土日は混んでいそうなのと春輝くんも俺もバイトがあったため、平日の放課後に行こうという話になった。
来てくれるだけでありがたいからと、予約も行き方を調べるのもぜんぶ彼がやってくれるらしい。
その他にもAsterのおすすめ動画を教えてくれたり、莉奈さんとライブに行く話だったりとやりとりが延々と続いて、つい昨日は夜ふかししてしまった。
圭吾に話し終えて、俺はあくびを噛み殺す。
「え、それで行くのか。距離の縮め方すごいな」
圭吾は紙パックのジュースを音を立てて飲んで、きょとんとした。
「うん。俺は普通にご飯食べるだけでいいんだって」
「へー。理玖がいいならいいけど、食べ物ってことはそれ外すんじゃないのか。春輝くんとなら大丈夫そう?」
昼ご飯が終わった俺がつけたマスクを指差す圭吾。はっとして「そうだ」と呟く。
やばい、そんなのは何も考えてなかった!
「あ、いやでもほら、別に普段だって圭吾と出かけるとき外してるし。外すのがどうしても無理ってわけでもねぇから」
「理玖がいいならいいよ。けど、ちょっとでも嫌ならそうまでして付き合うようなことじゃないだろ」
そう言われると、急に胃のあたりが重たくなってくる。
圭吾といるときはだいぶ気にしなくなったものの、たまにだめなときもあった。
圭吾相手なら、行った先でだめだってなっても言える。そんなとき圭吾は持ち帰りにして自分の家に呼んでくれた。言わないと無理をするなと怒られる。
でも、会ったばかりの春輝くんにはそんなこと言えない。
ましてお店に行くことを目的とした春輝くんに持ち帰りにしようなんて、一緒に行く意味もなくなってしまう。
「一回くらいなら、俺が代わろうか?」
静かに息を吐いて、俺は首を横に振る。
「いいよ。俺が引き受けたことだし、圭吾にそこまでしてもらうのは悪いから」
「理玖はほんとにお人好しだな」
圭吾の苦笑に俺は「圭吾こそ」と笑った。俺の代わりに行ってくれようとした時点で、どんだけいいやつなんだ。
「最悪飲み物だけ頼んで、様子見るよ。春輝くんには、ちゃんと事前に伝えとく」
「今後も一緒に行くなら、ちゃんと相手に言っとけよ」
どうかなぁ。今回は罪悪感もあってうなずいたけど、次も一緒に行くかはわからない。
自分と同じくらい柊奏多のことを好きな人と行ったほうが春輝くんも楽しいだろうし、俺もファンがいる中で大して知りもしないのに気まずい気持ちになりたくない。
俺はポケットからスマホを出して、春輝くんとやりとりの画面を開く。新着メッセージが届いていた。
「あれ、ご飯なくなった」と、俺が圭吾に伝えると、圭吾は不思議そうに「断られたの?」と訊ねた。
「平日も店すごい混んでるみたいだから、柊奏多が出てる映画にしないかって。今の時期ちょうどやってるっぽい」
「え、それは理玖と行く意味あんの? 1人でも行けそうじゃん」
「な、俺もそう思うけど。映画館も女性客多いと1人って行きづらいのかも」
すぐに了解と返事を打ちながら、ホッとしていた。映画館なら暗いから気にならないし、そもそもマスクを外さなくてもいい。
「なるほど。理玖的に映画館はどうなの?」
「全然行ける。予告見て面白そうだとは思ってたやつだし、ありだな」
春輝くんと出かけること自体は楽しみだったので、なくならなかったことにも安心した。
よかったな、と圭吾から強めに肩を叩かれて、俺はそこを擦りながらうなずいた。
来てくれるだけでありがたいからと、予約も行き方を調べるのもぜんぶ彼がやってくれるらしい。
その他にもAsterのおすすめ動画を教えてくれたり、莉奈さんとライブに行く話だったりとやりとりが延々と続いて、つい昨日は夜ふかししてしまった。
圭吾に話し終えて、俺はあくびを噛み殺す。
「え、それで行くのか。距離の縮め方すごいな」
圭吾は紙パックのジュースを音を立てて飲んで、きょとんとした。
「うん。俺は普通にご飯食べるだけでいいんだって」
「へー。理玖がいいならいいけど、食べ物ってことはそれ外すんじゃないのか。春輝くんとなら大丈夫そう?」
昼ご飯が終わった俺がつけたマスクを指差す圭吾。はっとして「そうだ」と呟く。
やばい、そんなのは何も考えてなかった!
「あ、いやでもほら、別に普段だって圭吾と出かけるとき外してるし。外すのがどうしても無理ってわけでもねぇから」
「理玖がいいならいいよ。けど、ちょっとでも嫌ならそうまでして付き合うようなことじゃないだろ」
そう言われると、急に胃のあたりが重たくなってくる。
圭吾といるときはだいぶ気にしなくなったものの、たまにだめなときもあった。
圭吾相手なら、行った先でだめだってなっても言える。そんなとき圭吾は持ち帰りにして自分の家に呼んでくれた。言わないと無理をするなと怒られる。
でも、会ったばかりの春輝くんにはそんなこと言えない。
ましてお店に行くことを目的とした春輝くんに持ち帰りにしようなんて、一緒に行く意味もなくなってしまう。
「一回くらいなら、俺が代わろうか?」
静かに息を吐いて、俺は首を横に振る。
「いいよ。俺が引き受けたことだし、圭吾にそこまでしてもらうのは悪いから」
「理玖はほんとにお人好しだな」
圭吾の苦笑に俺は「圭吾こそ」と笑った。俺の代わりに行ってくれようとした時点で、どんだけいいやつなんだ。
「最悪飲み物だけ頼んで、様子見るよ。春輝くんには、ちゃんと事前に伝えとく」
「今後も一緒に行くなら、ちゃんと相手に言っとけよ」
どうかなぁ。今回は罪悪感もあってうなずいたけど、次も一緒に行くかはわからない。
自分と同じくらい柊奏多のことを好きな人と行ったほうが春輝くんも楽しいだろうし、俺もファンがいる中で大して知りもしないのに気まずい気持ちになりたくない。
俺はポケットからスマホを出して、春輝くんとやりとりの画面を開く。新着メッセージが届いていた。
「あれ、ご飯なくなった」と、俺が圭吾に伝えると、圭吾は不思議そうに「断られたの?」と訊ねた。
「平日も店すごい混んでるみたいだから、柊奏多が出てる映画にしないかって。今の時期ちょうどやってるっぽい」
「え、それは理玖と行く意味あんの? 1人でも行けそうじゃん」
「な、俺もそう思うけど。映画館も女性客多いと1人って行きづらいのかも」
すぐに了解と返事を打ちながら、ホッとしていた。映画館なら暗いから気にならないし、そもそもマスクを外さなくてもいい。
「なるほど。理玖的に映画館はどうなの?」
「全然行ける。予告見て面白そうだとは思ってたやつだし、ありだな」
春輝くんと出かけること自体は楽しみだったので、なくならなかったことにも安心した。
よかったな、と圭吾から強めに肩を叩かれて、俺はそこを擦りながらうなずいた。



