そんなかけがえのない日々を過ごしていく中で、啓太君に夢が見つかったって聞いた時は自分のことのように嬉しかった。


 夢物語が啓太君の未来への契機になって本当に良かった。


 啓太君にとって勇気が必要なことだったと思うけど、色々な想いを打ち明けてくれて、夢を宣言した時の啓太君は本当にかっこよかったよ。


 夢が先生だと聞いた時も何も心配することはなかった。


 啓太君は素晴らしい先生になれると、私の心が信じて疑わなかったから。


 〝心に寄り添える先生〟
 

 啓太君なら必ずなれるから、自信を持って頑張ってね。


 ずっと、ずっと応援してる。


 先生になるという啓太君の夢を聞いて、そして啓太君との夢物語を通して、私の中に焦がれる未来が思い浮かんだの。


 私は啓太君が受け持つクラスにいて、啓太君が教壇に立って授業する姿や、啓太君が黒板に文字を書き記す姿を眺めてた。


 これからも教壇に立つ啓太君をずっと見ていたいと思ったし、夢物語で幸せを感じていた啓太君の文字をこれからもずっと感じていたいと思ったの。


 幸せな未来を想像するなんて、私にとって初めてだった。


 その時、一筋の光が黒板の文字を照らしたの。


 私はその光が、私がこれから進むべき道しるべに見えてならなかった。


 これが私の〝夢〟なんだって。


 啓太君、啓太君がしてくれたように、私もこの夢物語で叶えたい未来を宣言させてください。


 私の夢は


 『黒板に住む』ことです。


 ただ、もちろんどの黒板でもいいわけじゃないよ。


 啓太君が受け持つクラスの黒板に住むこと。


 これが、私がこの夢物語で見つけた答えです。


 この夢は啓太君が先生になるという夢を叶えてからでないと望むことができなかったから、啓太君に夢を叶えてからこの夢物語を読むようお願いしたの。


 待たせてしまって本当にごめんね。


 黒板に住むことで、啓太君が授業している姿や児童たちと成長していく姿を側で見続けることができるし、何より私が大好きな啓太君の文字をずっと感じることができると思ったの。


 それが私の望む未来で、何より幸せなことだと思った。


 私は未来なんて見てはいけない、未来に期待することなんて何もないと思ってたから、こうして夢を持つことができたのは全部啓太君と出会えたおかげです。


 本当に感謝してもしきれません。


 啓太君は私にとって、白黒だった日常を彩ってくれて、温かい優しさで心に平穏をもたらしてくれるような存在でした。


 啓太君は太陽というよりも、夕陽のように優しく包み込んでくれるような存在で、そんな啓太君が私は大好きです。


 まだまだ伝えたいことはあるけど、さすがに長くなりすぎたから最後に改めて感謝を伝えさせてください。


 啓太君、私と出会ってくれてありがとう。
 

 私にとって初めての交換日記を一緒にしてくれてありがとう。


 友達と遊ぶことの楽しさ、素晴らしさを教えてくれてありがとう。


 初めての花火を一緒に見てくれてありがとう。


 人を好きになる気持ち、恋の素敵さを教えてくれてありがとう。


 何もなかった未来に光を照らしてくれて、希望を与えてくれて、夢を持たせてくれてありがとう。


 言葉では伝えきれないぐらい、たくさんたくさんありがとう。


 最後に


 〝啓太君の未来が、この先ずっと幸せでありますように〟

               

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 読んでいる途中から涙が溢れていたが、メガネを外すことを忘れるぐらい夢物語の内容に一心になっていた。
 静かに夢物語を閉じて、もう一度優しくノートを抱きしめる。
 届いたよ、ふみちゃんの想い。
 僕の想いも文字にして届けるから、黒板で待っててね。

 「ありがとう、ふみちゃん」

 涙を拭って空を見上げると、出会ったあの日のように、いつの間にか空は綺麗な夕焼けに包まれていた。