『第二十六回 夢物語』
数日前、学校で進路希望調査があったんだけど、僕は紙に何も書くことができなかった。
でも実際は、心の中で思いを馳せていた未来があって。
今回の夢物語はその未来への契機となる、僕が誰にも言えないで胸の奥にしまい込んでいたことを書こうと思う。
小学校時代に遡るんだけど、小学校でもクラスメイトとあまり馴染めずに独りでいることが多かったんだよね。
そんな時、僕のことをいつも気にかけてくれる一人の先生に出会ったんだ。
その先生は小学四年の時の担任の先生なんだけど、先生がしてくれたことで何よりも嬉しかったことがあって。
それは、僕の心に寄り添ってくれたことなんだ。
先生の本心では僕を心配してよく話しかけてくれていたと思うんだけど、そう汲み取られないように話す内容は他愛のない話をしてくれたり、僕と話す時には必ず他のクラスメイトがいないところで話しかけてくれてたんだよね。
他にも心配してくれる先生はいて感謝もしてるんだけど、僕は他のクラスメイトがいるところで話しかけられるのがより孤独を感じて辛くて。
だから余計にその先生の気遣い、思いやりが嬉しくて心に響いたんだ。
僕も先生のように、相手の立場になって思いやれる人になりたいと心から思った。
それと同時に新しく芽生えた感情があって。
先生が僕の心を和らげてくれたように、僕も同じように悩んでいる児童の心の拠り所となるような〝先生〟になりたいと思ったんだ。
だけど、その憧れが夢へと成長することはなくて。
小学校を卒業して中学校に入ると、自分のコミュニケーション能力の欠如がさらに浮き彫りになって、性格的に先生になることは無理だと諦めてしまったんだ。
自ずと憧れは、胸の奥の奥のほうへと沈んでいってしまったんだよね。
ただ、高校二年の春にふみちゃんと出会い、夢物語という未来について真剣に考えるきっかけができたことで、その憧れがちらほら顔を覗かせ始めたんだ。
そして、自分の気持ちに真っ直ぐなとし、再び心から尊敬できる高校の担任の先生との出会いに感化されて、とうとう夢への階段を登り始めることができた。
でも、やっぱり自分に自信がなくて…階段の途中で何回も足踏みしてしまい、なかなか頂上にたどり着けないでいるんだよね。
そんな情けない自分を変えたくて、今回初めてこのことを他の誰でもないふみちゃんに伝えてみようと思ったんだ。
ねぇ、ふみちゃん。
先生になることを〝憧れ〟から〝夢〟へと羽ばたかせてもいいだろうか。
何か決断を委ねるようで、変なプレッシャーをかけちゃってごめんね。
本当にふみちゃんの心のままに、正直な気持ちを聞かせてくれれば大丈夫だから。
ごめん、また長々と。
〝ふみちゃんの夢が見つかりますように〟

