それからは、全体練習が終わるまでの間ずっとグラウンドの外周を走っていた。
全体練習が終わると、残って自主練をする数人以外は自分のグローブやバットを抱えて部室に向かって帰っていく。
練習中の緊張感から解放され、帰り道に何を買い食いするかとか、今日の練習で上手くいったことを楽しそうに喋っているチームメイトたちを見ながら、バックネット裏のベンチに座っている黒谷に話しかけた。
「なぁ、黒谷」
「はい」
ベンチに座って帰り支度をしていた黒谷が、オレをゆっくりと見上げる。
「あのさ」
言いたいことは山ほどあるのに、いざ話そうとすると何から言い出せば良いのかと、口ごもってしまう。
「……さっきはすみませんでした」
オレが喋り出す前に黒谷が謝ってきた。
黒谷から謝ってくるなんて珍しい。
そう思った瞬間、オレを見上げていた黒谷の視線は、黒谷が手に持っているグローブに向いた。
「小野寺先輩がブルペンを出て行ってから、河西先輩に怒られました。ほんとすみませんでした」
謝りながらグローブについた土を払う姿を見て、とりあえず謝罪の言葉を言っただけなんだってすぐに分かった。
「絶対ごめんって思ってないじゃん」
「思ってますよ」
食い気味に返事をしてくる黒谷の態度を見ると、ブルペンでの怒りがぶり返してくる。
「……お前さ、なんで雄太郎なわけ?しかも、なんで練習中にまで恋愛ぶち込んでくんの?」
先輩として、圧をかけすぎたらダメだって頭ではわかっているのに、じりじりと込み上げてくる苛立ちが声に乗ってしまう。
「…………時間、ないじゃないですか」
黒谷はグローブの手入れをする手を止めて、小さな声で呟いた。
「時間?」
「そうです。時間です、時間。どうせ、ずーっと河西先輩の側にいる小野寺先輩にはわからない感覚ですよ」
相変わらずオレの方を見ようともしない黒谷は、ふんっと鼻から息を吐いた。
「あ……そうだ。河西先輩と僕が恋人になれるように見守っててくれませんか?」
良いアイデアだと思ったのか、黒谷はパッと顔を上げた。
「えっ、やだよ」
考えるよりも先に言葉が出ていた。
「なんでですか?小野寺先輩って、河西先輩のただの幼馴染ですよね?」
「そうかもけど!嫌なもんは嫌なんだよ」
ただの幼馴染。
そう言われた瞬間、幼馴染なんて何も特別な存在じゃないって言われたような気がして、胸にチクッとした痛みが走った。
「あ、わかった。僕っていうのが気に入らないんでしょ」
「は?そういうことじゃない。大体、そんなこと一言も言ってないだろ」
別に黒谷のことは嫌いってわけじゃない。
生意気な奴ではあるけど、1年の頃から試合を任されるくらい、目標に向かってまっすぐに突き進んでいける凄い奴だって最近までは思っていた。
「じゃ、何が気に食わないんですか。別に友達なんだったら、河西先輩が誰と付き合おうと応援するもんじゃないんですか」
「そうかもだけど。本能的に嫌というか、なんていうか。あるだろ、そういうの。勘だよ勘」
だって、咄嗟に嫌だと思ったのは、黒谷という存在に対してじゃなかったからだ。
雄太郎に『恋人』なんかできて欲しくないって思った。
恋人がどれだけ完全無欠な人間でも、男だろうが、女だろうが、誰かが雄太郎にとっての特別になるなんて何か嫌だ。
「なっ……なにそれ。そんな馬鹿みたいな理屈」
「は?馬鹿って、お前、先輩に向かって」
馬鹿であることは否定できないけど、無茶苦茶なことをしている黒谷に言われたくない。
「だって本当じゃないですかっ。いやいやばっか言って理由も言わないし!僕は……僕は、河西先輩のことが本気で好きなんですよ!」
さっきまでベンチに座っていた黒谷が勢いよく立ち上がった。
