ひめひまアイドル日記2

 「翔だか、何だか知らん。とにかくふざけんな」
蓮が怒っちゃった。激おこぷんぷん丸だよ…。悲しいです。
「は?日葵の元カレ?いや、しょせん『元』だろ。何で怒ってんの?」
翔もなんかよくわからないけど、怒ってる。
そうだ。そうだった。
翔は、自分が知らない事でも、人が怒っているところを見ると喧嘩に参加しちゃうんだ!
長年一緒にいたのに、忘れてしまうとは。
「姫!なんとかしてよ!」
だって、こんなことになった原因は、姫が私の背中を押したからだし。
蓮と翔の口げんかのことを気にしていたら、姫のことをすっかり忘れていた。
だが、二人の喧嘩は続く。私の声なんか聞こえないらしい。
しかも、姫は何もしようとしない。私も何もできなくてただ突っ立っているだけ。
あれ、今日って何のためにあるんだっけ。
っていうか、私の誕生日っていつ?なんでみんなはここにいるの。
クラクラしてきた。
なんで、私は昔と同じようなことを考えてしまうのだろう。
私って果たして成長しているのだろうか。強くなれないのだろうか。
「うるさい‼」
思わず、大声で叫んでしまった。すぐに我に返ったが、最悪な空気と沈黙。
姫が泣きそうな目で私を見つめている。きっと、私の大声に驚いたのか、ショックを受けたのか。
どうして、こうなんだろう。みんなに八つ当たりしちゃうんだろう。
「ごめんなさい!」
真っ先に姫が頭を下げた。なんで?私が頭を下げなきゃいけないのに。
「蓮くんのこと、『好き』って言うなら、翔はどうなのかな、って思っちゃって」
私は、蓮のことがすごく好き。でも、翔はどうなの?
そんなのこと、考えたことはなかった。
でも、確かにそうだ。本人である私ですらわからない。それは、気になるよね。
姫がなぜ、私の背中を押したのか、理由がだんだん分かってきた。
「俺もごめん。誕生日パーティーの途中なのに喧嘩なんかして、みっともない」
蓮が嫉妬しちゃう気持ちも痛いほど分かる。だって、私だって嫉妬したことはあるし…
いや、これはないことにしよう!
「日葵ちゃん、これはなんと…サプライズでした‼」
「え?」
じゃあ、二人の喧嘩は嘘っていうことなの?姫が泣きそうになっているのも、演技?
「日葵ちゃん!蓮くんから発表があります!」
姫が突然、一人で拍手をしながら、大声で言った。発表ってなんだろう?
「俺は、自分のことが嫌いで。比べられながら生きてきた人間ってやっぱりそうなんだなって」
最初の一言から、蓮が切ない面影なのは感じる。あのとき、みたいだな。
『王子様?誰の事言ってるんだよ。俺は、お兄ちゃんと比べられながら育った』
あのときから、私の気持ちは動き出したんだ。ゆっくりと動く時計のように。
「今日は、日葵の誕生日で、大事な日で。日葵、単純なことだ」
何でも聞くよ。蓮の話なら。5時間でも一日でも、一年でも。聞ける限りはずっと聞く。
「ステージで輝く、アイドルになれ」
涙が頬を伝った。私、何回泣いているんだろう。
その短い一言が。そのまっすぐな言葉が。蓮の優しさとか、私が好きな蓮を思い出す。
輝く宝石のように凛としていて、カッコよくて、強い人だね。蓮って。