これって部内恋愛ですか

 食堂へ行くと、肉野菜炒めと味噌汁、白米の良い香りと、寮生たちの楽しそうな話し声が聞こえてきた。

食堂内をキョロキョロと見回してみると、食堂の端っこの席に座る黒谷と、その黒谷の前に立つ雄太郎を見つけた。

何かを話しているようだけど、距離が離れていて聞き取れそうにない。

さっそく雄太郎から本を受け取った黒谷は、どこかを指差した。

(ん?なんだ?)

黒谷が指差す方向を見た雄太郎は頷き、そのまま2人は食堂で飯を食うこともなくあっさりと出て行ってしまった。

(え、出てったんだけど……)

食堂を出ていかれたら、偶然を装って近づくことはできない。

腹はペコペコだし、今すぐ大盛りの白米に肉野菜炒めバウンドさせて食べたい。

だけど、どうしても2人がどこに行ったのか気になる。

数秒目を瞑って悩んでみたけど、オレの空腹は好奇心にあっさり負けた。

良くないとは思いつつ、雄太郎と黒谷の後をこっそりとついていくことにした。


 バレないよう出来る限り慎重に、自分の影の位置まで気にしながら雄太郎と黒谷の跡を追う。

2人が玄関を出て、寮の門付近まで歩いて行くのを見ると、オレも素早く玄関を出て、玄関のドアを静かに閉めた。

「さむぅっ」

もうすぐ桜が咲くとはいえ、日が暮れると気温が下がる。

外に出るつもりじゃなかったから、長ズボンのジャージにロングTシャツ1枚という薄着で外に出てきてしまった。

腕を組んで肌寒さに耐えながら、寮の門の外に立って話す2人の声が聞こえるくらいまでゆっくりと近づいていく。

「……河西先輩」

黒谷が雄太郎の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「あの……漫画……どう、でしたか?」

黒谷はなにか緊張しているのだろうか。

いつもは何かとオレに突っかかってくるくせに、雄太郎相手だと何だかしおらしい。

「んー、男同士のっていうのは初めて読んだけど、面白かったよ」

「む、無理だなとか、思ったり……しませんでしたか」

「まあな。そういう恋愛も普通にあるだろって思ってるし」

雄太郎と黒谷のギクシャクとした会話が聞こえてくる。

(男同士のって……あっ、男同士の恋愛漫画だったからコソコソと借りてたのか、雄太郎は)

雄太郎たちの会話を聞きしながら、ふと、部屋での会話を思い出す。

雄太郎が恋愛漫画を読むこと自体そもそも珍しい。

それなのに、男同士の恋愛ものを夜中にこっそりと読んでいたなんて、想像するとなんだか可笑しくなってきた。

(ユウちゃん、実は男が好きだったりしてな)

もし、そうだったら、雄太郎を見て目をキラキラさせている女の子たちは悔しがりそうだ。


「あのっ」

黒谷の少しひっくり返った声が聞こえて、思わず肩がビクっと跳ねた。

盗み聞きしているだけでも胸がドキドキするのに、黒谷のやたら緊張した声のせいで、余計に緊張してきた。