんに飾りの事は聞けばいいって言ってたもんですから。自分そんなセンスないんで」
「千納時君が、あなたに? そんな話しを? 私に直接じゃなくて……」
「い、いや。彼もそんなつもりじゃなくて、ついでみたいな感じっていうか」
すると、眼鏡越しから鋭い視線を送る。
「前から思ってたんですけど、あなた。千納時君と凄く仲良いですよね。どういうつもりですか? 彼を利用しようとしてるんですか?」
「い、いやっそんなつもりは更々なくてっ」
自分が言葉を言い終わる前に住川はスタスタと準備室の入口まで行くと振り向く事無く口を開く。
「すいません。私、教室に戻ります。クラス展示もありますから。角俣君お先に」
「ああ」
すると彼女はそそくさとその場を後にした。
(何かまずい事言ったか?)
皆目検討がつかないまま、深い溜息を吐く。その直後だ。
「気にする事はない」
斜め前で作業していた角俣が声を上げた。いきなりの事で、反応出来ない自分に対し、彼は自分の方を見る。
「住川も根はいいやつなのだが、思い込みが激しい。それに千納時を異様な程崇拝しているので、君が千納時とそんな話しが出来るのが羨ましいのだろう」
「そう、なんすか? 俺は千納時と会ってる時間なんて限定的で、よくわからないっていうか」
「彼は必要な話しはするものの、それ以上の事言わない。ただ、君とはなんだか雰囲気が違うような気がする。それは役員として彼をいつも側で見ているので察する事は出来る」
「そんなに違う感じないんすけどっ」
「最初っからそうなら比べようがない。だが、千納時がある意味見込だ男だけはあるな」
すると、彼が俺を見て二カリと笑う。
「この空気感の中、赴き責任を全うし作業する姿勢は、賞賛に値する」
体育会系丸出しのオーラを一気に放つ角俣が再度二カリと笑う。その姿があまりにも彼の姿と合致していると同時に、千納時以外の全日制生徒に予想だにもしていなかった言葉に気持ち恐縮と照れが混じる。そんな中、自分は小さく会釈し呟く。
「あざっす」
(流石にきちーーわ)
堂鈴祭もあと3日。校内はもう学祭一色であり、どこか浮き足だっている感じだ。ただ、自分はその空気にを感じつつも疲労が溜まっていた。相変わらず作業は自分一人であり、昼間の仕事もいつもより早くあがる関係上出勤が早まっている。いくら自分が若いとはいえ流石に堪え、思わず溜息を付く。すると、目の前に千納時が生徒と話している姿を捉えた。が、口調はいつもの調子であるものの、顔が完全に強ばっている。それは話しを終わった生徒達も思ったらしく、自分とすれ違う際に、彼が怒っているように見えたと話しながら通りすぎていったのだ。確かにあの整った顔からのバキバキな目で見られたら、圧が凄いわけで、人によっては怒っているように見えるかもしれない。しかし、裏を返せば、いつも変わらない千納時の異変は緊急事態に等しい。多分彼自身気づいていない可能性もある。
すると体が勝手に彼に近づと、千納時も自分に気づく。
「都築、俺も今から準備室にっ」
彼の言葉の途中で、自分は千納時の手首を掴む。すると彼の形相が驚きへと変化する。
「ちょっと、良い?」
千納時の返答を聞く前に自分は回りを見渡し近くにあったベンチに行くと、手首から手を離すと共に彼の両肩に手を置き座らせる。
「都築?」
「とりあえず、座って動くなよっ」
一言千納時に言い、ダッシュで視界に入った自販機でスポーツドリンクを二本買うと、すぐさま彼の元へと向かい目の前に立つ。相変わらず千納時は何が起きたかわからないといった表情でこちらを見ていた。そんな彼の前にボトルを差し出す。
「うんっ」
「俺に?」
「そうだけど」
いきなりの事で、彼も自分の行動の意図が理解出来ないようで再度首を傾げる。
「頑張りすぎだからな!!」
「俺、の事?」
「他に誰がここにいんだよ」
半信半疑の彼にボトルを無理矢理渡し、自分は鄰に座り飲料を一気に飲む。その姿を横で暫し見つめていた、千納時が軽く笑う。
「俺、いつもの通りにこなしていたつもりだったんだが」
「そりゃ、仕事はこなしているさ。ただ余裕ありませんって感じだったけどな」
「はははは。そっか」
すると、彼もボトルを開け飲料を口に含み、一回息を吐く。
「有り難う。助かったよ都築」
彼はつぶやきエンジ色に染まりつつある空を暫く見つめる事暫し。そのままの姿勢で自分の名前を呼び告げる。
「久々だな。こんな感じ。でも最近君といると気持ちの凪が収まっていくんだ。不思議だと思わない?」
いきなり疑問をなげかけられると同時に、満面の笑みをこちらに向けられる。いつもの彼の笑みに、嬉しくなる気持ちと少し照れくさくなり、視線を反らす。
「そ、そんなの自分にはわかんねーしっ」
「確かに」
「何だそれっ だったらこっちに疑問なげんなよっ」
互いに笑いながら、たわいのない会話を暫しした所で、準備室へと足を進めていくと、目の前に角俣が現れたのだ。
「角俣ーー」
声に反応し、彼が振り向くとこちらに近づく。
「都築、千納時学年長、お疲れ様です」
「角俣もお疲れーー って言うか角俣今行く所? 自分等も今からなんだけどさ。にしても大詰めでクラスの出し物と両立だからだ大変だよな」
「クラスの方はそうでもないのだが、柔道の模擬戦を文化祭の時にする関係で、部活の方が忙しい」
「うわ、それ大変っ」
会話の途中で寒気を感じ言葉を切ると共に、その元となっている方向を見る。それは角俣も感じたらしく、自分同様、千納時に視線を送る。すると、先程までの表情から一転、今日一ぐらいの胡散臭い笑みを浮かべて自分等を凝視しているのだ。思わず苦笑いをし首を傾げると、彼がそのままの表情で口を開く。
「二人はいつからそんなに仲良くなったのかな?」
(すっげーー 怒ってるんですけどっ)
急転直下の出来事にただたどうして良いかわからず、自分は再度苦笑を浮かべた。
