次の日の朝、練習のためにグラウンドに行くとグラウンドの手前で黒谷が立っていた。
「おはようございます。小野寺先輩」
カラッと晴れた空と同じくらい、爽やかな挨拶だった。
「おはよ、黒谷」
目の前に立つ黒谷はキリッと帽子を被り、真っ白な野球のユニホームをきっちりと着こなしている。
そんな黒谷の姿を見ると、こんな涼しそうな顔してるけど昨日雄太郎に告白してたんだよなぁ、と変な感じがした。
「小野寺先輩。昨日、僕が河西先輩に告白していたところに居ましたよね」
黒谷からの質問のストレートさに胸が嫌な音を立てた。
「え……なんで?」
盗み聞きがバレていたことにも驚いたが、雄太郎に告白したことを隠さずに言い切ったことにも驚いてしまう。
「小野寺先輩がこそこそ寮に戻る姿、見えてました」
「えっ、うそ!?」
思わず大きな声が出た。
オレの大声を聞いたチームメイトが、不思議そうな顔をして何人か振り向いた。
「えと、あの。ごめんっ。雄太郎が何の本借りてんのかなって気になっただけで……ほんっとにごめん」
手の平同士をパンっと顔の前で合わせて謝る。
告白現場を見てやろうとか、そんな気は一切なかった。
ただ、雄太郎が借りている本が気になって、あわよくば2人の前に登場してやろうくらいにしか思っていなかったんだ。
でも、結果的に黒谷の告白を盗み聞きしていたことに変わりない。
昨日は雄太郎が男に告白されてるという事で頭がいっぱいになっていたけど、黒谷の立場になって考えると告白を盗み聞きされていたなんて、どう考えても最悪の気分だろう。
「……やっぱり」
はあ、と黒谷はため息をついた。
黒谷は何も言わずに帽子をかぶり直している。
1秒、1秒、互いに話さない時間が積もっていく。
沈黙が続くこの時間は、今朝の春らしいさっぱりとした空気とは反対に、じっとりと蒸されているようで居心地が悪い。
「……僕、河西先輩のことも、ピッチャーのポジションも、どちらも小野寺先輩に譲りませんから。奪われる覚悟、しておいてくださいね」
ようやく喋り出した黒谷は、オレの目をまっすぐ見ながら、はっきりと言った。
普段、変化球を自由自在に使って相手打者を翻弄している奴とは思えないほど、まっすぐ。
「え?」
「じゃ、それだけなんで」
睨みつけるようにオレをギュっと見上げた黒谷は、くるっと身体の向きを変えてグラウンドへ走っていってしまった。
「おはようございます。小野寺先輩」
カラッと晴れた空と同じくらい、爽やかな挨拶だった。
「おはよ、黒谷」
目の前に立つ黒谷はキリッと帽子を被り、真っ白な野球のユニホームをきっちりと着こなしている。
そんな黒谷の姿を見ると、こんな涼しそうな顔してるけど昨日雄太郎に告白してたんだよなぁ、と変な感じがした。
「小野寺先輩。昨日、僕が河西先輩に告白していたところに居ましたよね」
黒谷からの質問のストレートさに胸が嫌な音を立てた。
「え……なんで?」
盗み聞きがバレていたことにも驚いたが、雄太郎に告白したことを隠さずに言い切ったことにも驚いてしまう。
「小野寺先輩がこそこそ寮に戻る姿、見えてました」
「えっ、うそ!?」
思わず大きな声が出た。
オレの大声を聞いたチームメイトが、不思議そうな顔をして何人か振り向いた。
「えと、あの。ごめんっ。雄太郎が何の本借りてんのかなって気になっただけで……ほんっとにごめん」
手の平同士をパンっと顔の前で合わせて謝る。
告白現場を見てやろうとか、そんな気は一切なかった。
ただ、雄太郎が借りている本が気になって、あわよくば2人の前に登場してやろうくらいにしか思っていなかったんだ。
でも、結果的に黒谷の告白を盗み聞きしていたことに変わりない。
昨日は雄太郎が男に告白されてるという事で頭がいっぱいになっていたけど、黒谷の立場になって考えると告白を盗み聞きされていたなんて、どう考えても最悪の気分だろう。
「……やっぱり」
はあ、と黒谷はため息をついた。
黒谷は何も言わずに帽子をかぶり直している。
1秒、1秒、互いに話さない時間が積もっていく。
沈黙が続くこの時間は、今朝の春らしいさっぱりとした空気とは反対に、じっとりと蒸されているようで居心地が悪い。
「……僕、河西先輩のことも、ピッチャーのポジションも、どちらも小野寺先輩に譲りませんから。奪われる覚悟、しておいてくださいね」
ようやく喋り出した黒谷は、オレの目をまっすぐ見ながら、はっきりと言った。
普段、変化球を自由自在に使って相手打者を翻弄している奴とは思えないほど、まっすぐ。
「え?」
「じゃ、それだけなんで」
睨みつけるようにオレをギュっと見上げた黒谷は、くるっと身体の向きを変えてグラウンドへ走っていってしまった。



