君が笑うと、世界から色が消えていく。
街のネオンも、夕焼けも、海の青ささえも、全部薄くなって、最後には君しか見えなくなる。

それは、恋の魔法みたいなものかもしれない。君の笑顔は、僕から世界を奪っていく。

付き合い始めた頃は、それでよかった。
色なんてなくても、君がいればそれで満たされていたから。

けれど、いつからだろう。
友達との時間も、夢を追う気持ちも、全部、君に置き換わってしまった。

「別れよ」

その一言を聞いた瞬間、世界は真っ白になった。

もう、何も残っていなかった。
僕の世界も、僕自身も、全部君に預けてしまっていたのだと、その時ようやく気づいた。

だから今は、色を探して歩いている。
君のいない世界で、もう一度、空の青さを思い出すために。
君に奪われた色を、もう一度、自分の手で描き直すために。