18時ごろにグラウンドを出発した野球部のバスは、19時過ぎになって、やっと学校の寮に到着した。
ただでさえ身体は疲労で重たくなっているのに、重たいリュックサックを背負ってバスから降りると、そのまま地面に埋まってしまいそうだ。
「はあ〜、疲れた」
オレと雄太郎の名字が書かれた部屋のドアを開け、電気をつける。
幼馴染である雄太郎がルームメイトだからか、部屋に入ると実家に帰ってきたようでホッとする。
「ユウちゃん、風呂と飯どっちからにするー?」
二段ベッドの近くにリュックサックやグローブをドサっと置き、後から入ってきた雄太郎に話しかける。
この寮は野球部以外も暮らしているから、定められた時間の中であれば長風呂をしても、夜遅くにご飯を食べても問題はないのだ。
「んー、先行ってて。俺用事あるから後で行くわ」
いつも風呂に入るのも、食堂で飯を食うのも一緒なのに、全て別行動というのは珍しい。
「そうなん。待っておこうか」
「いや、いいよ。何時になるかわかんないし」
「そっか。じゃ、オレ、腹減ったから先に飯食ってから風呂入るな」
「うん。悪いな」
今日は反省点が多い試合だったから、雄太郎と晩飯を食べながら話したかった。
だけど、空腹を知らせる腹の音が止まらなくて、仕方なくひとりで晩ご飯を食べることにした。
コンコン。
食堂に行ったついでに風呂にも行けるように、着替えを準備していた時だった。
「はーい?」
「俺ー、林ー。開けていい?」
部屋の外から林の声が聞こえた。
「あ、いたいた。河西ー。黒谷がお前のこと食堂で探してたぞ」
「ん?黒谷?」
雄太郎が返事をするよりも先に、オレは林に返事をしていた。
「ああ、うん。黒谷」
林が驚いて返事をする。
「雄太郎、黒谷となんかあったの?」
「ん、別に。太陽が心配するようなことじゃない」
雄太郎は驚きもせず、二段ベッドの梯子を半分くらい登って、ベッドの上をゴソゴソと探している。
「知ってたのか。黒谷、ひとりでボーッと食堂で座ってたからさ」
「そうか、すぐ行く。ありがとな、林」
雄太郎は体を捻って振り返り、林に礼を言った。
「おう、なんか黒谷の様子が気になって言いに来ただけだから。早めに行ってやれよ」
林は爽やかな笑顔を浮かべてそう言うと、部屋を出て行った。
「用事ってなに?」
なんとなく心がもやっとして、小さい子どもみたいに質問する。
「本を返すだけだよ」
二段ベッドの梯子から降りてくる雄太郎の手には、茶色い紙のブックカバーがかけられた本があった。
「その本?」
「まあ……そうだな」
雄太郎はあまり答えたくないのか、オレの質問以上に話してくれない。
もしかしたら、雄太郎が持っている本にはオレには言いづらい破廉恥な内容が書かれているのかもしれない。
オレたちだって年頃の男だ。
そういうことに興味があってもおかしくない。
(でも、なんで急に黒谷?)
