バタバタと球場内を走って、雄太郎が休憩している教護室に入った。
「おー太陽、おめでと。さすがだな」
大きなガーゼを目元につけた雄太郎が、ベッドに座ってふにゃりと笑った。
ガーゼをつけていない方の目には薄く涙が溜まっていて、まばたきをした瞬間に雄太郎の頬につぅっと流れ落ちた。
「ユウちゃんっ」
勝利の報告をしようと思ったのに、気がつけばオレは雄太郎を思いきり抱きしめていた。
「うわっ」
軽くベッドに腰掛けていた雄太郎は、オレの体重を勢いよく受けたせいでぐらつく。
それでも、汗と黒土にまみれたオレを両手でぎゅっと受け止めてくれていた。
「おい、太陽。ははっ」
雄太郎が笑った。
「んんんーっ、ユウぢゃんー」
伝えたいことはいっぱいあるのに、どれから話そうかと思うと選べなくてもどかしくなる。
『オレ、お前が繋いでくれた0点を守りきれたんだ』とか『雄太郎がいない試合は初めてだったけど投げきれた』とか、他にも林のことも黒谷のことも、チームメイトの頑張りだって全部1番初めに伝えたい。
「なになに。太陽。泣きすぎだって、落ち着け」
雄太郎は、あやすようにオレの背中を軽くトントンと叩きながら笑っている。
でもオレは、ゆっくり喋り出そうと思っても、言葉よりも先に涙が溢れてくる。
「……オレぇ、やっぱユウちゃんのこと好きだあ」
たくさん伝えたい事があったはずなのに、口から出てきたのは好きという一言だった。
「は?え……?」
思った通り、雄太郎の困惑した声が返ってくる。
「え?好き?」
「ゔん」
「それはその……えっと、そのー」
オレの背中を軽く叩いていた雄太郎の手が止まった。
「もうオレはさぁ、全部の意味でユウちゃんのこと好きなんだって気づいた。もう無理だ考えんの、もう大好き以外の言葉がない」
今言うことじゃないことくらいわかってる。
だけど、試合に勝った瞬間、確信したんだ。
やっぱりオレは雄太郎のことが好きなんだって。
身体が触れてドキドキするなら好きとか、友達としての好きと恋愛対処としての好きは違うとか、そんなもので測れるものじゃない。
オレの雄太郎への好きは、この世界にある好きを定義するありとあらゆるものに当てはまる。
だって、勝った瞬間1番最初に喜びを共有したいと思った相手は雄太郎だったし、試合中に勇気の源になったのも雄太郎だった。
それに、こうして会った瞬間にぎゅっと抱きしめたいって思えるのも雄太郎だけだ。
「あのっ、たったいよう?」
「んっ?」
名前を呼ばれたオレは雄太郎を抱きしめる腕の力を緩めて、雄太郎の顔を見た。
「ぷっ。はははっ、あははは」
雄太郎の顔は高熱でもあるんじゃないかと思うくらい、真っ赤な顔をしていた。
「真っ赤じゃん、ユウちゃん。あははっ。あー、好き。ほんと好き。もうそういうとこも全部好きなんだよ、オレは」
もう優勝したせいでテンションが上がりすぎているのかもしれない。
普段クールな雄太郎が真っ赤になって照れている姿を見ると、胸がうずうずしてきて楽し気に脈を打つ。
「何言って……お前……まじで」
「あはは。だって言いたくなったんだもん、今」
「もんっ、じゃねーよ。いやもうほんと。ほんとに……あぁ……」
「あははっ、照れてんの?悩んでんの?」
「どっちもだよ。あーもうまじで」
そう言って笑っていると、救護室の扉がコンコンと鳴った。
「おーい、太陽ー、雄太郎ー?入るぞー?」
ノックをして部屋に入ってきたのは林だった。
「そろそろ表彰式なんだけどさ……って、おい、雄太郎大丈夫かっ」
部屋に入ってきてすぐに、林は雄太郎の顔を見て心配する声を挙げた。
「だっ、大丈夫。ほんとになんでもないから」
一瞬、声を裏返らせた雄太郎は慌てて林に返事をする。
「怪我が痛むのか?熱中症にはなってないか?あっ、あと太陽から勝ったって聞いたか?」
林が次から次へと雄太郎に質問する。
ノック音とともに、オレは雄太郎に抱きつくのをやめて隣にあったパイプ椅子に座ったから、林には単純に雄太郎の体調が悪いように見えているのかもしれない。
「林ぃ。そんな一気に聞いたらユウちゃん答えられねーじゃん」
オレはパイプ椅子から足を投げ出して、パタパタと動かす。
「あっ、ということは。お前、なんか雄太郎にしたんだろ」
「してねーよ。……多分?」
ぷいっと口を尖らせて、雄太郎の方を見た。
すると雄太郎は軽く俯いて、オレの視線から逃れた。
「多分ってなんだよ」
疑うように目を細めた林がグイグイとオレに近づいてくる。
「いや、ほんとほんと!なんもしてないって、オレ」
「……まあ、そういうことにしといてやる。そんで太陽、お前はそろそろ表彰式だからグラウンドに戻ってこい」
オレと雄太郎を交互に見た林はオレの頭をガシッと掴んで言った。
「うんっ、わかった。あんがと」
一瞬、雄太郎に好き好き言ってたのがバレたのかと思って驚いた。
オレは林に返事をしてから雄太郎の方を見た。
「太陽。……優勝旗、しっかり受け取ってこいよ」
まだ頬を赤らめたままの雄太郎がオレに向かって静かに言った。
「おうっ、任せろ、かっこよくもらってくる」
オレは、へへへっと雄太郎に笑いかけてから、林に連れられて救護室を後にした。