「僕の気持ちなんか、これまでずっと一緒にいて、寮まで同じ部屋の小野寺先輩には生まれ変わってもわかんないですよ!!」
オレよりも背の低い黒谷が下から強く睨んでくる。
「全国大会に出られなかったら!!……河西先輩は7月にはもう……引退してしまいます。全国大会に出られたとしても8月には終わりじゃないですか」
オレを強く睨みつけていた黒谷の勢いが急に弱まった。
「自分がどれだけ無茶苦茶なことしてるかってことぐらい分かってます。でも、河西先輩と一緒に野球をできる時間は、あとちょっとしかないんですよ。っ、だから……1球でも多く好きな人にボールを受けてもらいたいって思うのはいけないことですか」
「それは……」
黒谷が強引に割り込んでくる理由を聞かされたら、オレでもそうするかもしれないな……と納得してしまった。
さっきまでオレを勢いよく睨みつけていた黒谷の目には、うっすらと涙が浮かんできている。
「好きな人と同じ部活で、練習がキツいのも、勝って嬉しいのも、負けて悔しいのも、全部一緒に経験できるって……こんな幸せなことないじゃないですか……。ずっと、小野寺先輩は河西先輩とそんな経験を共有してきたんでしょ?だったらもう……好きじゃないなら、僕にそのポジション譲ってくれませんか」
黒谷は絶対にオレの前では泣きたくないのか、涙が溢れ落ちないように堪えている。
「…………それでも嫌だ。ごめん」
黒谷の好きな相手が雄太郎じゃなかったら、応援してあげられたと思う。
「なんでっ!……っ、小野寺先輩は河西先輩のこと、幼馴染以上に何も思ってないんでしょ?恋愛的な好きじゃないんでしょ!それなら僕が恋人の候補に名乗り出るくらい邪魔しないでくださいよ!!」
黒谷の言う通りだ。
今のオレは矛盾の塊でしかない。
練習の邪魔をされたくないなら、黒谷の恋を応援してやれば良いだけなのに。
「それでも、黒谷のことは応援できない。雄太郎と仲良くなろうとするのは自由かもしれないけど、オレだって雄太郎と一緒にいたい。遊びに行きたいし、部屋でくだらない話をしてゲラゲラ笑って、寮のご飯も野球の話とかしながら食いたい。それに……」
黒谷が雄太郎と野球できるのは今年が最後だというのなら、オレだってそうだ。
進路が決まっていない以上、野球を続けられるのかもわからないし、続けられたとしても雄太郎と同じチームになれる保証なんてない。
だから雄太郎と野球できるのは、あと2〜3か月かもしれない。
それならオレだって、1球でも多く雄太郎とバッテリーを組んでいたい。
「練習中、オレと雄太郎との間に割り込もうとしてきたら多分……また怒る」
「なっ……」
黒谷は一瞬、目をぱっと大きく開いて、すぐにオレをジッと見上げた。
「河西先輩と恋人になるのも、バッテリーを組むのも、きっと僕の方がふさわしいです。僕の方が、河西先輩のプレースタイル近いし、絶対に上手く合わせていけると思うんですけど」
「何で野球と恋愛が一緒になるんだよ」
「一緒ですよ!結局、バッテリーなんか相性でしょ」
黒谷の口調が徐々に強くなってくる。
「そもそも小野寺先輩は……小野寺先輩はいつも力任せなプレーばっかりで、河西先輩にいっつも苦労かけてますよね?」
「は……?何でそんなこと黒谷に言われなきゃなんねーの?お前が雄太郎を好きなことと、オレの野球と何の関係があんだよ」
落ち着き始めていたはずの怒りが、どろりと身体中に蘇ってくる。
「だってピッチャーのくせに考えること放棄して、全部河西先輩任せにして、勢いだけで投げてますよね。そんなの河西先輩にとって負担でしかない。……小野寺先輩なんて、河西先輩がいなかったら一人で野球できないじゃないですか!!」
