レクリエーション室では奏の復帰を祝う準備が進められていた
林忠(ハヤシタダシ)と下地上星(シモヂウホ)は手早くレクリエーション室を飾り付ける
「一連の騒動に蚊帳の外だな」
「忠君も誰かを殴ればいいよ」
「なら顔を貸してくれ」
「私自分の顔可愛いと思っているの
だから殴るなら自分の顔にしてちょうだい」
米津徹也(ヨネヅテツヤ)が赤い布を持って教室に入る
「お~い演劇部から借りてきたぞ」
「ありがとう」
上星は椅子から降りると、徹也と協力して、机の上に赤い布を敷く
「徹也は奏さんとなにか接点がない」
「そんなんねーよ」
「だよな
今日のパーティー気まずくね」
「適当に飯食って帰れないいだろ」
「そうよ。どうせ顧問の財布で払うんだし」
「寿司とかあるかな」
廊下から美味しい料理の香りが近付いてくる
双馬達7人が料理や飲み物を持って来る
「お~し料理到着
3年生はそろそろ到着するらしいぜ」
「健後と俊は」
「だめだ
合わせる顔がないって」
「そりゃ残念」
「そういえばヒデは」
「あっ!!」
上星はしまったと慌てる
「パーティー言ってなかった」
◇
吉田秀泳(ヨシタヒデ)は河原で音を拾っていた
「今日もいいお天気日和だな」
秀泳は草むらに寝転ぶとそのまま目を閉じた
鼻に蝶が止まっても気にせず、大きくいびきを立て眠る
捜索要員として来た忠とリッサ、蓮児は秀泳を囲む
「こいつ一度寝たら起きないんだ」
「可愛い寝顔だ」
「もう
運ぶしかないの」
三人は秀泳を持ち、校舎へと戻る
残暑がまだまだ厳しい季節だ
下手に放置して熱中症になられたら困る
大汗を搔きながら運び会場に放り込んだ
◇
パーティは順調に進んだ
化粧を落ち着かせるとこんな顔なんだと、部員達は代わる代わる奏の顔を見る
前は茶髪だったが、地毛は白髪の混じる灰色であった
猫っぽさが際立っている
鶴美部長は手を叩く
「そいじゃあ黒紅梅とブルー・トレインは集まって」
「おかえり奏ちゃん」と書かれた黒板の前にメンバーが集まる
奏はもちろん、最前列の中央だ
奏が立つと後ろの星がパネルを掲げた
奏は振り向こうとするが、隣のリッサが手で制止をする
「前向かないと映り悪くなるよ」
鶴美はカメラを向ける
「それじゃ笑顔で、さん、はい」
シャッター音と同時に一眼レフのレンズが瞬きをする
何枚か撮ると解放され、奏は振り返える
星の持つパネルには「ー1」と書かれている
「マイナスイチ」
「マイナーファースト
奏なしではやっていけないから」
「なにそれキモい」
奏とリッサは声を出して笑う
蓮児は付け加える
「今売れる音楽じゃなくてもいい
誰も聴いてなくてもいい
逆から一番、それがマイナーファーストだ」
奏は内心、それぞれのバンドが欠けたメンバーを忘れないように付けたのかもしれないと思った
鶴美は提案する
「それじゃあ気合い入れの円陣組みますか」
部員達は肩を組み、大きな円陣を作る
「奏なにか一言」
「じゃあ私達がに続いてナンバーワンでいいですか」
「マイナーファーストだろ」
「いいんですそれで部長」
「了解」
奏は息を整える
「私達が」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「
ナンバーワン!!!
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
◇
職員室にて、円は微かに聞こえる楽しげな声に頬を緩める
ミナカは向かいの机から円に声を掛ける
「円先生は行かなくていいんですか」
「大人は子供を見守らないといけないのよ
なんでも過保護になったらだめ
いつも遠くからよ」
「そうなんですか」
円は金継ぎで欠片が繋がれたコップを撫でる
「私の恋人は事故で亡くなったの」
「それは遺品ですか」
「事故で割れたわけじゃないわ
割ったのは私
だけど捨てられなくて」
「ロマンチストなんですね」
「フランスに毒されたのよ」
教員同士、過去の経歴は知っている
ミナカは円がフランスで指揮者をやっていたことを思い出した
「割れた器は元に戻らない
だけどね人と人との繋がりは消えることはない
悪いのも良いのも全部残るの」
「はぁ」
「だからこそ大切にしないといけない
私とミナカ先生の縁もね」
「なら食事奢って下さいよ」
「また今度ね」
ミナカは立ち上がり職員室を出る
一人残された円は引き出しを開け、古びた写真を見る
恋人と親友と撮った思い出の一枚
まさか、彼が恋人を殺すなんて
いいや、あれは事故だ
あの時、自分がデートの待ち合わせに遅れなければ、彼女は喫茶店で待つことはなかった
彼は人を殺そうとして亡くなった
目的は?誰に雇われた?大勢を巻き込む必要はあったのか?