「おー太陽、おめでと。さすがだな」
大きなガーゼを目元につけた雄太郎が、ベッドに座ってふにゃりと笑った。
ガーゼをつけていない方の目には薄く涙が溜まっていて、まばたきをした瞬間に雄太郎の頬につぅっと流れ落ちた。
「ユウちゃんっ」
勝利の報告をしようと思ったのに、気がつけばオレは雄太郎を思いきり抱きしめていた。
「うわっ」
軽くベッドに腰掛けていた雄太郎は、オレの体重を勢いよく受けたせいでぐらつく。
それでも、汗と黒土にまみれたオレを両手でぎゅっと受け止めてくれていた。
「おい、太陽。ははっ」
雄太郎が笑った。
「んんんーっ、ユウぢゃんー」
伝えたいことはいっぱいあるのに、どれから話そうかと思うと選べなくてもどかしくなる。
『オレ、お前が繋いでくれた0点を守りきれたんだ』とか『雄太郎がいない試合は初めてだったけど投げきれた』とか、他にも林のことも黒谷のことも、チームメイトの頑張りだって全部1番初めに伝えたい。
「なになに。太陽。泣きすぎだって、落ち着け」
雄太郎は、あやすようにオレの背中を軽くトントンと叩きながら笑っている。
でもオレは、ゆっくり喋り出そうと思っても、言葉よりも先に涙が溢れてくる。
「……オレぇ、やっぱユウちゃんのこと好きだあ」
たくさん伝えたい事があったはずなのに、口から出てきたのは好きという一言だった。
「は?え……?」
思った通り、雄太郎の困惑した声が返ってくる。
「え?好き?」
「ゔん」
「それはその……えっと、そのー」
オレの背中を軽く叩いていた雄太郎の手が止まった。
「もうオレはさぁ、全部の意味でユウちゃんのこと好きなんだって気づいた。もう無理だ考えんの、もう大好き以外の言葉がない」
今言うことじゃないことくらいわかってる。
だけど、試合に勝った瞬間、確信したんだ。
やっぱりオレは雄太郎のことが好きなんだって。
身体が触れてドキドキするなら好きとか、友達としての好きと恋愛対処としての好きは違うとか、そんなもので測れるものじゃない。
オレの雄太郎への好きは、この世界にある好きを定義するありとあらゆるものに当てはまる。
だって、勝った瞬間1番最初に喜びを共有したいと思った相手は雄太郎だったし、試合中に勇気の源になったのも雄太郎だった。
それに、こうして会った瞬間にぎゅっと抱きしめたいって思えるのも雄太郎だけだ。
「あのっ、たったいよう?」
「んっ?」
名前を呼ばれたオレは雄太郎を抱きしめる腕の力を緩めて、雄太郎の顔を見た。
「ぷっ。はははっ、あははは」
雄太郎の顔は高熱でもあるんじゃないかと思うくらい、真っ赤な顔をしていた。
「真っ赤じゃん、ユウちゃん。あははっ。あー、好き。ほんと好き。もうそういうとこも全部好きなんだよ、オレは」
もう優勝したせいでテンションが上がりすぎているのかもしれない。
普段クールな雄太郎が真っ赤になって照れている姿を見ると、胸がうずうずしてきて楽し気に脈を打つ。
「何言って……お前……まじで」
「あはは。だって言いたくなったんだもん、今」
「もんっ、じゃねーよ。いやもうほんと。ほんとに……あぁ……」
「あははっ、照れてんの?悩んでんの?」
「どっちもだよ。あーもうまじで」
そう言って笑っていると、救護室の扉がコンコンと鳴った。
「おーい、太陽ー、雄太郎ー?入るぞー?」
ノックをして部屋に入ってきたのは林だった。
「そろそろ表彰式なんだけどさ……って、おい、雄太郎大丈夫かっ」
部屋に入ってきてすぐに、林は雄太郎の顔を見て心配する声を挙げた。
「だっ、大丈夫。ほんとになんでもないから」
一瞬、声を裏返らせた雄太郎は慌てて林に返事をする。
「怪我が痛むのか?熱中症にはなってないか?あっ、あと太陽から勝ったって聞いたか?」
林が次から次へと雄太郎に質問する。
ノック音とともに、オレは雄太郎に抱きつくのをやめて隣にあったパイプ椅子に座ったから、林には単純に雄太郎の体調が悪いように見えているのかもしれない。
「林ぃ。そんな一気に聞いたらユウちゃん答えられねーじゃん」
オレはパイプ椅子から足を投げ出して、パタパタと動かす。
「あっ、ということは。お前、なんか雄太郎にしたんだろ」
「してねーよ。……多分?」
ぷいっと口を尖らせて、雄太郎の方を見た。
すると雄太郎は軽く俯いて、オレの視線から逃れた。
「多分ってなんだよ」
疑うように目を細めた林がグイグイとオレに近づいてくる。
「いや、ほんとほんと!なんもしてないって、オレ」
「……まあ、そういうことにしといてやる。そんで太陽、お前はそろそろ表彰式だからグラウンドに戻ってこい」
オレと雄太郎を交互に見た林はオレの頭をガシッと掴んで言った。
「うんっ、わかった。あんがと」
一瞬、雄太郎に好き好き言ってたのがバレたのかと思って驚いた。
オレは林に返事をしてから雄太郎の方を見た。
「太陽。……優勝旗、しっかり受け取ってこいよ」
まだ頬を赤らめたままの雄太郎がオレに向かって静かに言った。
「おうっ、任せろ、かっこよくもらってくる」
オレは、へへへっと雄太郎に笑いかけてから、林に連れられて救護室を後にした。



