八子達がエフェクター探しに行っている時に遡る
泉岳寺うづめ(センガクジウヅメ)、大葉慎之介(オオバシンノスケ)、三井斎夏(ミツイサナ)はジャムセッションをしていた
大橋剣(オオハシケン)は椅子に座り、その様子を退屈そうに眺める
弾き終えると、剣は不服だと訴える
「そろそろ俺にも叩かせろよ」
「やだ」
「慎之介もなんか言ってくれ」
「二人で叩けばいいだろう」
「その手があったか」
剣は椅子を斎夏の隣へ移動する
「俺が左手と左足でお前が右手と右足だ」
「私のスピードについて来れるかな」
「おうよ」
なぜか二人は一台のドラムを叩き始める
「「おんにょ、おんにょ、おんにょ、おんにょ」」
うづめは呟く
「阿修羅像だ」
◇
4人は互いが見えるように椅子を並べて座る
「お互いのフィーリングも合ってきたし
さぁてバンド名を発表します」
「考えてきてくれたんだ」
慎之介は巻物をばっと広げる
達筆な字で書かれたそれをうづめは読む
「売れてるバンドです」
「けっコミックバンド路線かよ」
剣は悪態をつく
コミックバンドとはロックにユーモアを足したようなバンドの事である
大抵はテンションが高くワチャワチャしていることからワチャ系とも呼ばれる
「いいじゃん
私結構好きだよ
ヤバTとかTHE 南無ズとか」
「普段ふざけているのにMCで真面目な話をすると目頭が熱くなる」
「わかる
こういうバンドに限って音楽の軸がしっかりしているんだよね」
慎之介と斎夏は語り始めた
うづめは話が長くなるなと遮った
「これぐらいインパクトないと
「売れてるバンド 日本武道館公演決定」みたいな」
「なんだそれ」
「ファーストアルバムは「世界進出」」
「いいねそれ
「売れてるバンド 世界進出」みたいな」
「何かの手違いで海外のフェスに呼ばれるかもじゃん」
「呼ばれねぇよ」
うづめは手を叩く
「はいはい。それじゃあオーディションの話しようか
真面目に最初は自分達の好きな曲やればいいんじゃない
持ち時間15分だし
ギリいけるでしょ」
「なら俺はマカロニえんぴつの「零色」」
「斉夏は石崎ひゅーいの「第三惑星交響曲」」
「 back numberの「最深部」」
「うづめはKANA-BOONの「みたくないもの」」
うづめはスマホで計算をする
「ざっと単純計算で14分48秒」
「間に合わねー」
「やっぱ「ワンドリンク別」でいいや」
「やっさしー」
◇
話は着ぐるみに移る
「ところで健君が着る着ぐるみのことなんだけど」
「俺は着ないぞ」
「いい加減諦めなよ」
「それがさ。レンタルだと1日2万くらいなんだって」
「ならやめとけ」
「円先生に相談したら
だいたい制作費が45万円なので
一旦、学校が購入して、2年間の分割払いはどうかって
部費の1万3千円に9千375円足して
2万2千375円だって」
「それだとバンドメンバー全員が支払うことになるけど」
「あー問題ないっしょ
いつも誰かが負担してたらトラブルになるし
バンド活動に掛かるお金は皆で負担する」
「意外と慎之介真面目だな」
「共産主義者なんで」
「だがしかし、俺は着ないぞ」
「えーなんで
着る流れだったのに」
「ちなみに使うとこんな感じだよ」
うづめはスマホで動画を再生する
可愛らしい着ぐるみが手を振っている。背中からチャックが開くと中年太りしたおじさんが出てくる。着ぐるみはどんどん小さくなり、完全に空気が抜けるとおじさんはそれを小さく畳み鞄にしまう。さらにスーツケースが登場し、おじさんは着ぐるみを仕舞う。おじさんはスーツケースを引いて立ち去ろうとするが、警察官に呼び止められて職質を受ける。やっと職質から解放され、おじさんは帰宅する。ちゃぶ台の上に白米を盛ったお茶わんが一つ。おじさんはおかずなしで白米を食べる
「いやなに後半の人情パート」
うづめは一旦、動画を停止する
「ここから家賃の取り立てに来るヤクザとか。空き巣に来た泥棒とか。てんやわんやするんだけど、特に関係ないから飛ばすね」
「気になり過ぎて夜も眠れないけど」
「そんなに言うなら後で観て」
「でもこんなにコンパクトにまとまるなら邪魔にならないからいいじゃない」
「肝心のキャラクターだよな」
「うづめが調べたら
ディズニーのキャラクターほどに複雑だと百万は超えちゃうらしいね
ほぼ裸のほうが、後で衣装を作って着せられるからおすすめ」
「全裸で許されるのは人以外の動物だからな」
「剣の着ぐるみ作ってもらえば」
「皮に皮を被せるのかよ」
「勝手な偏見だ
ちゃんと出てるからな」
剣は制服のズボンとパンツを下ろす
「ほら見ろよ」
ガチャリと扉が開き、八子が入ってくる
「変態」
八子は扉を閉める
剣は慌ててパンツとズボンを履く
「いや誤解だって」
「なんか急に人間国宝見せてきたんですよ」
「いやあれは人間凄汁だろ」
八子は薄っすらと扉を開く
「空いてる部屋使っていい」
「あ、いいよ」
「ありがとう」
扉が閉まる。話し合いが再開される
「せっかくなら九州の動物はどうよ」
「うさぎとかたぬきとか」
「私、家の近くでテン見たよ」
「テンいいな」
「テンにしよう」
「まぁいいよ」