もはや真相を確かめる術はないが、問い詰めたいことが山ほどあった
「人生山あり谷ありね」
円は悲しげに息を吐いた
林忠(ハヤシタダシ)と下地上星(シモヂウホ)は手早くレクリエーション室を飾り付ける
「一連の騒動に蚊帳の外だな」
「忠君も誰かを殴ればいいよ」
「なら顔を貸してくれ」
「私自分の顔可愛いと思っているの
だから殴るなら自分の顔にしてちょうだい」
米津徹也(ヨネヅテツヤ)が赤い布を持って教室に入る
「お~い演劇部から借りてきたぞ」
「ありがとう」
上星は椅子から降りると、徹也と協力して、机の上に赤い布を敷く
「徹也は奏さんとなにか接点がない」
「そんなんねーよ」
「だよな
今日のパーティー気まずくね」
「適当に飯食って帰れないいだろ」
「そうよ。どうせ顧問の財布で払うんだし」
「寿司とかあるかな」
廊下から美味しい料理の香りが近付いてくる
双馬達7人が料理や飲み物を持って来る
「お~し料理到着
3年生はそろそろ到着するらしいぜ」
「健後と俊は」
「だめだ
合わせる顔がないって」
「そりゃ残念」
「そういえばヒデは」
「あっ!!」
上星はしまったと慌てる
「パーティー言ってなかった」
◇
吉田秀泳(ヨシタヒデ)は河原で音を拾っていた
「今日もいいお天気日和だな」
秀泳は草むらに寝転ぶとそのまま目を閉じた
鼻に蝶が止まっても気にせず、大きくいびきを立て眠る
捜索要員として来た忠とリッサ、蓮児は秀泳を囲む
「こいつ一度寝たら起きないんだ」
「可愛い寝顔だ」
「もう
運ぶしかないの」
三人は秀泳を持ち、校舎へと戻る
残暑がまだまだ厳しい季節だ
下手に放置して熱中症になられたら困る
大汗を搔きながら運び会場に放り込んだ
◇
パーティは順調に進んだ
化粧を落ち着かせるとこんな顔なんだと、部員達は代わる代わる奏の顔を見る
前は茶髪だったが、地毛は白髪の混じる灰色であった
猫っぽさが際立っている
鶴美部長は手を叩く
「そいじゃあ黒紅梅とブルー・トレインは集まって」
「おかえり奏ちゃん」と書かれた黒板の前にメンバーが集まる
奏はもちろん、最前列の中央だ
奏が立つと後ろの星がパネルを掲げた
奏は振り向こうとするが、隣のリッサが手で制止をする
「前向かないと映り悪くなるよ」
鶴美はカメラを向ける
「それじゃ笑顔で、さん、はい」
シャッター音と同時に一眼レフのレンズが瞬きをする
何枚か撮ると解放され、奏は振り返える
星の持つパネルには「ー1」と書かれている
「マイナスイチ」
「マイナーファースト
奏なしではやっていけないから」
「なにそれキモい」
奏とリッサは声を出して笑う
蓮児は付け加える
「今売れる音楽じゃなくてもいい
誰も聴いてなくてもいい
逆から一番、それがマイナーファーストだ」
奏は内心、それぞれのバンドが欠けたメンバーを忘れないように付けたのかもしれないと思った
鶴美は提案する
「それじゃあ気合い入れの円陣組みますか」
部員達は肩を組み、大きな円陣を作る
「奏なにか一言」
「じゃあ私達がに続いてナンバーワンでいいですか」
「マイナーファーストだろ」
「いいんですそれで部長」
「了解」
奏は息を整える
「私達が」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「
ナンバーワン!!!
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
◇
職員室にて、円は微かに聞こえる楽しげな声に頬を緩める
ミナカは向かいの机から円に声を掛ける
「円先生は行かなくていいんですか」
「大人は子供を見守らないといけないのよ
なんでも過保護になったらだめ
いつも遠くからよ」
「そうなんですか」
円は金継ぎで欠片が繋がれたコップを撫でる
「私の恋人は事故で亡くなったの」
「それは遺品ですか」
「事故で割れたわけじゃないわ
割ったのは私
だけど捨てられなくて」
「ロマンチストなんですね」
「フランスに毒されたのよ」
教員同士、過去の経歴は知っている
ミナカは円がフランスで指揮者をやっていたことを思い出した
「割れた器は元に戻らない
だけどね人と人との繋がりは消えることはない
悪いのも良いのも全部残るの」
「はぁ」
「だからこそ大切にしないといけない
私とミナカ先生の縁もね」
「なら食事奢って下さいよ」
「また今度ね」
ミナカは立ち上がり職員室を出る
一人残された円は引き出しを開け、古びた写真を見る
恋人と親友と撮った思い出の一枚
まさか、彼が恋人を殺すなんて
いいや、あれは事故だ
あの時、自分がデートの待ち合わせに遅れなければ、彼女は喫茶店で待つことはなかった
彼は人を殺そうとして亡くなった
目的は?誰に雇われた?大勢を巻き込む必要はあったのか?
もはや真相を確かめる術はないが、問い詰めたいことが山ほどあった
「人生山あり谷ありね」
円は悲しげに息を吐いた