「お前なあ。自分が速い球投げられないからって適当なこと言ってんじゃねーよ!」
「なっ、誰がそんなこと。僕が言ってるのは事実です」
「はあ?どこが事実だよ。雄太郎のことも何にも知らねーくせに、知ったようなこと言うな」
黒谷煽られて、自分まで喧嘩腰になってしまう。
「大体なあ、雄太郎だってお前みたいなネチネチ嫌味言う奴なんか恋人にしたくねーよ!」
周りに居残り練習しているチームメイトがこっちを気にしているだとか、高校生活に悔いが残らないように黒谷と冷静に話そうとか、もうそんなのどうでも良くなってきた。
自主練をしていたキャプテンの林がこっちに向かって走って来ているのが見えたけど、もうそんなことすらどうでもいい。
「おいおいおい、何してんの、お前ら」
駆け寄ってきた林がオレと黒谷の間に割り込んできた。
「……何もないです」
黒谷が俯いて、不貞腐れた返事をする。
「は?お前が先に喧嘩ふっかけてきたんだろ。なぁーにが、なんもないだよ」
オレは黒谷の態度が気に入らなくて、黒谷の帽子のつばをグイッと勢いよく引っ張ってやった。
「うわぁっ、やめっ……」
帽子を引っ張られて体勢を崩した黒谷がよろよろと前後に動く。
「おい!太陽。やめろっ」
林がよろめいた黒谷を受け止めながら言った。
「なんでオレだけなんだよっ」
「どう見ても、今のはお前が悪いだろ。それに軽くでも手出してんだから、悪いのは悪いだろ」
「でも喧嘩売ってきたのは黒谷なんだって」
オレの前に立ち、話も聞かずに黒谷を庇おうとする林に腹が立つ。
何でオレだけが悪いみたいな雰囲気になってるんだよ。
「おーい!!誰か、雄太郎呼んできてくれ」
林が近くにいた1年に声をかけた。
頼まれた1年は「はいっ」と慌てて返事をして、パタパタと部室に走って行った。
全体練習が終わると、残って自主練をする数人以外は自分のグローブやバットを抱えて部室に向かって帰っていく。
練習中の緊張感から解放され、帰り道に何を買い食いするかとか、今日の練習で上手くいったことを楽しそうに喋っているチームメイトたちを見ながら、バックネット裏のベンチに座っている黒谷に話しかけた。
「なぁ、黒谷」
「はい」
ベンチに座って帰り支度をしていた黒谷が、オレをゆっくりと見上げる。
「あのさ」
言いたいことは山ほどあるのに、いざ話そうとすると何から言い出せば良いのかと、口ごもってしまう。
「……さっきはすみませんでした」
オレが喋り出す前に黒谷が謝ってきた。
黒谷から謝ってくるなんて珍しい。
そう思った瞬間、オレを見上げていた黒谷の視線は、黒谷が手に持っているグローブに向いた。
「小野寺先輩がブルペンを出て行ってから、河西先輩に怒られました。ほんとすみませんでした」
謝りながらグローブについた土を払う姿を見て、とりあえず謝罪の言葉を言っただけなんだってすぐに分かった。
「絶対ごめんって思ってないじゃん」
「思ってますよ」
食い気味に返事をしてくる黒谷の態度を見ると、ブルペンでの怒りがぶり返してくる。
「……お前さ、なんで雄太郎なわけ?しかも、なんで練習中にまで恋愛ぶち込んでくんの?」
先輩として、圧をかけすぎたらダメだって頭ではわかっているのに、じりじりと込み上げてくる苛立ちが声に乗ってしまう。
「…………時間、ないじゃないですか」
黒谷はグローブの手入れをする手を止めて、小さな声で呟いた。
「時間?」
「そうです。時間です、時間。どうせ、ずーっと河西先輩の側にいる小野寺先輩にはわからない感覚ですよ」
相変わらずオレの方を見ようともしない黒谷は、ふんっと鼻から息を吐いた。
