自分の部屋に飾られた蒼空くんのグッズ。
推し活って、楽しいと気づけたあの頃が懐かしい。
愛花のおかげだな。本当、いろいろ愛花に救われている。
蒼空くんが、引退を正式発表した。信じられなくてたくさん泣いた。
蓮がメールで「大丈夫か?」と言ってくれたけど、逆にもっと悲しい。
芸能界から、いなくなっちゃうんだな。
涙がこぼれてこぼれて、部屋のカーペットに染みる。
ピロリリリリリリル
電話の着信音が鳴った。一人の部屋にうるさくなり続ける。
蓮からの電話だ。無視する理由もないので、蓮と話すことにした。
「どうしたの?大丈夫?」
『いや、俺のセリフだって。日葵こそ大丈夫か?』
「蒼空くんの事でしょ?もちろん悲しいよ。」
『日葵が悲しいと俺も悲しいから』
「ごめんね。蓮まで移る病気?これって」
『あ、冗談は言えるんだ。よかった』
「アイドルになるためのオーディション。受けようと思う」
『うん。変わったな、ほんと。嬉しいよ』
「私も嬉しい」
『あ、それで、部屋で泣いてるということか』
「泣いてるのは蒼空くんの引退のせい」
『そっか』
「じゃあね。蓮も元気に過ごしてね」
『OK』
電話を切って、ため息をつく。
私の推し活の行方は…真っ暗だった。蓮と電話をしたのに気持ちは晴れない。
せっかく、心配してくれたのに申し訳ないな。
「よし、決めた!」
推しを変えよう。蒼空くんから、蓮に変えよう!
蒼空くんのグッズを片付け始めた。思い出のグッズはそのまま残す。
少し古いものはメルカリで売ろうかな。
久しぶりに部屋の整頓をしたな。結構、片付いた。
蓮と付き合って言った頃に撮った写真をアルバムにしよう。
姫と一緒に撮った写真も、ここに貼ろう。
夕方になるまで、私はずっと部屋の片づけに夢中になっていた。