正しき者の杖を振れ2

翌日の放課後、軽音楽部1年生は初めて練習場所へ向かう
2・3年生は校内の練習室を使えるが1年生は校外の倉庫で練習することになる
部長の鶴美の案内の下、川沿いに建つ建物に向かった

「ここがお前達の練習場所だ」

鶴美は鍵を開け、引き戸を両手で滑らせる
しばらく使われていなかったからか砂塵が飛び交い鉄錆の匂いが広がる
鶴美がスイッチを押し照明を点けると、等間隔に並んだ防音室が現れる
増改築なしで作れる防音室だ。小型なものならば賃貸でも設置できる

「-1(マイナーファースト)みたいに大人数だと2部屋使うけど
お前達は一部屋で十分そうだな
まぁ全部使っても問題ないけど」

鶴美は部屋の前に立つ

「授業で使っているタブレットあるか
今日はまだ反映されてないけど
プロフィールから部活動名をタップすると軽音楽部のページに飛ぶ
暗証番号が書かれているからそれ入力すれば開く」

鶴美は全ての部屋を解錠し、椅子でドアが閉まらないようにする

「今日は必ず誰か一人部屋にいるようにしておけよ
うっかり全員外に出たら閉まるからな」
「「はい」」
「こっちだ」

鶴美はスチール製の棚の前に移動する

「ここは工具とエフェクター」

収納ボックスにラベルが貼ってあり、丁寧に何があるか分かるようになっている

「自由に使っていい
備品だから持ち帰りはなしな」

鶴美は反対側を指差す

「あと右の壁沿いにあるのは機材」

黒い布で覆われているのが機材なのだろう
近くにはフォークリフトと軽トラックが置いてある

「路上ライブとかしたくなったら使って
ここまででなにか質問ある?」

八子は手を挙げて質問する

「お手洗いとかは」
「裏手にある
あ、そうだ。誰でもいいからちゃんと掃除しておけよ
他に質問は?」

他に質問はないようだ
鶴美は机の上に鍵を置く

「練習室の鍵は顧問からもらって終わったら必ず返す事
じゃあ私は練習に戻る」
「ありがとうございました」

鶴美は校舎へ戻る