一週間という期間は、これほど長く感じるものなのか。
それまで毎朝続けていた校内放送も、当然できなくなった。そして何より、蒼空が学校に来ていないので、放課後のラジオごっこも中止せざるを得ない。部室に行くことさえ気が引ける。
何もしない日々がこれほど退屈で、こんなにも心を蝕むものだとは知らなかった。
結局、ぼくは久しぶりにお気に入りのカフェに足を向けた。街の奥まった路地にある、隠れ家のような小さな店だ。
店店内にはドライフラワーや観葉植物が所狭しと並び、テーブルや椅子はすべて無垢材で統一されている。まるで森の奥深くにひっそり佇む小さな山小屋のような雰囲気だ。店に一歩足を踏み入れると、都会の喧騒が遠のいていくような感覚が味わえる。
BGMには静かなジャズやボサノバが流れ、時折聞こえる小鳥のさえずりの音が、より一層この場所の特別感を演出していた。ここを利用する人たちは皆、忙しい日常を忘れて、ゆったりとした時間を過ごしにやってくる。
いつものブレンドコーヒーを注文し、窓際の席に腰を下ろすと、鞄から文庫本を取り出した。陽だまりが頬を温め、まるで森林浴をしているかのような心地よさに包まれる。本来なら放送部の存続をかけて文化祭を成功させることを考えなければならないのに、今はそんなことすら考えたくなかった。
それなのに、ページを捲ろうとすると、思い出されるのは蒼空のことばかり。
いつも穏やかで、誰に対しても優しい笑顔を向けていた彼が、あれほどの怒りを露わにして相手に殴りかかってしまった。あの瞬間の蒼空の表情は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。
「本当はぼくが怒らないといけないのに……」
呟いた声は、カフェの静寂に吸い込まれていく。自分の不甲斐なさに、ガックリと肩を落とした。
今、蒼空はどんな気持ちで家にいるのだろう。ぼくのことを憎んではいないだろうか。もう放送部なんてやってられない、と思っているかもしれない。それとも、あの時のことを後悔しているのだろうか。
さまざまな考えが頭の中を駆け巡り、目は本の文字を追っているのに、一向に内容が頭に入ってこない。同じページを何度も読み返しているうちに、とうとう読むのを諦めてしまった。
「もう、本読むの、やめ」
ぼくは文庫本を閉じ、代わりにいつも持ち歩いているノートを取り出した。ペンを握ると、自然に文字が浮かんでくる。活動停止後、最初の朝に放送する構成を考え始めた。
まずは学校に迷惑をかけたことを謝った方がいいのか。それとも、そのことには一切触れずに、いつも通りの放送をすればいいのか。
しばらく考えた末、どちらにも対応できるように、二つのパターンの原稿を作成することにした。一つは謝罪を入れるもの、もう一つはいつも通り何事もなかったように進めるものだ。
ペン先がノートの上を滑り、文字が増えていく。集中していると、あっという間に時間が過ぎた。気がつけば夕方の橙色の光が窓から差し込んでいる。
これで活動停止明けの朝の放送はどうにかなりそうだ。ただし、どちらの原稿を使うかは、直前まで悩むことになりそうだった。
それまで毎朝続けていた校内放送も、当然できなくなった。そして何より、蒼空が学校に来ていないので、放課後のラジオごっこも中止せざるを得ない。部室に行くことさえ気が引ける。
何もしない日々がこれほど退屈で、こんなにも心を蝕むものだとは知らなかった。
結局、ぼくは久しぶりにお気に入りのカフェに足を向けた。街の奥まった路地にある、隠れ家のような小さな店だ。
店店内にはドライフラワーや観葉植物が所狭しと並び、テーブルや椅子はすべて無垢材で統一されている。まるで森の奥深くにひっそり佇む小さな山小屋のような雰囲気だ。店に一歩足を踏み入れると、都会の喧騒が遠のいていくような感覚が味わえる。
BGMには静かなジャズやボサノバが流れ、時折聞こえる小鳥のさえずりの音が、より一層この場所の特別感を演出していた。ここを利用する人たちは皆、忙しい日常を忘れて、ゆったりとした時間を過ごしにやってくる。
いつものブレンドコーヒーを注文し、窓際の席に腰を下ろすと、鞄から文庫本を取り出した。陽だまりが頬を温め、まるで森林浴をしているかのような心地よさに包まれる。本来なら放送部の存続をかけて文化祭を成功させることを考えなければならないのに、今はそんなことすら考えたくなかった。
それなのに、ページを捲ろうとすると、思い出されるのは蒼空のことばかり。
いつも穏やかで、誰に対しても優しい笑顔を向けていた彼が、あれほどの怒りを露わにして相手に殴りかかってしまった。あの瞬間の蒼空の表情は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。
「本当はぼくが怒らないといけないのに……」
呟いた声は、カフェの静寂に吸い込まれていく。自分の不甲斐なさに、ガックリと肩を落とした。
今、蒼空はどんな気持ちで家にいるのだろう。ぼくのことを憎んではいないだろうか。もう放送部なんてやってられない、と思っているかもしれない。それとも、あの時のことを後悔しているのだろうか。
さまざまな考えが頭の中を駆け巡り、目は本の文字を追っているのに、一向に内容が頭に入ってこない。同じページを何度も読み返しているうちに、とうとう読むのを諦めてしまった。
「もう、本読むの、やめ」
ぼくは文庫本を閉じ、代わりにいつも持ち歩いているノートを取り出した。ペンを握ると、自然に文字が浮かんでくる。活動停止後、最初の朝に放送する構成を考え始めた。
まずは学校に迷惑をかけたことを謝った方がいいのか。それとも、そのことには一切触れずに、いつも通りの放送をすればいいのか。
しばらく考えた末、どちらにも対応できるように、二つのパターンの原稿を作成することにした。一つは謝罪を入れるもの、もう一つはいつも通り何事もなかったように進めるものだ。
ペン先がノートの上を滑り、文字が増えていく。集中していると、あっという間に時間が過ぎた。気がつけば夕方の橙色の光が窓から差し込んでいる。
これで活動停止明けの朝の放送はどうにかなりそうだ。ただし、どちらの原稿を使うかは、直前まで悩むことになりそうだった。