「やっと認めてくれた」
泉岳寺うづめ(センガクジウヅメ)、大葉慎之介(オオバシンノスケ)、三井斎夏(ミツイサナ)はジャムセッションをしていた
大橋剣(オオハシケン)は椅子に座り、その様子を退屈そうに眺める
弾き終えると、剣は不服だと訴える
「そろそろ俺にも叩かせろよ」
「やだ」
「慎之介もなんか言ってくれ」
「二人で叩けばいいだろう」
「その手があったか」
剣は椅子を斎夏の隣へ移動する
「俺が左手と左足でお前が右手と右足だ」
「私のスピードについて来れるかな」
「おうよ」
なぜか二人は一台のドラムを叩き始める
「「おんにょ、おんにょ、おんにょ、おんにょ」」
うづめは呟く
「阿修羅像だ」
◇
4人は互いが見えるように椅子を並べて座る
「お互いのフィーリングも合ってきたし
さぁてバンド名を発表します」
「考えてきてくれたんだ」
慎之介は巻物をばっと広げる
達筆な字で書かれたそれをうづめは読む
「売れてるバンドです」
「けっコミックバンド路線かよ」
剣は悪態をつく
コミックバンドとはロックにユーモアを足したようなバンドの事である
大抵はテンションが高くワチャワチャしていることからワチャ系とも呼ばれる
「いいじゃん
私結構好きだよ
ヤバTとかTHE 南無ズとか」
「普段ふざけているのにMCで真面目な話をすると目頭が熱くなる」
「わかる
こういうバンドに限って音楽の軸がしっかりしているんだよね」
慎之介と斎夏は語り始めた
うづめは話が長くなるなと遮った
「これぐらいインパクトないと
「売れてるバンド 日本武道館公演決定」みたいな」
「なんだそれ」
「ファーストアルバムは「世界進出」」
「いいねそれ
「売れてるバンド 世界進出」みたいな」
「何かの手違いで海外のフェスに呼ばれるかもじゃん」
「呼ばれねぇよ」
うづめは手を叩く
「はいはい。それじゃあオーディションの話しようか
真面目に最初は自分達の好きな曲やればいいんじゃない
持ち時間15分だし
ギリいけるでしょ」
「なら俺はマカロニえんぴつの「零色」」
「斉夏は石崎ひゅーいの「第三惑星交響曲」」
「 back numberの「最深部」」
「うづめはKANA-BOONの「みたくないもの」」
うづめはスマホで計算をする
「ざっと単純計算で14分48秒」
「間に合わねー」
「やっぱ「ワンドリンク別」でいいや」
「やっさしー」
◇
話は着ぐるみに移る
「ところで健君が着る着ぐるみのことなんだけど」
「俺は着ないぞ」
「いい加減諦めなよ」
「それがさ。レンタルだと1日2万くらいなんだって」
「ならやめとけ」
「円先生に相談したら
だいたい制作費が45万円なので
一旦、学校が購入して、2年間の分割払いはどうかって
部費の1万3千円に9千375円足して
2万2千375円だって」
「それだとバンドメンバー全員が支払うことになるけど」
「あー問題ないっしょ
いつも誰かが負担してたらトラブルになるし
バンド活動に掛かるお金は皆で負担する」
「意外と慎之介真面目だな」
「共産主義者なんで」
「だがしかし、俺は着ないぞ」
「えーなんで
着る流れだったのに」
「ちなみに使うとこんな感じだよ」
うづめはスマホで動画を再生する
可愛らしい着ぐるみが手を振っている。背中からチャックが開くと中年太りしたおじさんが出てくる。着ぐるみはどんどん小さくなり、完全に空気が抜けるとおじさんはそれを小さく畳み鞄にしまう。さらにスーツケースが登場し、おじさんは着ぐるみを仕舞う。おじさんはスーツケースを引いて立ち去ろうとするが、警察官に呼び止められて職質を受ける。やっと職質から解放され、おじさんは帰宅する。ちゃぶ台の上に白米を盛ったお茶わんが一つ。おじさんはおかずなしで白米を食べる
「いやなに後半の人情パート」
うづめは一旦、動画を停止する
「ここから家賃の取り立てに来るヤクザとか。空き巣に来た泥棒とか。てんやわんやするんだけど、特に関係ないから飛ばすね」
「気になり過ぎて夜も眠れないけど」
「そんなに言うなら後で観て」
「でもこんなにコンパクトにまとまるなら邪魔にならないからいいじゃない」
「肝心のキャラクターだよな」
「うづめが調べたら
ディズニーのキャラクターほどに複雑だと百万は超えちゃうらしいね
ほぼ裸のほうが、後で衣装を作って着せられるからおすすめ」
「全裸で許されるのは人以外の動物だからな」
「剣の着ぐるみ作ってもらえば」
「皮に皮を被せるのかよ」
「勝手な偏見だ
ちゃんと出てるからな」
剣は制服のズボンとパンツを下ろす
「ほら見ろよ」
ガチャリと扉が開き、八子が入ってくる
「変態」
八子は扉を閉める
剣は慌ててパンツとズボンを履く
「いや誤解だって」
「なんか急に人間国宝見せてきたんですよ」
「いやあれは人間凄汁だろ」
八子は薄っすらと扉を開く
「空いてる部屋使っていい」
「あ、いいよ」
「ありがとう」
扉が閉まる。話し合いが再開される
「せっかくなら九州の動物はどうよ」
「うさぎとかたぬきとか」
「私、家の近くでテン見たよ」
「テンいいな」
「テンにしよう」
「まぁいいよ」
「やっと認めてくれた」

