爆発の音。

建物が崩れる音。

たくさんの人が走る音。

色んな人が叫ぶ声。

大きい火。熱そう。

燃えている、パパの部屋。

パパだ。


「リアン...すまない。すまなかった。全部私のせいだ」

泣いてるの?

「お前が幸せに生きていける場所が、この宇宙のどこかに必ずある。だから...」

天井が崩れちゃった。空だ。

「愛しているよ、リアン」







おっきい音。

空がどんどん近くなる。

煙よりも高くなってく。

きれいな星空。


だんだん、眠く.....ねむ...い






ーーーーーーーーーー


カプセルが開く。

天窓からはいつもの星空が見える。

起き上がって、小窓のほうを見ると。


「...いない」


頭が居なくなっていた。


「おはよう。りあん」


後ろから声がする。
振り返るとあの頭が床に転がっていた。


「いた...」

「おはよう。りあん、わたしはおるた」

「オルタ?」

「おるた」

「名前?」

「そう」

「...喋れるんだ」

「じかんはあった。りあんがはなしてくれた」

「そっか」

「しりょうもあった。じゅうぶんだ」


船の奥の本棚を見ると本が散乱していた。


「自分で動けたんだ」

「うごけない。たまにふねがゆれる。ころがる。そのくりかえし」

「...ちょっと待っててオルタ」


リアンは船の隅に積まれたガラクタの山から部品を物色し始めた。


「手を付けよう」


リアンはオルタを抱え上げてガラクタから腕をこしらえていく。
オルタはなされるがまま受け入れていた。
やがて頭の大きさには不釣り合いな大柄な一本の左腕がオルタに結びついた。


「どう?」


ゆっくり掌が開き、閉じ、拳を結ぶ。


「大丈夫そうだね」


オルタの手が開きゆっくりとリアンの顔に近づく。


「どうしたの?」


リアンはしゃがんだ。
オルタの左手はリアンの口の周りについた土くれを拭った。


「たべたら、くちのまわりをふこう」

「...わかった」

「ありがとう、りあん」

「どういたしまして」


リアンは微笑み答えた。



ーーーーーーーーーーーーー

船が大きく震える。


リアンは窓に張りつき、星の輪郭を見つめる。
オルタは静かにそれを見ていた。

宇宙船は腹から地上に落ちてゆき、オルタの居た星と同じ手順で着陸を始めた。


「こうやってオルタのところにも来たんだよ」


やがて揺れが落ち着き、細い足を伸ばして宇宙船は着陸を完了した。
小型の探査ロボットが宇宙船から放たれる。


「あの子が、私が外に出ても平気か調べてくれるんだ」

「あれは?」


オルタが指さす方にはリアンよりも二回りほど大きい人型の装備が壁に掛けられていた。


「あれはね、外が危ないときに着ていくの」


軽い衝突音と共に探査ロボットが帰した。
リアンは船内のディスプレイに表示される数字を見つめる。


「ここはあれ着ないで出ても大丈夫だって」


リアンがボタンを押すとカプセルのそばの床が開き梯子が下ろされる。
その穴から茶色の地面が見えた。


オルタを抱えてリアンは一段ずつ慎重に梯子を下り始めた。


「りあん、あぶない」

「大丈夫だって」


リアンが梯子を持つ手は震えている。
手元に気を取られ、地面まで数段のところで足を踏み外し2人は星に落下した。


「痛て...」


土埃が舞う中リアンが起き上がる。
オルタは手を伸ばし、リアンについた汚れを払った。


「ありがとう、オルタ」


リアンは立ち上がり、オルタを拾い上げ抱えた。
風が吹き抜け、舞い上がった土埃が晴れる。
2人が見つめる先には茶色の地平線はどこまでも続いていた。


「...いこっか」


リアンは高台を探して歩き始めた。