ひめひまアイドル日記2

 ーオーディションの参加を申し込んだ途端、私は抑えきれない気持ちをなんとか抑えた。
アイドルになろう。私はデビューしてアイドルになるんだ。
スマホのロック画面の蓮を見て、にっこり笑った。頑張るね、蓮。応援してね。
そして、一次審査が始まった。
東京・名古屋・大阪・福岡の四か所で行われる一次審査。
事情があってその場所に行けない子たちや海外に住んでいる子はインターネットで審査をする。
年齢は10歳~25歳。私は15歳なので真ん中ぐらいかな。
様々な候補生の子たちがずらずら並んで審査室に入る。まずはパフォーマンスをする。
初めて会う子もいれば、モデルや俳優をしている有名な子たちもいた。
みんな、すごく可愛くて、オーラ―があって姫のような子たちばかりだった。
私の身長は162㎝だ。他の子と比べたらちょっとだけ低いかな。
落ち込みそうになっている気分をなんとかやる気モードに戻したかった。
自動販売機に行ってジュースを買った。そのとき、候補生の子に会った。
「よろしく~!私、モデルをやってる倉田由奈なんですけど…」
「え、ゆなぴちゃん⁉」
見覚えのある顔と長い付け爪。やっぱりゆなぴちゃんだ!
「え~⁉ひまりん⁉アイドルになるの?」
「いや、まだまだ一次審査だよ…」
「なぁ~にへこんでんの!ひまりん、可愛いから自信もって~」
強く肩を叩かれた。「痛い!」というとゆなぴちゃんはいたずらっぽく笑った。
「お互い、頑張ろっ‼ゆなぴは百パーひまりんを応援してるよ~」
嬉しいな。私を応援してくれるなんて。
「ゆなぴちゃんも頑張ってね。ちょっとだけ落ち込んじゃったけど、ゆなぴちゃんに会えてよかった!」
笑って喜ぶ私たちを、誰かが見ている気がした。なんだか…鋭い視線?
「邪魔」
低い声がビルの裏地に響く。いかにも不良そうな女の人だった。
「邪魔っていう言い方はないでしょ~!ほら、仲良くしよっ」
ゆなぴちゃんが明るく言った。よかった。ゆなぴちゃんがいなかったら、フリーズしてたかも。
「アンタ、見たことある。いかにも頭が悪そうなギャルでしょ?最近、そういうの流行らないから」
冷たく突き放すように言われて、固まってしまうゆなぴちゃん。
どうしよう。このまま、私がゆなぴちゃんを助けなかったら…昔の私と一緒になっちゃう!
「…あの。そういう、キツイ言い方はちょっと…」
「何?年上にそういうこと言えるタイプ?じゃあね。私も暇じゃないから」
いつの間に買ったのか、その人はコカ・コーラを手に取って、走ってビルに戻っていった。
ゆなぴちゃんの悲しそうな顔と、私の泣きそうな顔が水たまりに写ってぼんやりしていた。