「あ……そうだ。河西先輩と僕が恋人になれるように見守っててくれませんか?」
良いアイデアだと思ったのか、黒谷はパッと顔を上げた。
「えっ、やだよ」
考えるよりも先に言葉が出ていた。
「なんでですか?小野寺先輩って、河西先輩のただの幼馴染ですよね?」
「そうかもけど!嫌なもんは嫌なんだよ」
ただの幼馴染。
そう言われた瞬間、幼馴染なんて何も特別な存在じゃないって言われたような気がして、胸にチクッとした痛みが走った。
「あ、わかった。僕っていうのが気に入らないんでしょ」
「は?そういうことじゃない。大体、そんなこと一言も言ってないだろ」
別に黒谷のことは嫌いってわけじゃない。
生意気な奴ではあるけど、1年の頃から試合を任されるくらい、目標に向かってまっすぐに突き進んでいける凄い奴だって最近までは思っていた。
「じゃ、何が気に食わないんですか。別に友達なんだったら、河西先輩が誰と付き合おうと応援するもんじゃないんですか」
「そうかもだけど。本能的に嫌というか、なんていうか。あるだろ、そういうの。勘だよ勘」
だって、咄嗟に嫌だと思ったのは、黒谷という存在に対してじゃなかったからだ。
雄太郎に『恋人』なんかできて欲しくないって思った。
恋人がどれだけ完全無欠な人間でも、男だろうが、女だろうが、誰かが雄太郎にとっての特別になるなんて何か嫌だ。
「なっ……なにそれ。そんな馬鹿みたいな理屈」
「は?馬鹿って、お前、先輩に向かって」
馬鹿であることは否定できないけど、無茶苦茶なことをしている黒谷に言われたくない。
「だって本当じゃないですかっ。いやいやばっか言って理由も言わないし!僕は……僕は、河西先輩のことが本気で好きなんですよ!」
さっきまでベンチに座っていた黒谷が勢いよく立ち上がった。
「僕の気持ちなんか、これまでずっと一緒にいて、寮まで同じ部屋の小野寺先輩には生まれ変わってもわかんないですよ!!」
オレよりも背の低い黒谷が下から強く睨んでくる。
「全国大会に出られなかったら!!……河西先輩は7月にはもう……引退してしまいます。全国大会に出られたとしても8月には終わりじゃないですか」
オレを強く睨みつけていた黒谷の勢いが急に弱まった。
「自分がどれだけ無茶苦茶なことしてるかってことぐらい分かってます。でも、河西先輩と一緒に野球をできる時間は、あとちょっとしかないんですよ。っ、だから……1球でも多く好きな人にボールを受けてもらいたいって思うのはいけないことですか」
「それは……」
黒谷が強引に割り込んでくる理由を聞かされたら、オレでもそうするかもしれないな……と納得してしまった。
さっきまでオレを勢いよく睨みつけていた黒谷の目には、うっすらと涙が浮かんできている。
「好きな人と同じ部活で、練習がキツいのも、勝って嬉しいのも、負けて悔しいのも、全部一緒に経験できるって……こんな幸せなことないじゃないですか……。ずっと、小野寺先輩は河西先輩とそんな経験を共有してきたんでしょ?だったらもう……好きじゃないなら、僕にそのポジション譲ってくれませんか」
黒谷は絶対にオレの前では泣きたくないのか、涙が溢れ落ちないように堪えている。
「…………それでも嫌だ。ごめん」
黒谷の好きな相手が雄太郎じゃなかったら、応援してあげられたと思う。
「なんでっ!……っ、小野寺先輩は河西先輩のこと、幼馴染以上に何も思ってないんでしょ?恋愛的な好きじゃないんでしょ!それなら僕が恋人の候補に名乗り出るくらい邪魔しないでくださいよ!!」
黒谷の言う通りだ。
今のオレは矛盾の塊でしかない。
練習の邪魔をされたくないなら、黒谷の恋を応援してやれば良いだけなのに。
