ひめひまアイドル日記2

 ゆなぴちゃんの審査が始まった。
私は小声で頑張って、とエールを送った。ゆなぴちゃんが微笑む。
さすがモデルさん。やっぱり、とってもかわいいな。
「倉田由奈ちゃん、お願いします」
スタッフさんがゆなぴちゃんを呼ぶ。小さな部屋の真ん中に立つゆなぴちゃん。
「えっと、こんにちは。モデルをしています。倉田由奈です」
審査を担当する、歌手のるるなさんとマリーさんにお辞儀をする由奈ちゃん。
るるなさんもマリーさんもとっても有名な歌手さんでラジオやバラエティー番組でも人気な人だ。
会うだけでも緊張するのに、自分の歌を聴いてもらうなんて、想像できない。
実際に、ゆなぴちゃんも石のように固まっている。がんばれ!
「選択した歌なんですけど、マリーさんで『バクダン』です。」
一次審査は自分で曲を選ぶことができる。でも、私はゆなぴちゃんが選んだ曲が意外だった。
『バクダン』はとてもカッコいいイメージでギャルのイメージはない。
それをゆなぴちゃんが歌うって…
歌にすごく自信があるのかな。カッコいいイメージの自分を見せつけたいのかな。
カラオケの音源が流れはじめた。ギターとベースの力強いサウンド。
イントロから素敵な歌を、ゆなぴちゃんはどう歌いこなすんだろう。
「掴み切った欲望。君をさらう。自信ありげの私」
えっ。(×100)やばいやばいやばいやばい。めっっちゃうまい!
プロみたい。っていうか、ほとんどプロ。いや、プロ以上‼
すっかり興奮モードの私の顔をみて、どや顔を決めるゆなぴちゃん。
やばい。めっちゃカッコいい。
口をあんぐり開ける私を横目に、ゆなぴちゃんはAメロを歌い終えた。
「もう、消えて亡くなりたいって。15歳のアタシが言ってる。未成年の私が言ってる。弱くて無能なアンチよ、かかってきなさい」
…すごい。
この会場の全員がゆなぴちゃんの歌声に鵜呑みにされている。
私はゆなぴちゃんの声が心に染みてゆくのを感じた。もしかして。
ゆなぴちゃんも、この歌詞と同じ経験をしているの?「消えて亡くなりたい」って。
思ったのかな。思ってしまったのかな。
でも、こうしてゆなぴちゃんはこのステージで儚い思いをぶつけた。私たちに。
だから、ゆなぴちゃんは、もう辛くないんだ。
確信なんか、なかったけど、私はなぜかそう思ってしまった。
ステージから下りたゆなぴちゃんの表情がそう言っていた。すごかったよ。
口パクで伝える。私とゆなぴちゃんの席は少しだけ離れてしまった。さっきまでの辛そうな表情なんかなかった。
「かかってきなさい」。ゆなぴちゃんがそう言ったような気がした。