好みが一致しているとか、黒谷がおすすめしてきたとか色々考えられるけど、いつからそんな事を話すような仲になったのだろう。
何となく面白くなくて、雄太郎をジトっと見つめた。
食堂で雄太郎を待っているという黒谷は、オレの1学年下の後輩で、オレと同じピッチャーだ。
暇つぶしに試合観戦しにくる地域のおじちゃんたちからは、『ぎこうは』とか『こまやかなコントロールで相手をほんろうできるピッチャーだ』って褒められている。
まあ、171cmで細い体型のわりに変化球をいろいろ投げているから凄いのは凄いと思う。
ただ、王子様系だとか、きれいな顔だとか他校の女子にキャーキャーいるのだけは気に食わない。
「じゃ、行ってくる」
近くに置いてあったパーカーを被った雄太郎は、茶色いブックカバーがかかった本とスマホを持って出て行ってしまった。
バタリと閉まった部屋のドアを眺めながら、再び2人の仲良しレベルとか、何の本だったのかを考えてみる。
「うーん。わかんね」
考えようと思っても、雄太郎と黒谷の接点は普段の練習以外で何も浮かんでこない。
「ま、行ってみますかっ」
オレはちょうど腹も減っているし、食堂で偶然会っても不思議じゃない。
晩ご飯のついでに、雄太郎と黒谷の様子を観察しに行くことにした。
ただでさえ身体は疲労で重たくなっているのに、重たいリュックサックを背負ってバスから降りると、そのまま地面に埋まってしまいそうだ。
「はあ〜、疲れた」
オレと雄太郎の名字が書かれた部屋のドアを開け、電気をつける。
幼馴染である雄太郎がルームメイトだからか、部屋に入ると実家に帰ってきたようでホッとする。
「ユウちゃん、風呂と飯どっちからにするー?」
二段ベッドの近くにリュックサックやグローブをドサっと置き、後から入ってきた雄太郎に話しかける。
この寮は野球部以外も暮らしているから、定められた時間の中であれば長風呂をしても、夜遅くにご飯を食べても問題はないのだ。
「んー、先行ってて。俺用事あるから後で行くわ」
いつも風呂に入るのも、食堂で飯を食うのも一緒なのに、全て別行動というのは珍しい。
「そうなん。待っておこうか」
「いや、いいよ。何時になるかわかんないし」
「そっか。じゃ、オレ、腹減ったから先に飯食ってから風呂入るな」
「うん。悪いな」
今日は反省点が多い試合だったから、雄太郎と晩飯を食べながら話したかった。
だけど、空腹を知らせる腹の音が止まらなくて、仕方なくひとりで晩ご飯を食べることにした。
コンコン。
食堂に行ったついでに風呂にも行けるように、着替えを準備していた時だった。
「はーい?」
「俺ー、林ー。開けていい?」
部屋の外から林の声が聞こえた。
「あ、いたいた。河西ー。黒谷がお前のこと食堂で探してたぞ」
「ん?黒谷?」
雄太郎が返事をするよりも先に、オレは林に返事をしていた。
「ああ、うん。黒谷」
林が驚いて返事をする。
「雄太郎、黒谷となんかあったの?」
「ん、別に。太陽が心配するようなことじゃない」
雄太郎は驚きもせず、二段ベッドの梯子を半分くらい登って、ベッドの上をゴソゴソと探している。
「知ってたのか。黒谷、ひとりでボーッと食堂で座ってたからさ」
「そうか、すぐ行く。ありがとな、林」
雄太郎は体を捻って振り返り、林に礼を言った。
「おう、なんか黒谷の様子が気になって言いに来ただけだから。早めに行ってやれよ」
林は爽やかな笑顔を浮かべてそう言うと、部屋を出て行った。
「用事ってなに?」
なんとなく心がもやっとして、小さい子どもみたいに質問する。
「本を返すだけだよ」
二段ベッドの梯子から降りてくる雄太郎の手には、茶色い紙のブックカバーがかけられた本があった。
「その本?」
「まあ……そうだな」
雄太郎はあまり答えたくないのか、オレの質問以上に話してくれない。
もしかしたら、雄太郎が持っている本にはオレには言いづらい破廉恥な内容が書かれているのかもしれない。
オレたちだって年頃の男だ。
そういうことに興味があってもおかしくない。
(でも、なんで急に黒谷?)
好みが一致しているとか、黒谷がおすすめしてきたとか色々考えられるけど、いつからそんな事を話すような仲になったのだろう。
何となく面白くなくて、雄太郎をジトっと見つめた。
食堂で雄太郎を待っているという黒谷は、オレの1学年下の後輩で、オレと同じピッチャーだ。
暇つぶしに試合観戦しにくる地域のおじちゃんたちからは、『ぎこうは』とか『こまやかなコントロールで相手をほんろうできるピッチャーだ』って褒められている。
まあ、171cmで細い体型のわりに変化球をいろいろ投げているから凄いのは凄いと思う。
ただ、王子様系だとか、きれいな顔だとか他校の女子にキャーキャーいるのだけは気に食わない。
「じゃ、行ってくる」
近くに置いてあったパーカーを被った雄太郎は、茶色いブックカバーがかかった本とスマホを持って出て行ってしまった。
バタリと閉まった部屋のドアを眺めながら、再び2人の仲良しレベルとか、何の本だったのかを考えてみる。
「うーん。わかんね」
考えようと思っても、雄太郎と黒谷の接点は普段の練習以外で何も浮かんでこない。
「ま、行ってみますかっ」
オレはちょうど腹も減っているし、食堂で偶然会っても不思議じゃない。
晩ご飯のついでに、雄太郎と黒谷の様子を観察しに行くことにした。