「それでも、黒谷のことは応援できない。雄太郎と仲良くなろうとするのは自由かもしれないけど、オレだって雄太郎と一緒にいたい。遊びに行きたいし、部屋でくだらない話をしてゲラゲラ笑って、寮のご飯も野球の話とかしながら食いたい。それに……」
黒谷が雄太郎と野球できるのは今年が最後だというのなら、オレだってそうだ。
進路が決まっていない以上、野球を続けられるのかもわからないし、続けられたとしても雄太郎と同じチームになれる保証なんてない。
だから雄太郎と野球できるのは、あと2〜3か月かもしれない。
それならオレだって、1球でも多く雄太郎とバッテリーを組んでいたい。
「練習中、オレと雄太郎との間に割り込もうとしてきたら多分……また怒る」
「なっ……」
黒谷は一瞬、目をぱっと大きく開いて、すぐにオレをジッと見上げた。
「河西先輩と恋人になるのも、バッテリーを組むのも、きっと僕の方がふさわしいです。僕の方が、河西先輩のプレースタイル近いし、絶対に上手く合わせていけると思うんですけど」
「何で野球と恋愛が一緒になるんだよ」
「一緒ですよ!結局、バッテリーなんか相性でしょ」
黒谷の口調が徐々に強くなってくる。
「そもそも小野寺先輩は……小野寺先輩はいつも力任せなプレーばっかりで、河西先輩にいっつも苦労かけてますよね?」
「は……?何でそんなこと黒谷に言われなきゃなんねーの?お前が雄太郎を好きなことと、オレの野球と何の関係があんだよ」
落ち着き始めていたはずの怒りが、どろりと身体中に蘇ってくる。
「だってピッチャーのくせに考えること放棄して、全部河西先輩任せにして、勢いだけで投げてますよね。そんなの河西先輩にとって負担でしかない。……小野寺先輩なんて、河西先輩がいなかったら一人で野球できないじゃないですか!!」
「お前なあ。自分が速い球投げられないからって適当なこと言ってんじゃねーよ!」
「なっ、誰がそんなこと。僕が言ってるのは事実です」
「はあ?どこが事実だよ。雄太郎のことも何にも知らねーくせに、知ったようなこと言うな」
黒谷煽られて、自分まで喧嘩腰になってしまう。
「大体なあ、雄太郎だってお前みたいなネチネチ嫌味言う奴なんか恋人にしたくねーよ!」
周りに居残り練習しているチームメイトがこっちを気にしているだとか、高校生活に悔いが残らないように黒谷と冷静に話そうとか、もうそんなのどうでも良くなってきた。
自主練をしていたキャプテンの林がこっちに向かって走って来ているのが見えたけど、もうそんなことすらどうでもいい。
「おいおいおい、何してんの、お前ら」
駆け寄ってきた林がオレと黒谷の間に割り込んできた。
「……何もないです」
黒谷が俯いて、不貞腐れた返事をする。
「は?お前が先に喧嘩ふっかけてきたんだろ。なぁーにが、なんもないだよ」
オレは黒谷の態度が気に入らなくて、黒谷の帽子のつばをグイッと勢いよく引っ張ってやった。
「うわぁっ、やめっ……」
帽子を引っ張られて体勢を崩した黒谷がよろよろと前後に動く。
「おい!太陽。やめろっ」
林がよろめいた黒谷を受け止めながら言った。
「なんでオレだけなんだよっ」
「どう見ても、今のはお前が悪いだろ。それに軽くでも手出してんだから、悪いのは悪いだろ」
「でも喧嘩売ってきたのは黒谷なんだって」
オレの前に立ち、話も聞かずに黒谷を庇おうとする林に腹が立つ。
何でオレだけが悪いみたいな雰囲気になってるんだよ。
「おーい!!誰か、雄太郎呼んできてくれ」
林が近くにいた1年に声をかけた。
頼まれた1年は「はいっ」と慌てて返事をして、パタパタと部室に走って行った。



