そんな大学生活の数々の思い出が色づいていく中で、僕は夢を叶えるための第一関門である小学校教諭免許状を無事に取得でき、いよいよ運命の教員採用試験の受験の日を迎えた。
 その日は色々なプレッシャーが重なり、緊張感で押し潰されそうになっていた。
 そんな僕を救ってくれたのは、やはりふみちゃんの存在であった。
 彼女に先生になりたいと打ち明けた日にもらった言葉が脳裏を駆け巡り、彼女と約束した夢を叶えるべく全力で努力した日々を思い出したことで、僕は徐々に落ち着きを取り戻し始めて試験に挑むことができたのだ。
 その結果、僕は思い描き続けた夢をこの手に掴むことができた。
 合格を知った日はもちろん努力が報われた嬉しさもあったが、それよりもふみちゃんと約束した夢を叶えることができた喜びと安堵のほうが大きかった。
 それから側で支えてくれた大切な二人に合格したことを報告すると、二人とも涙を流して喜んでくれた。
 その時は、僕も溢れ出るものを止めることができなかった。
 この夢を一番近くで見守り続けてくれて、応援してくれた二人には本当に感謝しかない。

 その二人もしっかりと、自分の目標を掴み取っていた。
 としは夢であったスポーツ関係の会社から内定をもらっており、立花さんは実業団のバレーボールチームに入団することが決まっていたのだ。
 二人とも目標を見失わずに努力していたので、僕は疑うことなく信じることができたが、二人がよく口を揃えて言うのは、やはり頑張れる源はふみちゃんの存在が大きかったということだ。
 
 三人の目標を達成できたお祝いがまだできていなかったので、支えてくれたふみちゃんも一緒にお祝いしようと、今日この思い出の場所に集まる約束をしていた。
 今日はそれぞれ大学の卒業式があるので、夜に集まろうと約束をしているのだが、集まる前に僕はどうしてもするべきことがあって、集合時間より早くこのベンチに座っている。
 
 「よし、読もう」

 大切すぎて覚悟が決まらずに時間がかかってしまったが、僕はようやく鞄の中から目的の物を取り出すことができた。
 一冊のノートが、再びこの地に姿を現す。

 「待たせてごめんね、ふみちゃん」

 僕はそう呟いて、夢を叶えてから読むと約束した夢物語を抱きしめた。
 もう一度ふみちゃんの文字に触れ、彼女の想いを感じることができると思うと、緊張感が増してきて体が震えた。
 一度大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 「大切に読ませてもらうね」

 そう呟いて、僕はゆっくりと夢物語のページを捲った。